自己破産をすると生活保護は受給が出来なくなる? 自己破産と生活保護はどちらが先?

今、自己破産をしようかどうしようか迷っていませんか?
自己破産は、裁判所に認められれば債務の殆どが免責される非常に便利な制度です。しかし誰でも際限なく使えるものではありませんし、デメリットも存在します。

とはいえ、中には「自己破産すると、受け取った生活保護まで没収されるのでは?」「生活保護を受けたいけど、自己破産すると受け取れなくなるのでは?」と悩んだり、誤解したりしている人もいるのではないでしょうか。

ここでは、自己破産は生活保護の受給にどんな影響があるのか、そもそも自己破産自体にはどんなメリット・デメリットがあるのかを解説していきます。

自己破産をしても生活保護は受給出来る!

結論から述べると、自己破産をしても生活保護は受給可能です。
ではそもそも自己破産とはどのような制度で、どんな人が自己破産できるのでしょうか。

自己破産とは?

自己破産とは、裁判所から「免責許可」というものを貰うことでそれまでの債務を免責、つまりほぼ全ての借金をゼロにするという手続きです。
「免責許可」を貰うためには、裁判所に「破産申立書」を提出し、「支払い不能」という状態であることを認めてもらう必要があります。

自己破産が出来る人とは?

「支払い不能」であるかどうかは、債務者の負債額・収入・資産状況などを裁判官が総合的に判断して決定します。
そのため、負債額が特別多くない人であっても、継続的な収入が見込めない場合や他に差し迫った状況にある場合(仕事をクビになった・怪我や病気の影響で働けない等)は自己破産が認められる場合があります。

自己破産の手続きはいつでも出来る

自己破産の手続きはいつでも行うことが可能です。
ただし自己破産は相談開始から免責許可が決定するまで(借金がゼロになるまで)には、平均3~4ヶ月、最長1年ほどかかります。ギリギリになって思い立っても難しいため、きちんと知識を得たうえで必要と判断したなら即行動した方が良いでしょう。

自己破産によるデメリットは?

「借金がゼロになる」というとても大きなメリットがある自己破産ですが、当然デメリットも存在します。
ここでは、自己破産による主なデメリットを7つ紹介します。

ブラックリストに載る

1つ目のデメリットは、ブラックリストに載ってしまうことです。
自己破産をした場合、日本国内の信用情報機関が持つ金融情報リストに事故記録(自己破産をした記録)が記載されます。消費者金融、クレジットカード会社、銀行などはこの記録を元にお金を貸す・貸さない、カード作成の審査を通す・通さないを決めているのです。
つまりブラックリストに載ってしまうと、その後でお金を借りたり、クレジットカード作ったりすることが出来なくなります。

ブラックリストは永遠に存在するものではなく、金融系やクレジット系であれば負債の免責から5年、銀行系であれば10年で解除されます。ただし、借金がゼロになったからといってすぐに新しく借金ができる、ということには絶対になりません。

生活必需品以外の財産は処分される

2つ目のデメリットは、生活必需品以外の財産が処分されてしまうことです。
返済義務がなくなるとはいえ、ただ借金がゼロになるだけでは債権者が損をするだけです。そのため、処分できる財産は処分し、返済に充てなければなりません。
とはいえ破産後の生活もあるため、生活や仕事に必要な財産は差押が禁止されています。反対に持ち家や車、現金(100万円以上)などは処分される可能性が高くなります。

職業や資格の制限が出る

3つ目のデメリットは、一部の職業に就いたり資格を取ったりすることが制限されてしまうことです。
裁判所から破産手続開始決定が出ると、債務者は「破産者」という扱いになります。破産者は資格登録が出来なくなるほか、それまで持っていた資格も一時的に取り消されてしまいます。
そのため、主に行政書士・警備員・税理士・司法書士・弁護士などといった、他人の財産や秘密を扱う職業に就けなくなります。また、一部の職種や企業ではそれまでの地位を失ったり、罷免になったりするリスクもあります。

官報に掲載される

4つ目のデメリットは、官報(国が発行する機関誌)に住所や氏名が掲載されてしまうことです。
自己破産したことを会社に秘密にしていても、会社が官報の破産者情報をチェックしている場合はそこから知られてしまいます。
一般の人が官報をチェックすることは稀ですが、自己破産を知られたくない場合は会社の動向を確認しておくべきでしょう。

破産手続き中の郵便物の受取が出来ない

5つ目のデメリットは、破産手続き中は郵便物を受け取れなくなる場合があることです。これは、破産手続きが管財事件・少額管財事件になり、破産管財人が選任された場合に発生するデメリットです。
管財事件とは、自己破産手続きをした人が一定以上の財産を持っている場合、その財産を処分して返済に充てる破産手続きを指します。その手続きのため選任されるのが破産管財人です。

管財事件や小額管財事件の場合、家に届く破産者宛の郵便物は破産管財人に転送されます。これはクレジットカードの明細や税金・保険の支払いに関する通知など金銭の動きを破産管財人が把握し、破産者の経済状況や隠し財産を正確に調査するためです。
もちろん、郵便物は後から返却されますし、破産者の家族宛の郵便物はそのまま届きます。また、転送されるのはあくまで郵便局から届く手紙やはがき類であるため、宅配業者から配送される荷物は破産者が直接受け取ることが可能です。

破産手続き中は旅行や引越の制限がかかる

6つ目のデメリットは、旅行や引越に制限がかかる場合があることです。
破産手続きが管財事件・小額管財事件になった場合、引越や旅行には裁判所および破産管財人の許可が必要となります。特に結婚や法事などといったやむを得ない事情ではない私的な旅行の場合、許可が下りない可能性は高くなります。
ただし、転勤や家賃を抑えるための引越であれば、裁判所は許可を出す場合がほとんどです。また、破産手続きが完了すればこの制限はなくなります。

連帯保証人に請求が行く

7つ目のデメリットは、連帯保証人・保証人がついている場合、自己破産後に借金の返済請求がその人達にいってしまうことです。
自己破産はあくまで破産者だけのものであり、連帯保証人や保証人まで借金が免除されるわけではありません。そのため、借金の金額が大きい場合、連帯保証人・保証人となった人達も自己破産しなければならないことがあります。
連帯保証人・保証人がいない場合は特に問題の無いデメリットではありますが、いる場合は、自己破産の前にきちんと話し合っておく必要があるでしょう。

自己破産によるメリットは?


では逆に、自己破産によるメリットは何でしょうか。自己破産について「何となく怖い」「悪いイメージだからしたくない」という印象を持つ方も多いでしょう。
ここでは、自己破産をすることによる主なメリットを4つ紹介します。

借金が無くなる

1つ目のメリットは、借金がほぼゼロになることです。メリットというより、これこそが自己破産の主目的といえます。
裁判所に「支払い不能」状態であると認められることにより、債務者は支払い義務から免責されます。それによって借金を返済しなくてもよくなるというわけです。

返済の催促や取り立てから解放される

2つ目のメリットは、返済の催促や取り立てから解放されることです。
借金の支払いが免責されるわけですから、債権者(消費者金融など)もこれ以上支払いの取り立てをする意味がなくなります。職場や家に電話がかかってきたり、督促状が届いたりすることもなくなるということです。

全ての財産が無くなるわけではない場合もある

3つ目のメリットは、必ずしも全ての財産が処分されるわけではないことです。
いわゆる「自由財産」と呼ばれる財産は処分が禁止されているため、債務者の手元に残ります。
自由財産とは差押禁止財産(生活に無くてはならない衣服・家具や1ヶ月分の食糧、仕事道具など)・破産手続き開始後に手に入れた財産・99万円以下の現金などです。他にも、裁判所に自由財産と認められたものであれば、自己破産をしても処分する必要はありません。

無職や生活保護者でも自己破産が出来る

4つ目のメリットは、仕事をしていない人や生活保護を受給している人でも、自己破産自体は可能ということです。
自己破産の条件は「借金の支払いが困難である」ことを裁判所が認めることです。ですから、無職や生活保護受給者、主婦であっても自己破産はすることができます。

生活保護とは?

では次に、生活保護とはそもそもどのような制度なのか、受給するのにどのような条件があるのかを紹介します。

生活保護とは生活に困窮している人への支援制度

生活保護とはその名の通り、毎日の生活に困窮している人を保護するための制度です。
毎日働いていても日常生活を送れない人、怪我や病気で働けなくなってしまい貯金がなくなってしまった人などが当てはまります。

生活保護の受給要件は?

生活保護を受給する条件は、もちろん「生活に困窮していること」です。
具体的には、次の5つの条件に当てはまっている人が主な生活保護受給の対象となります。

  1. 働けない
  2. 預貯金がない(1~10万円程度であれば所持可能)
  3. 換金できる資産がない
  4. 親戚からの支援が受けられない、または不足している
  5. 他の生活支援制度(失業保険や労災保険など)を利用していない

ただし、3~5についてはある程度例外が認められる場合があります。
特に受けている支援や制度があっても生活費に満たない場合、不足している分を生活保護で受け取れることがあります。

生活保護の受給方法は?

生活保護を受けるには、まず自治体の福祉事務所に行く必要があります。そして窓口に生活保護を受給したい旨を「相談」します。このとき特に必要な書類等はありませんが、通帳や給与明細、障がい者手帳などがあれば相談はスムーズに進むでしょう。
「相談」を経て生活保護を申請することになったら、生活保護の申請書と申告書を福祉事務所に提出します。申請書は申請者本人および世帯員・扶養義務者の情報、生活保護の申請理由を記載します。
申告書は2種類あり、収入に関する申告書と所有している財産についての申告書です。

また、申請の際にはマイナンバーカードなどの本人確認書類、給与明細や預金通帳などといった収入・資産に関する書類も必要です。
申請が受理されると担当者(ケースワーカー)による調査が行われ、生活保護が必要かどうか判断されます。その際、自宅訪問や追加の関連書類提出が求められることがありますが、その際の指示や指導には基本的に従う義務があり、拒否する場合は正当な理由が必要となります。

そして、調査の結果保護が必要とされれば、担当者から説明を受けたのちに生活保護が受給されます。なお、保護の要否は法律上、申請から14日以内に決定することとなっていますが、調査のために30日以内に延長されることも多いです。

自己破産をしても生活保護は受けられる

自己破産をしていても、生活保護を受給することは可能です。
なぜなら、生活保護を受ける条件はあくまで「生活に困窮していること」であり、自己破産をしているかどうか自体は生活保護の条件に一切関係ないからです。
ここでは、実際に自己破産にかかる費用や、生活保護を受けている場合にそれがどのように変わるのかを紹介します。

自己破産をするには費用はいくらかかる?

自己破産の手続きには、主に裁判所費用と弁護士費用が必要です。裁判所費用は基本的に申立手数料・予納郵券代・予納金の3種類、弁護士費用は着手金・成功報酬の2種類があります。
それぞれの費用と大まかな金額は次の通りです。

  1. 申立手数料:裁判所への破産申し立てに必要な費用。目安は1500円程度。
  2. 予納郵券代:自己破産したことを債権者に文書で伝えるための費用。目安は3000円~1万5000円程度。
  3. 予納金:自己破産手続きに伴う費用を賄うために裁判所に支払う金額。目安は1万円~50万円程度。
  4. 着手金:弁護士に仕事を依頼した際にかかる費用。目安は20万円~30万円程度。一度支払うと返金されない。
  5. 成功報酬:自己破産によって免責が許可された場合に支払う費用。目安は0円~20万円程度。事務所によっては成功報酬がない代わりに着手金が割高の場合あり。

3の予納金は、処分する管財によって変化します。管財が多い場合は管財人を選任する必要もあるため、最大で50万円程度かかることがあります。反対に、財産がほぼない場合は1万円~3万円程度で済みます。

また、4や5の弁護士費用については、法テラスを利用することで費用の立て替えが可能です。破産手続きを自分で行うことで費用そのものをなくすことも可能です。

生活保護受給者が免除される自己破産費用はいくら?

生活保護を受給している人が自己破産を申請する場合、法テラスを利用することで弁護士費用や予納金を立て替えてもらったり、免除されたりする場合があります。
法テラスの民事法律扶助制度を利用することで、弁護士費用を法テラスに立て替えて貰うことが可能です。原則としてこの費用は返還する必要がありますが、生活保護受給者の場合は自己破産中の返還が猶予され、また自己破産後も生活保護を受給している場合は返還自体が免除されます。
なお、この申請には生活保護受給の証明書が必要です。必ず役所などで事前に発行してもらい、法テラスに提出しましょう。

自己破産と生活保護はどちらが先でも良い。同時も可能。


自己破産と生活保護手続きのどちらを先に行うべきか、あるいは同時に行うべきか、その人の状況によりますがどのような順番で行っても基本的に問題ありません。
詳しいことはケースワーカーや弁護士に相談するのが一番ですが、ここでは自己破産を先にする場合、生活保護手続きを先にする場合、同時にする場合の3パターンについてそれぞれ紹介します。

自己破産をしてから生活保護の場合

生活保護の条件は「生活が困窮していること」であるため、自己破産の経験の有無は条件になりません。そのため、たとえ自己破産後でも生活保護受給の要件を満たしていれば、生活保護は受けることが可能です。

生活保護を受給してから自己破産の場合

生活保護受給中に自己破産をしても、生活保護費が減らされたり支給が止まったりすることはありません。なぜなら、自己破産はあくまで「借金がゼロになる」だけであり、新たな収入を得たことにはならないからです。

自己破産と生活保護を同時に行う場合

自己破産と生活保護の手続きは同時に進めても問題ありません。
しかし、借金がある状態で生活保護を申請しようとする場合、生活保護の担当者(ケースワーカー)に「先に借金問題を解決(債務整理)した方が良い」とアドバイスされることがあります。
ですので、一般的には自己破産の手続きを先に進める方が現実的と言えます。

生活保護受給の注意点

ここでは、生活保護を受け取るにあたって主に注意すべきことを2つ紹介します。

生活保護費で借金返済は出来ない

生活保護で受給した金額を借金返済に充てることは原則として禁止されています。
明確に法律で禁止されているわけではありませんが、もし受け取った生活保護費で借金を返済した場合、不正受給と見なされることがあります。

生活保護受給をしていても督促や取立は来る

生活保護を受給したからといって、借金の返済義務がなくなったわけではありません。ですから、生活保護受給中であっても督促や取り立てはなくなりません。

自己破産者が生活保護を受ける際の注意点

自己破産をした人が生活保護を受ける際にも注意すべきことがあります。ここでは、その主な注意点を紹介します。

生活保護受給を隠して借金は出来ない

法律で借金が禁止されているわけではありませんが、原則として生活保護受給者は借金ができません。
生活保護の目的は受給者に最低限の生活を送るための支援であり、受給者は基本的に生活保護費の範囲で生活しなければなりません。生活保護が生活のための最低限の保障を目的とする以上、受給者は元々の資産と生活保護費の範囲内で生活する意思を申請した、と捉えられるからです。

仮に生活保護を隠して借金したとしても、それはケースワーカーの訪問調査ですぐにバレてしまいます。ケースワーカーの訪問は生活保護受給者本人の同意なしに行えるため、仮に訪問を拒否したり調査を妨害したりした場合、生活保護費用が減額されたり、停止されたりすることがあります。

不正受給扱いになると給付金の返還を要求される

生活保護を隠して借金をした場合、生活保護の受給が「不正受給」扱いになる場合があります。なぜなら給与や年金だけでなく、受給者が使用できる資産が増えるという意味では借金も「収入」に含まれるからです。
不正受給と見なされると、生活保護費用を変更(減額)されたり支給を停止されたりするだけでなく、これまで支払われた費用を返還しなければならなくなる場合もあります。

実際にどの程度返還する必要があるかは自治体の判断によりますが、借金をした後に受け取った生活保護費のうち、借金額に相当する分は本来もらえないはずの生活保護費となります。その分の金額は、基本的に福祉事務所のある都道府県や市区町村に返さなくてはなりません。

自治体からの指導を受けることもある

生活保護費受給が不正受給と見なされてしまった場合、所属する自治体から指導を受けることがあります。
担当者からの口頭指導の場合はその内容に従わなくても不利益処分(生活保護の停止など)にはなりませんが、文書指導の場合はより具体的な指示内容や期限が定められており、従わなかった場合は不利益処分になる可能性があります。

まとめ

というわけで、自己破産のメリットとデメリット、生活保護への影響について紹介させていただきました。

自己破産や生活保護は決して怖いものではなく、国が認めた正式な救済措置です。正しい知識を得たうえで、ご自身の状況にあわせ適切に利用を検討してみてください。

さいごに

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