自己破産をすると生命保険は解約? 新たに加入はできるのか?

生命保険は解約返戻金の金額次第で、自己破産後も存続させることが可能です。
本記事では自己破産における生命保険の扱いを解説した上で、自己破産後も生命保険を解約せずに済む具体的な方法を4つご紹介します。

自己破産をした場合の生命保険の扱いは?

保険を解約した場合、今まで支払った保険料の一部が解約返戻金として契約者の手元に返ってくることがあります。そして、自己破産後も生命保険契約を継続できるかどうかは、この解約返戻金の有無やその金額により大きく異なります。
自己破産をした場合の生命保険の扱いについて、解約返戻金の金額に注目しつつ解説します。

生命保険の解約返戻金は財産扱いになる

自己破産を行う場合、生命保険の解約返戻金は財産として扱われ、債権者に対する分配対象となります。
解約返戻金が存在し、かつ「一定の条件」に該当する場合には自己破産時に生命保険が解約され、自己破産者が受け取った解約返戻金が債権者への返済に充てられます。

20万円以上の解約返戻金は解約する必要あり

解約返戻金が自己破産時に財産扱いされるケース、それは「解約返戻金の金額が20万円以上となる場合」です。自己破産手続きを行った時点で20万円以上の解約返戻金が存在する保険契約を交わしている場合には、その保険契約を解約する必要があります。

ここで注意するべきポイントは、「保険契約における解約返戻金の『総額』が20万円を超える場合」である、という点です。
生命保険以外にも解約返戻金が存在する貯蓄型の保険は複数存在します。自己破産時に保険を解約する必要があるか否かは、それら各種保険契約における解約返戻金の合計額を基準に判断されます。

また、解約返戻金の合計額が20万円を超える場合であっても、裁判所が「自由財産の拡張」(後述)を認めた場合には、自己破産後も解約返戻金を手元に残すことが可能です。

掛け捨ての保険でも一括払いは注意

掛け捨て型の保険は貯蓄型の保険と違い、解約返戻金がごく少額、もしくは存在しないケースが一般的です。
ただし、掛け捨て型の保険であっても保険料を一括払いで支払っている場合、満期までの未経過期間分の保険料が解約返戻金として発生するケースが考えられます。
自動車保険や火災保険といった貯蓄型以外の保険を一括払いで支払っている方は、自己破産時点における解約返戻金の有無を事前に把握しておきましょう。

解約返戻金がある生命保険が対象となる

これまでご紹介した通り、自己破産時に解約対象となる生命保険は20万円以上の解約返戻金が存在するものに限られます。
解約返戻金の金額は今まで支払った保険料の合計額を基に算出されるので、契約してから日が浅い生命保険等は解約返戻金も少ない金額なのが一般的です。
自己破産を検討されている方は、現時点で解約返戻金がどの存在するのかを保険会社に問い合わせておきましょう。

生命保険以外の保険にも注意

これまでご紹介した通り、自己破産の際に保険が解約されるかは各種保険の解約返戻金の合計金額によって決まります。
契約後ある程度の期間が経過している貯蓄型の保険や掛け捨て型・一括払いの保険を契約している方は、保険会社や弁護士への相談を事前に行い、現時点における解約返戻金の合計額を正確に把握しておく様に心がけましょう。

解約する必要がない生命保険とは?


では次に、自己破産後も生命保険の解約が不要な5つのケースに関して、解約返戻金の金額や保険の種類に注目しつつご紹介します。

解約返戻金が20万円以下の保険

自己破産の際に生命保険を解約する必要があるのは、破産手続き時点で解約返戻金の合計額が20万円である場合です。
従って、自己破産を行う際の解約返戻金が20万円未満であれば、手続き終了後も保険契約を継続することが可能となります。
また、解約返戻金が20万円以上の場合であっても、後ほどご紹介する「契約者貸付制度」を活用することで解約返戻金の額を減少させ、自己破産後も保険契約を存続させる、といったテクニックも存在します。
貯蓄型の保険をある程度の期間契約されている方は解約返戻金の額が20万円以上となっているケースが多い為、自己破産を検討される際にはご自身が契約中の保険が貯蓄型・掛け捨て型のいずれに該当するのかを事前に把握しておきましょう。

解約返戻金がほぼない保険

掛け捨て型の保険や契約後間もない貯蓄型の保険は解約返戻金が殆ど存在しない為、自己破産に際しても解約が不要です。
ただし、掛け捨て型の保険であっても保険料を一括払いで支払っている場合には、未経過期間分の解約返戻金が発生するケースがあり得るので注意が必要となります。
解約返戻金の有無や金額については保険会社への問い合わせを通して、自己破産手続き前に把握しておくことが重要です。

公的な保険

健康保険や国民健康保険、労災保険、雇用保険といった公的な保険制度は、自己破産後であっても引き続き利用可能です。

保険の貸付制度を利用していた場合

保険の貸付制度(契約者貸付制度)とは、解約返戻金の一部を現金として受け取れる、いわば解約返戻金の前払いとも言える制度です。この貸付制度を利用して解約返戻金の額が20万円以下になる様に調整すれば、理論上は自己破産後も生命保険を存続することが可能です。
ただし、貸付制度を利用できるのは自己破産手続きを開始する前まで。加えて、貸付制度の乱用による財産隠しが裁判所に疑われると解約返戻金が減少していないと判断される、或いは自己破産手続き自体が却下されるケースが考えられます。
貸付制度の利用を検討されている方は、必ず自己破産手続き開始前に弁護士へ相談を行いましょう。

裁判所による自由財産の拡張を認められていた場合

自由財産とは、自己破産後も所有が認められている財産のことです。
具体的には、

・99万円以下の現金

・破産後に取得した財産
・法律で差し押さえが禁じられている財産

この3つが自由財産に該当します。

自己破産時に生命保険の解約返戻金が20万円を超える場合であっても、解約返戻金に相当する額を裁判所に納付することで自由財産の拡張が認められ、当該生命保険を解約する必要がなくなります。

自己破産をしても生命保険を解約したくない場合の方法


それでは最後に、自己破産を行う際に生命保険を解約しなくても済むテクニックを4つご紹介します。
今までご紹介した内容の総括として、1つ1つ順番に見ていきましょう。

解約返戻金を20万円未満にする

1つ目の方法は、貸付制度を活用して解約返戻金の額を20万円未満に抑えるといったものです。
ただしこの方法は、

・自己破産手続き開始前にしか利用できない

・解約返戻金の減少による「解約逃れ」があまりに露骨だと、自己破産手続きの却下等のペナルティを裁判所から受ける可能性がある

といったデメリットも含んでいます。

貸付制度を利用した解約返戻金の変動を考えておられる方は、必ず事前に弁護士へ相談する様にしましょう。

裁判所による自由財産の拡張を認めてもらう

生命保険を解約せずに自己破産を行う2つ目の方法は、裁判所によって自由財産の拡張を認めてもらうことです。
解約返戻金が20万円以上存在する場合であっても、解約返戻金に相当する金額を裁判所に納付することで、自己破産後も生命保険を存続させることが出来ます。
生命保険への加入を継続できるがこうかは、自己破産後の生活を立て直す際に大きく影響します。現状持ち合わせに余裕がないといった方は家族や親族、知人へ援助を頼むといった方法を用いてでも、出来る限り裁判所から自由財産の拡張を認めてもらうことを推奨します。

保険法の介入権を利用する

保険法の介入権制度とは、2010年の保険法改正により新たに創設された保険金受取人を保護する為の制度です。
破産管財人や差し押さえ債権者が解約返戻金を目的として保険契約を解約しようとした場合、解約請求後1ヵ月以内に解約返戻金相当額(解約返戻金の約70%)を保険金受取人が支払うことで、保険契約を存続することが可能となります。

任意整理や個人再生をする

「自己破産ではどうしても生命保険が解約されてしまう」という方は、「任意整理」や「個人再生」といった制度を利用した借金減額をおススメします。
任意整理」とは、弁護士や司法書士といった法律家へ貸金業者との交渉を依頼し債権額や月々の返済額を減らしてもらうことで、債務者にとってより有利な条件で返済を行う手続きです。任意整理は自己破産や個人再生と違って裁判所を介さない為、生命保険を始めとした各種保険を解約しないで済む、といったメリットがあります。
個人再生」は自己の財産を手放すことなく行える、裁判所を通した借金の減額手続きです。個人再生も任意整理と同様、基本的には保険を解約することなく行える点が特徴ですが、手続き時点で多額の解約返戻金があると借金の減額幅が減少してしまうケースがあり得るので、事前に専門家への相談を行いましょう。

さいごに

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