自己破産をすると失うものと、残せるものについて解説!少しでも多く財産を残す方法も!

ここでは自己破産によって失うものと、残せるものについて解説していきます。自己破産について「すべて没収されて売られてしまう」と勘違いしている人もいますが、実際には「必要最低限のもの」は残せます。
そして自己破産により原則として借金がゼロになりますから、失うものが多い(さすがに少ないとは言えません)としてもメリットの方が勝っています。生活を立て直すためにも、現在苦しい状況にある方は早めに自己破産を検討することをおすすめします。

自己破産をするとどうなる?

まずは自己破産の基本について解説します。

自己破産とは?

「借金などをどう頑張っても返済できない状態(支払不能)の人が、最低限の財産・生活費を残して、それ以外をお金に換えて(換価)、債権者にお金を返すことにより(配当)、残りの借金の返済義務がなくなる(免責)手続き」のことです。
さらに簡単に言うと、「必要最低限以外の財産・生活費を売って、できるだけお金を返して、残りは返さなくてよくなる手続き」ということになります。

自己破産をすると全部財産を取られる?

自己破産の申し立てをすると本人の財産は、
●  破産財団(換価する財産)
●  自由財産(手元に残せる財産)
に分けられることになります。
したがって財産を全部取られるわけではありません。

自己破産をしても残せるものはある

つまり自己破産をしても残せるものはあるということです。
全てを失うわけではありませんし、自己破産によるメリットも大きいですから、借金を返済できる見込みがなく困っている人は早めに検討を始めることをおすすめします。

自己破産をすると失うもの


それでは自己破産によって失うものについて詳しく解説していきます。

破産財団とは

破産財団=自己破産によって失うもの」です。
「破産法」の定義に照らし合わせて考えると微妙に異なるのですが、破産する側としてはこの理解で構いません。
では、破産財団に含まれる代表的なものを挙げていきます。

不動産

不動産(建物、土地など)は基本的に破産財団に分類されますから、よほど価値が高くない限りは換価されます。
マイホームローンが残っているケースでは、自己破産手続きが開始するより前に、ローン会社が抵当権を行使して、競売にかけられます。
「競売で発生した金銭」は残りのローンの支払いに使われ、それでもお金が余った際には、それ以外の債権者に配当されます。
簡単に言うと、「家を売る→売ったお金でローンを返す→お金が余ったら他の人への返済に使う」ということです。

自動車やバイク

まず、自動車やバイクの「ディーラーローン」が残っていない場合は、自動車の価値が20万円以上なのであれば処分しなければならない可能性が高いです(これ以降の処理は前述のマイホームローンなどとほぼ同じです)。
ちなみに「価値が20万円未満」もしくは「法定耐用年数を超えている(バイク3年、普通自動車6年、軽自動車4年)」のであれば基本的に残せます。
自動車やバイクを残したい場合は、「裁判所に対して残す必要性を説明して、自動車の価値分と同額を破産管財人に支払う」ことで維持できる場合が多いです。

預貯金

99万円以下の現金自由財産に分類されるため失わない
20万円以下の預金自由財産に分類されるため失わない

原則として上記の通りなのですが、
一例として「現金20万円・預金50万円」の状態だったとします。この場合、「預金を全額引き出して、現金70万円の状態にする」ことにより、全額を守ることができるのでしょうか。
「引き出した預金のうちの、20万円を超える部分」の扱いについては裁判所次第です。
ただ、「元々持っていた現金+引き出しによって発生した現金」が99万円以下であれば、自由財産として認められるケースが多いです。
とはいえ
●  どのタイミング引き出すか
●  引き出したお金をどう使うか
などによって裁判所の判定が変わりますから、できる限りお金を残すためにも、専門家に相談してから引き出すことをおすすめします。

生命保険や学資保険

解約払戻金(解約することで得られるお金)が20万円以下(複数口ある場合はトータルで判定する)である生命保険や学資保険については、原則として自由財産に分類されます。よって解約払戻金が20万円以下の生命保険や学資保険であれば、解約しなくて大丈夫です。
20万円を超える部分に関しては、「トータルで99万円以下の範囲」については自由財産として認められる場合が少なくありません。
ただ、ケースバイケースですから、解約払戻金が20万円を超える生命保険や学資保険があるのであれば、早めに専門家などに相談しましょう。

宝石・貴金属など高価なもの

「20万円を超える価値を持つものは換価処分する」という原則がありますから、宝石や貴金属などの高価なものは基本的に残せません。

株やFX

公開会社の株:一定金額以上の場合は換価する(株価が公開されているため判断が容易)
非公開会社の株:株価が公開されていないため慎重に価値を判断し、換価する。ただし、会社の許可が出なければ換価できない(その場合、既存の株主や会社の経営者に譲渡する方法が考えられます)。

FX:一定金額以上の場合は換価する

以上が原則です。
やはり判断が難しいですから早めに専門家に相談しましょう。また、株やFXで損失が出ている場合でも、焦って売却せずにまずは専門家と相談することをおすすめします。

家財道具

「生活に必要な家財道具」は基本的に残すことができます。
ただし、「20万円を超える価値のある家財道具」や「複数持っている家財道具」などは換価される可能性があります。
なお「ローンの残っている家財道具」については、債権者が求めるのであれば引き上げられてしまう可能性が高いです。

信用情報

自己破産をすると「自己破産をした」という情報が一定期間、信用情報機関に残ります(ブラックリスト入り)。この記録が消えるまで、クレジットカードの発行、ローンの利用、借金などが非常にしにくくなります(絶対にできないというわけではありません)。
なお信用情報は「もの」ではありません。そのため「失う」「失わない」よりも、「上がる」「下がる」と表現するべきでしょう。自己破産によって信用力が大きく下がることになります。

自己破産をしても残せるもの

ここまで自己破産によって失うものについて解説しました。ここからは、自己破産をしても残せるもの(残せる可能性があるもの)に関してお伝えしていきます。

自由財産とは

自己破産をしても残せる財産のことを「自由財産」と言います。この自由財産がありますから自己破産をしてもすべてを失うわけではありません。

新得財産

「破産開始決定後に得た財産」のことを新得財産と呼びます。新得財産の代表例としては、「破産開始決定後の労働の対価として出る給料」があります。
この新得財産は手元に残すことができますが、「財産を得たタイミング」によっては新得財産扱いになるかどうかの判断が難しいケースもありますから、やはり専門家に相談することをおすすめします。

99万円以下の現金

●  99万円以下の現金
●  20万円以下の預金
これらは原則として手元に残しておくことができます。
これには「自己破産後の生活のための最低限のお金を残す」という意味合いがあります。

差押禁止財産

「差押」とは強制的に金銭債権を回収するための手続きであり、基本的に財産が差押さえられることになります。ですが「差押禁止財産」はこの差押さえの対象になりません。
差押禁止財産としては主に以下のものがあります。

【動産(動かすことができる財産)】
●  生活に欠かせない衣類、寝具、家具、台所用品など
●  仕事に必要な物品
●  1か月分の燃料や食料
●  印鑑

 

【債権:特定の人に給付を請求できる権利】
●  給料が44万円未満の場合、給料の4分の3は差押さえ対象にならない
●  給料が44万円以上の場合、33万円を超える部分が差し押さえの対象になる
●  国民年金、厚生年金、児童手当、生活保護費などの受給権

これらの債権は差押禁止財産ですが、一回銀行口座に入金されると「ただの預金」という扱いになり、差押さえの対象になりますから気を付けてください。

自由財産の拡張

自由財産の拡張とは、「ルール上は自由財産にならない財産」を、裁判所の決定によって自由財産に含めてもらうことを指します。
例えば、「価値が20万円以上の自動車やバイク(かつ法定耐用年数を超えていないもの)」は、ルール上換価しなくてはなりません。
ですが、「裁判所に対して自動車やバイクを残す必要性を説明して、自動車やバイクの価値分と同額を破産管財人に支払う」ことで維持できる場合が多いです。
「本来換価する必要があるものの、残したい財産」がある場合は、自由財産の拡張によって守ることができないかどうか専門家に相談することをおすすめします。

破産財団から放棄された財産

「破産財団に分類された財産」であっても簡単に換価できないケースがあります。例えば以下のものが該当します。
●  立地が極めて悪く買い手がつかないと思われる不動産
●  需要の低い貴重品(マニアックな品物など)
これらを保管したり、買い手を探したりしようとすると、むしろ余計にお金がかかる可能性があります。また、時間がかかり過ぎて、なかなか破産手続きが完了しなくなる恐れもあります。
そして破産管財人は裁判所の許可を得て、看過できない(しにくい)財産を、破産財団から外すことができます。この対応のことを「破産財団からの放棄」と呼びます。
「破産財団から放棄された財産」は自由財産となるため、自己破産が完了しても残ります。
なお、破産者側から「この財産を破産財団から放棄してください」と申請することはできません。

仕事

従業員を解雇するためには、「解雇するための合理的な理由」が必要です。しかし「自己破産をしたこと」は合理的な理由であるとはみなされない場合が大半です。
ただし、就業規則などで「自己破産を解雇理由にできる」などと定められている場合は、もちろん解雇できます。金融業や警備業に多いケースですから気を付けてください。

家族名義の財産

自己破産をしても「家族名義の財産」には影響しないため、すべて残すことができます。
ただ、それよりも前の「自己破産を検討する段階」で、家族が財産を持っている場合は、相談して借金を肩代わりしてもらうのもいいでしょう。

家族の信用情報

自己破産をしても家族の信用情報には一切影響しません。そのため家族がローンを利用したり借金をしたりすることは普通にできます。

選挙権

自己破産をしても選挙権は失われませんし、制限などがかかることも一切ありません。
また、被選挙権も失われません。
ただ、現実的に自己破産歴のある人が選挙に出馬すると、どこからか「自己破産歴がある」と知られてしまい、選挙活動に影響することはあるかもしれません。

自己破産して他に影響することは?


自己破産による影響についてさらに解説していきます。「失うもの」「失わないもの」という観点だけでなく、「信用」などの目に見えないものにどう影響するかという見方をすることも大事です。

近所や職場での影響

自己破産をしたとしても近所や職場に知られることはまずありません。
「官報」というものに自己破産をした事実が記録されますが、これを調べる人はほぼいませんから、知られてしまう可能性は限りなくゼロに近いです。
ただし、
●  暮らしぶりが急激に変わった
●  「誰にも言わないでください」などと言って親しい人に自分から話してしまう(そこから噂になる)
などによって自己破産をしたと勘付かれてしまうケースはあります(自己破産とは気付かれなくても、何かあったとは思われる場合も)。
そのため立ち振る舞いには気を付けるべきでしょう。
ただ、自己破産によって直接的に、近所や職場に何らかの影響が及ぶことはありません。

家族への影響

先述の通り、家族の財産や信用情報は守られますし、「あの人の家族が自己破産をしたらしい」と知られることはまずありませんから、家族への影響はほぼありません。

旅行や引っ越し

自己破産手続きが開始してから手続きが終わるまでは、無許可で旅行や引っ越しをすることはできません(特に海外旅行、外泊を伴う国内旅行は、許可が出にくい傾向にあります)。無断で居住地を離れることが禁止されているためです。
ただ、自己破産手続きが完了してからは、制限なく旅行や引っ越しができます。

ペット

ポイントは以下の通りです。
●  ローン返済中のペットは換価対象になる可能性がある
●  ローンを完済していても価値の高いペットは換価対象になる可能性がある
●  ただし実際には換価対象にならない場合が多い
現実的にはペットは守ることができる場合が多いものの、覚悟はしておくべきでしょう。
また、それ以前の問題として、自己破産をするくらいですから「ペットの維持費(エサ代など)」が高く付いているのであれば見直すべきかもしれません。

スマホや携帯、プロバイダ

使っていたスマホや携帯に関しては、端末代金の残りや延滞料金がなければ、基本的にそのまま使い続けることができます。ただ、端末代金や延滞料金があるケースでは、他の債務と共に免責されるため契約が解除される可能性が高いです。再契約する場合は、別の会社を選ぶことをおすすめします(同じ会社を選ぶと分割支払いなどを拒否される恐れがあります)。
また、インターネットプロバイダなどについても、本体代金の残りや延滞料金があると契約が解除されますから新規契約をすることになります。なお、スマホ料金、プロバイダ料金は意外とお金のかかる要素です。自己破産を機に安いスマホやプランに切り替えるのもいいでしょう。場合によっては月に1万円以上節約できます。

賃貸契約している家

もともと住んでいた賃貸契約している家は、差押えの対象ではありませんから、自己破産をしても暮らし続けることが可能です。また、「自己破産をしたこと」は賃貸契約を強制解除できる理由にはなりません。
ただ、家賃などを滞納していたのであれば、退去することになる可能性が高いです。
なお、住居とは別に賃貸契約している不動産については、契約を解除しなければなりません。「仕事で使っている事務所」などがこれに該当します。

資格や仕事の制限

自己破産手続きが開始すると、一部の資格や仕事(職種)に制限がかかり、仕事ができなくなります。対象となる仕事は保険外交員、士業、警備員、金融関係、生命保険募集人などです。
ただ、自己破産手続きが終われば、基本的に以前のように仕事ができます。
なお資格制限については「破産法」ではなく、「それぞれの資格に関する法律・規則」によって定められていますから、そちらをチェックしてください。いずれにしてもややこしいですから、専門家に確認を取ることをおすすめします。

年金や退職金

年金は通常通り支給されます。自己破産手続きの開始~完了までの期間でも同様ですし、金額を減らされるようなことはありません。
ただ、自己破産するような状況ですから、それ以前に年金の未払いがあるかもしれません。その影響で年金が減る可能性はもちろんあります(自己破産が直接的に影響しているわけではありませんが)。
退職金については、「自己破産時の退職金見込み額が160万円以上である場合は、退職金を差押える」のが一般的です。
ただ、もちろん「今すぐ辞職して退職金を支払う必要がある」というわけではありません。破産者が退職金を前借りしたり、退職金見込み額の12.5%の額を積み立てたり(自由財産から支払えることでしょう)すれば問題はありません。

生活保護

自己破産をしても、生活保護費を受給する権利は失われません。
むしろ生活保護受給者は自己破産をすすめられる場合が多いです。それによって生活を立て直しやすくなるためです。

再度の自己破産

過去7年以内に自己破産をしている場合、もう一度自己破産申請をしても不許可になる可能性が高いです。こういったルールがなければ、安易に自己破産を繰り返す人が増えてしまうことでしょう。

自己破産で絶対にやってはいけないこと

「自己破産で失うものを減らしたい」からといって嘘をついたり、ごまかしをしたりしてはいけません。ここからは自己破産で絶対にやってはいけないことを紹介します。

財産隠しとなる行為は自己破産ができなくなる

財産隠しをした場合、自己破産ができなくなるかもしれません。「隠したつもりはなく、見落としていただけ」というケースでも状況が厳しくなる可能性がありますから気を付けてください。
また、財産隠しはほぼ間違いなくバレます。各種書類のチェックが行われ、不審な点があれば徹底的に調査されるためです(その調査をするための権限も非常に強力なものです)。
なお財産隠しの手口が悪質だったり高額だったりすると、「詐欺破産罪」に問われる可能性さえあります。

名義変更

「失うものを減らすためには、自分のものを家族名義に変更すればいい」と思うかもしれませんが、自己破産手続き前・手続き中に名義変更を行うと、財産隠しとみなされて自己破産できなくなる可能性が高いです(詐欺破産罪に問われる場合もあります)。

偏頗弁済

偏頗弁済(へんぱべんさい)とは、「借金の完済ができないにもかかわらず、特定の債権者にのみ偏って返済すること」を指します。例えば、「○○の契約だけは維持したいから、○○の借金だけは返しておく」などが該当します。
「どの時点での返済から偏頗弁済になるのか」については、「どの程度の返済から偏頗弁済になるのか」などに関しては一概に言えません。
そのため専門家などに初回の相談をする段階になったら、全債権者に対して一切の返済をしないようにするのが無難です。

財産への影響を最小限に抑える方法

では、財産への影響を減らす、つまり失うものを減らすためにはどうすればいいのでしょうか。主な方法を挙げていきます。

自由財産の拡張で財産を守る

先ほどもお伝えしましたが、「ルール上は自由財産にならないものを、裁判所の裁量で自由財産として認めてもらうこと」を自由財産の拡張と呼びます。
例えば、「本来は換価すべき自動車」の必要性を説明して自由財産として認めてもらう、などが該当します。
ただ、どのような状況であれば自由財産の拡張を認めるのかは、裁判所によって異なります。いずれにせよ一般の方に判断できることではありませんから、早めに「○○を残したいが、どうすればいいか」という視点で専門家に相談することをおすすめします。

破産管財人から家族が財産を買う

「本来は破産管財人が換価する財産」を、換価される前に家族が買い取るという手段があります。「結果的に債権者の利益になればいい」ため、相応のお金を払えば家族でも財産を買い取ることができます。
ただし、家族だからといって買い取り金額が安くなることはありません。

個人再生に切り替える

個人再生の場合、持ち家や車などを残しやすくなるなど、自己破産に比べると財産への影響が少ないです。
ただし借金が全額なくなることはなく、10%~20%は残ることになります。また、自己破産とは異なり安定した収入がないと利用できない可能性が高いです(残った負債を返済することが前提であるため)。
いずれにせよ、まずは早めに専門家に相談しましょう。すると専門家から「自己破産をするべきか、個人再生をするべきか(それ以外の債務整理をするか、債務整理をせずにすべて自力で返済するか)」に関するアドバイスをもらえます。

まとめ

ここまで自己破産をしても残せるものと失うものについて解説しました。基本的に「自由財産(主に必要最低限のもの)」が残せるもので、それ以外の「破産財団」が失うものということになります。
ただ、「ルール上は破産財団になるもの」であっても必要性を説明するなどすれば、「自由財産の拡張」によって残せる可能性があります。そのため残したいものがあれば、自由財産の拡張ができないか専門家などに相談するべきです。
なお財産隠しなどをはじめとする「何らかのごまかし」をするとほぼ確実にバレますし、状況が悪くなるだけです。自己破産を早めに完了させるためにも、すべてにおいて誠実に対応しましょう。
自己破産で残せるものは意外と多いです。自己破産のメリットを早めに受け取るためにも、ギリギリの状態になる前に余裕をもって専門家などに相談することをおすすめします。

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