自己破産は借金がいくらなら出来るのか?支払不能の判断基準と借金総額の目安について

ここでは自己破産ができる借金の限度額や、「支払不能」とみなされる基準などについて解説していきます。また、「どのような状況であれば自己破産をするべきか」などに関してもお話しします。
自己破産について正しく理解することで、自己破産に関する手続きを確実かつスムーズに進めていきましょう。そうすれば自己破産のメリットを早く受け取り、生活を立て直しやすくなります。

自己破産が出来る借金の総額はいくらから?

まずは自己破産できる借金の限度額について見ていきましょう。

自己破産が出来る金額の決まりはない

「自己破産をするのだからかなりの負債がないと通らないのでは」と感じるかもしれませんが、実際には自己破産できる金額に決まりはありません。
ルール上どれほど少額でも認められる可能性はありますし、「これ以上借金があると自己破産できない」という限度額も存在しません。

金額よりも支払不能かどうかが重要

借金の金額よりも重要なのは「支払不能かどうか」です。
「その人の借金額、収入額、支出額などを考慮して客観的に判断した場合に、将来にわたって返済ができない状態」を指して支払不能といいます。
支払不能と認められなければ、どれだけ借金があっても自己破産手続きが開始されません。

自己破産が認められる「支払不能」について


自己破産が認められるための条件である「支払不能」についてもう少し詳しく解説していきます。

「支払不能」とは

繰り返しになりますが、「客観的に見て、将来にわたって返済ができない状態」のことを支払不能といいます。簡単にいえば「長期間費やしても返済の見込みがない状態」ということになります。

「支払不能」と認められない場合とは

支払不能と認められない可能性が高い例を一つ挙げます。

借金総額月収月々の返済額月々の生活費
1000万円60万円30万円20万円

借金総額は1000万円と高額であるものの、
月収60万円-(月々の返済額30万円+月々の生活費20万円)=10万円
という状況でありかなり余裕があるため、支払不能とは判断されないことでしょう。
逆に
・パターン1

借金総額月収貯金
100万円現在無職で収入なし0円

・パターン2

借金総額月収月々の返済額月々の生活費
200万円14万円10万円10万円

などの場合、借金総額はそこまで大きくないものの明らかに余裕がありませんし、完済に向かっていくことができる状態でもないため、支払不能と判断される可能性が高いです。
やはり「借金額そのもの」ではなく、「返済できる状況であるか」が重要といえます。

「支払不能」と認められなかった時の対処法

支払不能と認められなかった場合は、自己破産以外の債務整理を考えるといいでしょう。主に以下の債務整理があります。

任意整理債権者と個別に交渉して借金を減らしてもらいます。利息分がカットされるケース多いです。任意整理は「支払不能」でなくても行えますから、すべては債権者との交渉次第です。
個人再生裁判所に申し立てて、借金を原本ごと大きく減らしてもらいます。自己破産とは違って「支払不能である」だけでなく、「将来的に支払不能になる可能性が低くない」と判断された場合にも行えます。

なお個人再生できる借金には限度額があります。また、借金額が小さいケースでは個人再生するメリットがほぼない可能性もあります。
ただ、自己破産などの債務整理を検討し始めた段階で弁護士に相談すれば、「そもそも債務整理をするべきか」「するとしたらどの種類の債務整理をするべきか」といったところから話を詰めることができます。
そのため弁護士を頼れば、意味のない・意味の薄い債務整理をしてしまうことはまずありません。

自己破産を選ぶ判断基準やケースについて

続いて「どのような状況であれば自己破産を選ぶべきか」ということについて解説していきますので参考にしてください。ただ、ご自身で結論を出そうとせず、まずは弁護士に相談するのが先決です。

借金の金額が少額だった場合(1000万円以下)

まず、「借金が100万円以下で将来的にも返済できない」というケースでは、自己破産を検討するべきです。借金が100万円以下で個人再生をすると、基本的に借金が減らないためです。ただ、「借金が100万円以下で返済できない人」の多くは、病気を抱えている人、失業者、生活保護受給者、子どもがいて働くことができない母子家庭・父子家庭の親などです。
これらに該当しない、つまり「通常の働き方ができる」のであれば、自己破産ではなく任意整理によって利息を減らすべきだと言えます(もしくは生活を見直し地道に返済していく)。
その他、以下を目安にしてください。

借金が100万円~1000万円まで自己破産だけでなく個人再生も検討するべき
特に借金が300万円以上で返済能力もあるまず個人再生を検討するべき

いずれにせよ債務整理を検討し始めた段階で、すぐに弁護士に相談しましょう。
どの種類の債務整理がいいのかアドバイスしてくれるはずです。

借金の金額が1000万円を超える場合

借金が1000万円をオーバーしている場合、個人再生では返済ができない人が多くなります。弁護士と相談しつつ収入や財産状況を考慮しながら、自己破産をするか個人再生をするか選ぶことをおすすめします。
なお個人再生の限度額は5000万円です。そのため借金の金額が5000万円オーバーなのであれば、ほぼ自己破産一択となります(一般の民事再生であれば行えますが、その選択をするメリットがほとんどありません)。

公務員や会社員の場合

公務員や会社員など、定期的かつ安定した収入を得ている場合は、個人再生の検討をおすすめします。返済能力が高く、信頼性も高いため、個人再生がしやすいです。
また、他の職種では実行しにくい「給与所得者等再生」というタイプの個人再生も行えます。このタイプの個人再生であれば、全債権者が個人再生に反対していても、負債の減額を強行することが可能です。

自営の経営者の場合

自営業者でも個人再生を利用できます。特に残したいローン付きのマイホームや財産がある場合は個人再生がおすすめです(自己破産の場合、大半の財産を手放さなくてはなりません)。
ただし、自営業者は給与所得者等再生ができません。

パート・アルバイト・無収入の場合

パート・アルバイト・派遣社員・契約社員などでも個人再生を利用できるかもしれません。ただし、「最低限負債を返済し続けられる、安定した収入」がないと個人再生はできません。個人再生ができなければ、自己破産や任意整理を選ぶことになるでしょう。
無収入の方には「継続的に返済する能力」がないため、原則として個人再生は選択できません。また、「本人は返済できなくても、配偶者などの収入によって返済できる」という場合でも個人再生はできません。あくまで本人の収入でなければならないためです。
よって無収入の場合、基本的に自己破産をするしかありません。ただし、配偶者などからの収入を使って返済することを前提に、任意整理ができるケースもあります。
もちろんそれ以前の話として、配偶者などに事情を伝えて返済の肩代わりをしてもらうこともできるかもしれません。それで穏便に済みそうなのであれば、配偶者に相談するのもいいでしょう。

生活保護者の場合

ポイントは以下の通りです。
●  生活保護費は「収入」ではない
●  よって生活保護受給者は個人再生できない
● 「生活保護費を使って返済する」もしくは「生活保護費受給者が借金をする」と保護費を止められる(または減額される)恐れがある
以上のことから生活保護受給者が借金をしたら、基本的に自己破産をして借金をゼロにしなければなりません。
「生活保護費受給者が借金をする状況そのものがおかしく、かつ生活保護費によって返済すれば保護費が止まるかもしれない」ためです。

年金受給者の場合

ポイントは以下の通りです。
●  年金は「収入」扱い
●  そのため状況によっては個人再生が可能(給与所得者等再生も可能)
●  ただし年金額が少なくて返済に不足するのであれば、基本的に自己破産をすることになる

自宅(持ち家)を残したい場合

自己破産:ほぼ間違いなく持ち家がなくなる
個人再生:「住宅資金特別条項」によって持ち家(各種不動産)を守ることができる
そのため自宅を残したいのであれば個人再生をするべきです。
ただ、そもそも「本当に自宅を残したいのか(残すメリットがあるのか)」「自宅を残す(個人再生で済ませる)余裕があるのか」というところから考えるべきでしょう。

職業に資格制限がある人の場合

自己破産を行うと「資格制限」が発生し、手続き中に一部の資格や職種が無効になります(もしくは制限されます)。
例えば士業、旅行業者、質屋、貸金業者などの仕事が行えなくなりますし、公証人、警備員、生命保険外交員などの資格には制限がかかります。また、成年後見人の資格も消えます。
ただ、資格制限が続くのは3~6か月ほどであり、それを過ぎれば基本的に以前と同じ状態に戻ります。とはいえ数か月仕事ができなくなるのは、多くの人にとって痛手であるはずです。
そのためこれらの職業に就いている方(もしくは就く見込みのある方)は、自己破産ではなく個人再生を選択するべきかもしれません。
なお資格制限に関する細かなルールは、破産法ではなく、それぞれの資格に関する規則によって定められています。
つまり資格によってルールが違うということですし、ややこしくもあるため、弁護士などと相談して慎重に確認を取りながら進めていくことをおすすめします。

ギャンブルや浪費で出来た借金によるものの場合

ギャンブルや浪費は、自己破産の「免責不許可事由(免責許可をしないに足る理由)」であるため、自己破産できない可能性があります。
ただ、実際に自己破産ができないケースは全体の2%ほどしかありません。
「免責不許可事由があっても、本人に更生の意思があり、自己破産手続きにも協力的であれば免責許可を出す」というのが全体的な傾向といえます。
ただし、
●  ギャンブルや浪費による負債があまりにも高額である
●  本人に反省の意思が見えない
●  過去にも自己破産歴がある
などの場合は自己破産できなくてもおかしくありません。

7年以内に自己破産をしている場合

「7年以内に自己破産をしていること」は自己破産の免責不許可事由となります。つまり、短期間における複数回の自己破産は基本的にできないということです。
7年以上経ってから自己破産するか、すぐに個人再生をするか、どちらかを選択することになるでしょう。

自己破産のメリット・デメリットについて


続いて自己破産のメリット・デメリットを簡単に紹介します。

自己破産によるメリットとは

●  返済義務がなくなる
●  請求や催促がなくなる
●  ある程度の現金(限度額99万円)、ある程度の預貯金(限度額20万円)、生活に必要な物品などは残すことができる
当然ながら返済義務がなくなるというメリットは非常に大きいです。これによって人生を立て直しやすくなることでしょう。また、請求や催促がなくなりますから精神的にも楽になります。
そして「自己破産=全財産を失う」と誤解している人もいますが、ある程度の現金・預貯金・物品を残すことはできますから、生活が成立しなくなるレベルで環境が変化するわけではありません。

自己破産によるデメリットとは

●  ブラックリストに載る(5~10年はクレジットカードを作ることやローンを組むことなどが非常に難しくなるなど)
●  大半の財産が処分される(20万円以下の預貯金、99万円以下の現金、生活に必要な物品などは残せる)
●  保証人や連帯保証人に迷惑が及ぶ
●  25~50万円程度の弁護士費用がかかる(詳細は後述します)
主にこれらのデメリットがあります。
とはいえ「返済義務がなくなる」という極めて大きいメリットを考えると、これらのデメリットがあっても自己破産をするべきである場合が多いです。
ただ、自己破産すると、保証人や連帯保証人に返済義務が移ります(この返済義務は消えません)。そのため自己破産をしたいのであれば、早急に保証人や連帯保証人に相談しましょう。
ですが任意整理であれば、保証人や連帯保証人に返済義務が移ることはありません。保証人や連帯保証人に迷惑をかけたくない場合は、できる限り任意整理で済むようにしましょう。
※この辺りのことについては、保証人や連帯保証人との信頼関係や、事前の取り決めによります。

自己破産にかかる費用について

最後に自己破産にかかる費用について紹介します。

予納金とは

「自己破産をするにあたって発生する費用」のことを予納金と呼び、原則として申し立ての際に支払います。
予納金の目安は以下の通りです。

同時廃止事件1~3万円
少額管財事件20万円程度
管財事件50万円~

同時廃止事件:1~3万円
少額管財事件:20万円程度
管財事件:50万円~
なお自己破産の多くは同時廃止事件として処理されています。基本的に「財産をすべて(もしくはそれに近いレベルで)処分する」のであれば、同時廃止事件として進めることができる可能性が高いです。

専門家費用について

まず自己破産における弁護士費用の相場は

着手金20~30万円程度
成功報酬0~20万円程度

です。トータルでは25~50万円ほどになると考えましょう。
また、司法書士を利用する場合、費用は20~30円ほどが目安となります。
ただし弁護士に比べると対応してくれる仕事の範囲が狭く、自分でしなければならない作業が増えます。
それでいて弁護士費用に比べて大幅に安くなるわけでもありませんし、結果的に弁護士費用よりも高くなってしまう可能性もあるため、基本的に弁護士を利用することをおすすめします。

分割払いや法テラスを利用する方法がある

自己破産などの債務整理を扱う弁護士の中には分割払いに対応してくれるところも多いです。すぐにまとまった費用を用意できない場合は検討しましょう。
また、法テラスを利用する方法もあります。法テラスを使えば弁護士費用を立て替えてくれます(基本的に後で支払います)し、3回まで無料で法律相談ができます。
ただし、自己破産手続きが完了するまでの期間が多少長くなるため、急いで債務整理をしたい場合は注意が必要です。

まとめ

自己破産ができる借金額に限度額はありません。借金額よりも「支払不能であるか」が重要です。また、総負債額や職業(雇用形態)などによって、自己破産するべきか他の種類の債務整理をするべきかについては異なります。
ただ、「支払不能であるかの判断」「自己破産・任意整理・個人再生などのうち、どの債務整理をするかの判断」などは一般の方にはしにくいですから、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
自己破産にはデメリットもありますが、その後の生活が成り立たなくなるレベルの影響はありません。「返済義務がなくなる」などメリットの方が大きいですから、弁護士などと相談しつつ早めに進めていくことをおすすめします。

さいごに

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