自己破産をするためには? その手続きと流れについて

自己破産には複数の種類があり、それぞれ手続きの流れや期間が異なる

自己破産の方法は2種類あり、「管財事件」と「同時廃止事件」になります。
また、管財事件については少額管財と通常管財の2つに分けられます。
それぞれどんな内容なのか、手続きの流れや期間の違いなどを詳しく紹介します。

「同時廃止事件」

同時廃止事件とは一体どういうものなのか、詳しく見ていきましょう。

同時廃止事件とは、管財人が選出されない自己破産手続きの方法で、破産手続きの開始と同時に終了する手続きになります。
自己破産の手続きの中でも比較的簡略化されており、期間も短く、費用も少額で済む方法です。

ただし、債務者の持つ財産が破産手続きに必要な費用(20万円)を下回る場合など、いくつも条件があり、それらを全てクリアした人にのみ同時廃止事件が採用されます。
同時廃止事件の費用は、裁判所へ支払う費用が2万円、弁護士に支払う費用は20万円です。申し込みから免責されるまでにかかる期間はおよそ3カ月となります。

一般的な破産手続きは、裁判所から破産管財人というものが選出されます。この破産管財人というのは、債務者の資産を調査し、それらを換価して債権者に平等に分配するのが仕事です。
しかし、債務者の財産がほとんどないという状況の時は、破産管財人が行う資産の換価や債権者への配当は必要ありません。また、債務者にとっては、破産管財人への報酬というのは余裕が無ければ大きな負担になってしまいます。
そのため、破産手続開始と同時に終了する同時廃止事件が選択されるのです。

2020年の統計データによると、同時廃止事件で破産手続きが行われたケースは69%程度あります。

「管財事件」

次に、管財事件とはどういうものなのか詳しく見ていきましょう。

管財事件とは、裁判所が選んだ破産管財人が債務者の資産を債権者へ平等に分配する手続きです。
自己破産本来の目的である債権者への公平な資産の分配ができるやり方で、自己破産の基本的な形になります。(この基本の管財事件を簡素化したものが、上記で述べた同時廃止事件になります。)

管財事件の条件は次のいずれかに該当するものです。

  • 資産が20万円以上ある
  • 法人の代表者もしくは個人事業主
  • 負債額が5000万円程度を超える
  • 免責不許可事由がある、または調査する必要がある

費用は、裁判所に支払うお金は50万円~、破産管財人に支払うお金は20万円~となります。
期間は、準備だけで1、2カ月程度、長いケースになると半年以上かかります。
※債務者の資産や債務の状況、借り入れの複雑さ、事業内容によって期間は変わります。

手続きの依頼先は弁護士や司法書士になります。ただし、司法書士は書類の作成までしかできません。

「少額管財事件」

少額管財事件とはどういうものなのか詳しく見ていきましょう。

少額管財事件とは管財事件の中の1つで、申立人(債務者)の弁護士が裁判所の手続きを行います。
そのため、この事件を取り扱えるのは弁護士だけとなっています。

この少額管事件は、予納金が高いことを理由に破産手続きができない債務者の救済措置となっています。また、通常の管財事件と比べて、自己破産の手続き開始から終了までの期間が短いです。

少額管財事件を行う条件もいくつかあります。

  • 弁護士に依頼していること
  • 本来は管財事件だが、弁護士の調査により少額管財事件への変更が可能なこと

費用については、裁判所への費用が22万円~、弁護士への報酬は28万円~となります。
期間は、準備期間が1、2カ月~半年程度、申し立てから免責になるまでは4カ月程度となります。

自己破産手続きの流れ

自己破産をどうやってやればいいのかわからない、という方も多いのではないでしょうか。
順に説明していきます。

1.弁護士に相談・依頼をする

自己破産は自分一人で行うことも可能ですが、右も左もわからない場合は弁護士に相談をしましょう。
弁護士だけでなく司法書士に相談することも可能ですが、司法書士の場合、依頼しても書類の作成までになります。そのため、弁護士にお願いしたほうがスムーズかと思います。

弁護士の探し方については、いくつか方法があります。

一つ目は、インターネット等で弁護士(弁護士事務所)を探す方法です。どんな弁護士に頼めばいいかわからないという人は、手続きにかかる費用の詳しい内訳やどんな案件を担当したかという実績を見て、自分に合った弁護士に依頼するのがいいでしょう。

二つ目は、役所等で行われている法律相談会に参加する方法です。相談できる内容や日時は限られてきますが、無料であることが多いです。

三つ目は、法テラス(日本司法支援センター)を利用する方法です。法テラスというのは、法的トラブルを解決するため、国によって設立された「総合案内所」です。
法テラスでは、様々な法的トラブルに応じて、法制度や手続き、適切な相談窓口を無料で案内してくれるほか、一定の条件はありますが無料法律相談も行っています。この法律相談を受けることで弁護士と相談ができ、そのまま自己破産の依頼を行うことができます。

最後に、友人もしくは知人に弁護士がいるのであればその人に依頼してもいいでしょう。

【法テラスを利用する場合の自己破産手続き開始までの流れ】
1.法テラスに問い合わせる…電話もしくは法テラスの窓口に問い合わせを行います
2.無料相談ができるかどうか確認・予約をする…条件に当てはまるかどうかの確認を行い、可能であれば相談日の予約をとります。
3.弁護士に相談…ここで一つ注意点ですが、自分で弁護士を選ぶことはできません。また、無料相談は一つの問題につき3回までとなっています。
4.自己破産手続きの依頼を行う…相談した弁護士もしくは法テラスに連絡をして正式に依頼を行います。

2.債権者に受任通知をおこなう

自己破産の依頼を受け弁護士がまず行うことというのが、債権者に対して受任通知を行うことです。これを行うことで、債務者へ催促状や督促状が通達されることはなくなります。

受任通知を送付すると次のような効力が発生します。

【貸金業法第21条第1項】

貸金業を営む者又は貸金業を営む者の貸付けの契約に基づく債権の取立てについて貸金業を営む者その他の者から委託を受けた者は,貸付けの契約に基づく債権の取立てをするに当たって,人を威迫し,又は次に掲げる言動その他の人の私生活若しくは業務の平穏を害するような言動をしてはならない。

第9号 債務者等が,貸付けの契約に基づく債権に係る債務の処理を弁護士若しくは弁護士法人若しくは司法書士若しくは司法書士法人(以下この号において「弁護士等」という。)に委託し,又はその処理のため必要な裁判所における民事事件に関する手続をとり,弁護士等又は裁判所から書面によりその旨の通知があつた場合において,正当な理由がないのに,債務者等に対し,電話をかけ,電報を送達し,若しくはファクシミリ装置を用いて送信し,又は訪問する方法により,当該債務を弁済することを要求し,これに対し債務者等から直接要求しないよう求められたにもかかわらず,更にこれらの方法で当該債務を弁済することを要求すること。

貸金業法21条1項を参照(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=358AC1000000032

3.書類の作成・裁判所への申し立て

裁判所に自己破産の申し立てを行います。
そのためにはまず、必要な書類を作成します。自己破産の申請を行うには非常に多くの書類が必要になり、またそれらを元に作成する書類も決して簡単なものではありません。

自己破産の手続きを弁護士に依頼している場合は、書類の作成は弁護士が行うことになります。必要な書類についてもきちんと説明をされるので、期日までに用意しましょう。
書類作成にかかる日数として2カ月程度はかかります。

4.破産審尋がおこなわれる

書類の作成後、弁護士から裁判所にそれらが送付されます。その後は、裁判官と弁護士と本人の三者で面接が行われ、資産や借金額などについて聞かれます。隠したい、恥ずかしいといった気持ちがあるかもしれませんが、噓をついたり誤魔化したりすることは絶対にやめましょう。自己破産ができなくなる恐れがあります。
また、この面接については免除されるケースもあります。必ず弁護士に確認してください。

5.破産手続きの開始が決定

面接後は裁判所で審議が行われ、申し立てに問題がなければ、正式に破産手続きへと入ります。
その後、同時廃止事件、管財事件、少額管財事件のどの方法になるのかも決定します。

同時廃止事件の場合

裁判所にて免責審尋

免責審尋とは、免責許可決定をするための審尋です。
破産審尋ではおもに「どうして借金が増えてしまったのか」「なぜ返済ができないのか」といったことを尋ねられますが、この免責審尋は個人的な事情を質問されるものではなく、免責を認めるに値する人物かどうか見るものとなります。
基本的には複数の自己破産申請者を集めて、集団で行われるものです。そのため所要時間も短く、あっさりと終わってしまうことが多いです。

しかし、裁判所によっては個人で行うこともあります。その際には個人的な事情を聞かれる可能性もあるので、破産審尋と同様に嘘をついたり誤魔化したりしないようにしましょう。

裁判所から免責許可の決定がでる

免責審尋の結果や債権者の意見を踏まえて、裁判所は免責を許可するかどうかの決定をします。これが確定することで、債務の支払い義務が免除されることになります。

免責許可決定の確定

免責許可の決定が裁判所から出ますが、その時点では自己破産が確定したとはいえません。正式に確定するのはおよそ1ヶ月後になります。
ただし、債務者の借金の原因がギャンブルなどによって作られたものの場合は、免責許可の決定が確定されないことがあります。

管財事件・少額管財事件の場合

破産管財人との面接

破産管財人(破産手続きを進めていく弁護士)が裁判所によって選任され、その破産管財人との面接を行います。
破産管財人は債務者の資産や債務を調査する必要があるため、今持っている財産や負債、破産した理由などは全て正直に答えましょう。

裁判所にて債権者集会・免責審尋

面接が終わり必要な調査や書類収集が完了したら、破産管財人は債務者の財産を債権者に換価・配当します。
また、裁判所にて行われる債権者集会で調査結果の報告等を行いますが、債権者が出席することはあまり多くありません。
債権者から何も意見がなく問題もなければ、ここで破産手続きが終了します。

裁判所から免責許可の決定がでる

免責許可の決定は、債権者集会と同時に決定されます。
集会終了後に、免責審尋へ移り、書面の内容に変更がないか、免責不許可事由について質疑応答が行われます。
そして裁判所が破産者の免責を許可するかどうか判断をします。

免責許可決定の確定

同時廃止事件と同様に、裁判所から免責許可の決定が出てもそれだけでは確定とはなりません。2週間以内に債権者から異議が出なければ、ようやく免責の確定となります。

また、免責許可決定が確定すると免責決定通知書が弁護士あてに送付されます。
この免責決定通知書は、今後生活保護をもらいたいという方の申請時、自己破産手続きを行ったときに債権者の抜けがあった時、信用情報機関の事故情報が残っている場合の削除依頼を行う時などに必要な書類なので、大切に保管しておきましょう。

自己破産の手続き期間を早く終わらせるためのポイント

自己破産の手続きは想像以上に時間がかかります。
破産手続きの申請を行ってから免責許可の確定が終了するまでに、半年程度かかります。また、申請の準備期間まで入れると1年近くかかることもあります。
この破産手続きの期間を少しでも短くするにはどうすれば良いのか、そのポイントを紹介します。

早く弁護士に相談・依頼をする

破産手続きをしたいと思ったとき、少しでも手続き期間を短くするにはまず弁護士への依頼をできるだけ早く行うということです。
弁護士に相談すれば、自己破産すべきかすべきではないかをはっきりと教えてくれます。相談後にそのまま依頼して、手続きを進めていくのもいいかもしれません。
早く開始すれば、終わるのも早くなります。

必要な書類を早めに収集・作成する

破産手続きで必要な書類をできるだけ早く集めるのも、期間を短くするポイントになります。
収入を証明するものや現在抱えている債務がわかるものなど、どんな資料・書類が必要なのかは弁護士が教えてくれますので、漏れのないようにしっかり集めましょう。

弁護士に事情を正確に話す

資料等を集めて弁護士に渡した後、事実関係を確認するための面接が債務者との間で行われます。
現在の毎月の支払い金額、収入の両方を聞かれます。その他にも、所有財産について(自動車や持ち家があるか、現金化できそうなものを所有していないかなど)細かく聞かれます。
これは正確な情報を裁判所に伝えるためなので、正直に話しましょう。
嘘をついてしまうと自己破産が出来なくなる恐れがあるので、絶対に避けるべきです。

費用に心配がない場合は法テラスの利用を避ける

自己破産の手続きを行う際、一定の条件を満たすと法テラスの無料相談を利用することが出来ます。
ただし、無料相談は予約制のため空きが無ければ待つことになり、また、自己破産の手続きについても弁護士に直接依頼するよりも時間がかかります。
そのため、費用はかかりますが、法テラスを利用するよりも法律事務所や弁護士事務所などへ直接連絡したほうが自己破産の手続きを早く開始することが出来ます。

「即日面接制度」を利用する

即日面接とは、東京地方裁判所にて行われている、申し立て受付日の当日またはその翌日から3日の間に裁判官と面接を行う制度のことです。
即日面接は非常に重要な手続きです。なぜなら、この面接の結果によって即座に廃止事件か管財事件なのかを裁判官がその場で決めるからです。
なお、この即日面接に出席するのは代理人となった弁護士だけです。申立人が出席することはありません。

自己破産の手続き期間中に注意すべき点

自己破産申請が終わって手続きの実務に移行した後、注意しなければいけない点を紹介します。

職業や資格が制限される

下記の職業については、業務を行ってはいけないと定められています。

  • 弁護士
  • 行政書士
  • 司法書士
  • 公認会計士
  • 宅地建物取主任者
  • 質屋・古物商
  • 保険外交員
  • 警備員

免責決定が確定した後は再開できるので、問題ありません。
士業の仕事をしていて自己破産をされる方は注意してください。

引っ越しや海外旅行が難しくなる

自己破産を行なうからといって行動の制限がされることはありません。そのため、引っ越しも旅行も可能ではあります。
ただし、管財事件の場合は裁判所の許可を得て引っ越しを行う必要があります。
また、旅行についても、裁判所の許可なく行ったとしても刑罰を受けることはありませんが、免責が認められない可能性が発生します。

郵便物の転送・回送が行われる

管財事件となった場合に限り、自分あてに届く郵便物はすべて代理人の弁護士事務所に転送されます。
これは、債務者が面接で話したことに間違いはないのか、他に所有している財産や借金がないかを確認するうえでも必要なことです。
あくまで債務者の郵便物のみで、同居している家族あてのものは転送されません。

まとめ

いくつかある破産手続きについて具体的にどの様な流れになるのかを紹介してきました。
今後破産申請をしたいと思ったとき、スムーズに手続きが進むようしっかり理解しておきましょう。

さいごに

【専門家に相談したい方はこちらへ】

弁護士法人ひばり法律事務所

 

【予算不足のためご自身でなんとかしたい方はこちらへ】


 

関連記事

コメント

この記事へのトラックバックはありません。

TOP