自己破産の手続きを行なうには裁判所は切っても切り離せません。その手続きは依頼する弁護士さんがしてくれるから、本人は裁判所へ行かなくていいのでしょうか?行かないといけないなら、その理由は何なのでしょうか。行かなくていい場合も含め、いろいろ気になるところです。今回は、それらの理由や行く場合に注意することなどを見ていきましょう。
自己破産をすると裁判所に行かないといけない?
自己破産すると裁判所へ行かなければいけないのでしょうか?裁判所といえば、なんとなくおどろおどろしいイメージがあり、足を運びにくい印象があります。
原則は本人が裁判所へ行く必要がある
自己破産の手続きを行なっていく上で、裁判所に出向く場合があります。手続きを弁護士や司法書士などの専門家に依頼している場合は、それらの方が代理人として行くことで事足りる場合もありますが、本人が出向いた方が裁判所からの印象がいいですし、出向かないと協力的でないという悪印象を与えかねません。なお裁判所によっては書面のみで審査を行なう「書面審理」で済む場合もあります。
自己破産をすると裁判所へ行かないといけない理由
自己破産の手続きを進めていく上で、裁判所が債務者本人に直接、借金を作ってしまった理由などを聞く「免責審尋」や、債権者を集めて配当がいくら支払われるかの報告などを行なう「債権者集会」などが行なわれる場合があります。免責審尋では、本当のことを言っているかなどを問われたりなど、借金支払いを免責されるにふさわしいかどうかを決める大事な面談ですし、債権者集会では貸したお金が返ってこない方々を相手に顔を合わすことになるので合わせづらいですが、誠意を持って顔を出すことが大事になるでしょう。
自己破産手続きによって行くタイミングが違う
自己破産には、財産額の大きさにより手続きの方法が変わってきて、裁判所へ出向くタイミングや回数が異なってきます。手続きの方法は大まかに分けて以下の2種類です。
● 同時廃止事件
● 少額管財事件、管財事件
自己破産手続き 同時廃止事件の場合
自己破産の手続きの一つに「同時廃止事件」があります。どのような内容なのか見ていきましょう。
同時廃止事件とは
同時廃止事件は、財産が20万円未満の場合に行なわれる自己破産の手続き方法です。財産額が少ないことから、債権者への配当が行われません。そのため財産の調査や審査、換金などにかかる時間や費用が不要となることから、手続き期間が短く、費用も安価で済む方法です。破産手続開始決定と破産手続廃止決定が同時に行なわれます。
同時廃止事件の手続きの流れ
同時廃止事件の手続きの流れは以下のようになります。
1. 弁護士・司法書士などの専門家に自己破産の相談
2. 受任通知の送付
・・・債権者へ受任通知が届くと、その時点から督促できなくなります
3. 申立書の作成
・・・債権者名簿や、各債権者への債務額の一覧表、財産目録などを作成します
4. 裁判所に自己破産を申立る
5. 破産審尋
6. 破産手続き開始の決定
7. 免責審尋
8. 免責許可決定
裁判所に書類を提出すると、裁判所は書類審査を行ないます。債務者へ配当を行なえるほどの財産が無いと判断されて同時廃止事件に決まっても、書類審査だけでは審査が十分ではないとなると免責審尋が行なわれます。裁判官と面談して破産することになった理由や、反省しているかどうかの確認が行なわれます。財産隠しが発覚したり、ウソをついていたりなどの問題が無い場合は、2週間程度で免責決定が決まり、手続きが終了します。
出廷するタイミングと回数
自己破産の手続きが同時廃止事件に該当した場合は、裁判所に出向くのは免責審尋が行なわれる場合のみです。内容や裁判所によっては免責審尋が行われない場合もあります。そして、個別に行なわれず、集団で免責審尋が行なわれる場合もあります。集団で行なわれる場合は、一人当たりの時間も短く、プライバシーに関わる質問も行なわれない場合が多いです。
自己破産手続き 管財事件・少額管財事件の場合
自己破産のもう一つの手続きの方法である「管財事件・少額管財事件」がどのようなものなのか見ていきましょう。
管財事件と少額管財事件とは
自己破産の手続き方法には、同時廃止事件のほか、管財事件と少額管財事件があります。
管財事件・少額管財事件の対象となる条件は、財産額が20万円以上であったり、借金額が5,000万円以上、免責不許可事由に関する調査が必要である場合や、個人事業主であったり、法人の代表だったりする場合です。財産額が多く、債権者への配当が必要となってくることから、財産の調査や審査、換金などに時間を要したり、破産管財人の選定が必要であることから、時間や費用がかかるのが特徴です。
管財事件と少額管財事件の手続きの流れ
1. 弁護士・司法書士などの専門家に自己破産の相談
2. 受任通知の送付
・・・債権者へ受任通知が届くと、その時点から督促できなくなります
3. 申立書の作成
・・・債権者名簿や、各債権者への債務額の一覧表、財産目録などを作成します
4. 裁判所に自己破産を申立る
5. 破産審尋
6. 破産手続き開始の決定
7. 破産管財人による財産の調査・清算
・・・債権者へ配当するために債務者の財産の調査を行ない、換金します
8. 債権者集会・免責審尋
・・・債権者を集めて配当に関する報告をしたり、裁判官との面談を行なったりします
9. 免責許可の決定
裁判所が提出した書類審査を行ない、手続き方法が管財事件になった場合、裁判所が破産管財人を選任します。破産管財人が選任されると、裁判所に予納金として約20〜50万円を納める必要がでてきます。財産の処分には、少額管財事件で約2〜3ヵ月、管財事件では3〜6ヵ月もの時間を要します。債務者の現金や車、持ち家などの財産を調査や換金を行なって現金化して、債権者へ平等に配当します。債権者集会では、破産管財人から債権者へ配当の見込みなどを伝えます。債権者集会は、最初に開催される時点で換金等が終了していたら1度で済みますが、まだ調査途中であったり換金が完了していない場合は、その後もそれらが完了するまでは、複数回行なわれる可能性があります。そして、問題が無ければ免責が決定します。
出廷するタイミングと回数
管財事件に該当する場合、債権者集会と免責審尋が同時に行なわれる、その最低1度は裁判所へ出向くことになります。債権者集会が1度で終了しない場合はその後も開催される度、出向く必要があります。
自己破産をしても裁判所に行かなくてもいい場合
できることなら、裁判所へ出向かずに手続きを行ないたいでしょう。どのような場合だと、裁判所に出向かなくても手続きを進めることができるのでしょうか。
財産として認められたものがない場合
自己破産に伴う手続きでは財産が少ない場合、同時廃止事件が適用されます。同時廃止事件では、通常は免責審尋が行なわれますが、書類のみで審査が行なわれる「書面審理」で自己破産が決定すると免責審尋が行なわれません。よって、裁判所へ出向く必要がなくなります。
免責不許可事由に該当しない場合
自己破産に伴う手続きで財産が少ない場合は同時廃止事件が適用されますが、免責不許可事由に該当する場合は、少額管財事件の適用になる場合があります。同時廃止事件だと、「書面審理」で済み、裁判所へ出向かなくてもよい可能性もあるのです。なお、免責不許可事由は主に以下の通りです。
● ギャンブルや株式、浪費が原因で借金した場合
● 不当に財産を減少させた場合
● 財産を隠した場合
● 不当に債務を負担した場合
● 相手を騙して信用取引を行なった場合
● 虚偽の債権者名簿を作成、提出した場合
● 虚偽の説明や発言を行なった場合
● 偏頗弁済を行なった場合
● 過去7年以内に免責を受けている場合
● 管財業務を妨害する場合
● 自己破産の手続きに非協力的な場合
申立人が病気など、特別な事情がある場合
申立人が病気で裁判所に出廷できない場合は、弁護士から出廷できない旨が記載された書面を裁判所へ提出し、これを裁判所が認めれば自己破産することができる場合があります。
申立人に成年後見人がついてくる場合
申立人が認知症などで判断能力がない場合は、成年後見人が代理人として出頭することで、裁判所が認めれば自己破産することができる場合があります。
弁護士や専門家に依頼をしても行かなくてはいけない
自己破産の手続きには、専門的な知識が必要なので弁護士や司法書士など法律の専門家に依頼することがほとんどです。書類の作成や裁判所への書類の提出などは専門家の仕事となってきます。しかし、自己破産が成功するかどうかは、書類だけで決定されるわけではありません。裁判官との面談での印象なども判断材料となってきます。その面談を行なうには裁判所へ行かなければいけません。
自己破産の面接時に裁判所から聞かれること
自己破産の手続きを進める中で、裁判所で面接が行なわれる場合があります。どんなことを聞かれるのか事前に知っておくことが大事です。
破産審尋の場合
破産審尋は、自己破産手続きの開始を決定するために行なう面談です。裁判所に破産申立書が受理されてから1〜2ヵ月後に行なわれます。借金をしてしまった理由や原因、借金をした時期や、どの金融機関やどのような方にいくら借金をしているかといった内容、そして現在の収支状況、預貯金や車、家などの財産の内容、さらに免責不許可事由に該当している場合は、反省しているかどうかなどを聞かれます。約20〜30分で終了します。
免責審尋の場合
免責審尋は、借金の返済義務を免除していいかどうかが決まる重要な面談です。まずは債務者の氏名や年齢、本籍地に誤りはないかを聞かれます。そして支払いが不能になった原因を問われます。借金額が収入に見合っていなくて返済できなくなったのか、収入に対して返済は可能な額であるにもかかわらず返済に回さなかったことで支払いが不能になったのかなど原因はさまざまだと思います。破産しなければならなくったことをどのように捉えているかも聞かれます。債権者へ返済できなくなることをどう考えているか、返済できなくなったのはなぜかを考えてみる必要があるでしょう。さらには今後の生活の展望なども問われます。自己破産した後のお金の使い方をどうしていきたいか、どうすべきかを問われるでしょう。免責審尋は約15分かかります。
債権者集会の場合
債権者集会の目的は債権者へ支払うための配当の進捗状況や結果報告です。初回の債権者集会までに財産の調査や換金などが終了していたら、債権者集会は1度で終了します。内容は主にどの債権者へいくら配当が行きわたるかの報告です。初回までに財産の調査、換金が行なわれていなかったら、その時点での進捗状況や、その後の進め方などの報告が行なわれます。そして、配当が完了するまで第2回以降も開催されます。1回の開催につき10~15分ほどです。
自己破産出廷で気をつけること
自己破産に伴う出廷で気をつけておくべきことがあります。一つ一つ注意深く見ていきましょう。
出廷時に持っていくもの
各書類提出時や出廷時に持参するものは主に以下のとおりです。
自己破産申し立て時 | ● 筆記用具 ● 印鑑 ● 身分証明書 ● 戸籍謄本・住民票など ● 自己破産申立書 ● 陳述書 ● 債権者一覧表 ● 滞納公租公課一覧 ● 家計簿・預貯金通帳の写し ● 住居など資産に関する書類 |
破産審尋 | ● 筆記用具 ● 印鑑 ● 身分証明書 ● 申し立て書類の控え ● 裁判所からの呼び出し状 ● 出頭カード |
免責審尋 | ● 筆記用具 ● 印鑑 ● 身分証明書 ● 裁判所からの呼び出し状 ● 出頭カード |
出廷時の服装
自己破産に伴う裁判所への出廷に服装の決まりはありません。ただ、自己破産は、本来は債権者へ返済すべき借金の返済を免れるために行なう制度です。他人に迷惑をかけているということを考えると、常識的で反省の意を表す服装で出廷すべきでしょう。一番良いのはスーツなどの正装が好ましいです。スーツが無ければ、落ち着いた色で正装に近い感じの服を着用し、髪やひげなども清潔感のある好印象が持てる身だしなみを行なうことが大事です。
出廷でかかる時間
自己破産に伴う裁判所への出廷に関する面談等でかかる時間は以下のとおりです。ただ案件により要する時間は異なります。
● 破産審尋・・・約20~30分
● 免責審尋・・・約15分
● 債権者集会・・・約10~15分
裁判所にかかる費用
自己破産に伴い裁判所へ支払う費用は以下のとおりです。
同時廃止事件 | ● 自己破産申立の印紙代・・・1,000円 ● 免責手続き申立の印紙代・・・500円 ● 郵便切手代・・・3.000~5,000円 ● 官費公告費用・・・10,000~19,000円 |
少額管財事件 | ● 自己破産申立の印紙代・・・1,000円 ● 免責手続き申立の印紙代・・・500円 ● 郵便切手代・・・3.000~5,000円 ● 官費公告費用・・・10,000~19,000円 ● 引継予納金・・・約20万円 |
管財事件 | ● 自己破産申立の印紙代・・・1,000円 ● 免責手続き申立の印紙代・・・500円 ● 郵便切手代・・・3.000~5,000円 ● 官費公告費用・・・10,000~19,000円 ● 引継予納金・・・約50万円 |
裁判所へは以上のような費用がかかりますが、弁護士・司法書士に手続きを依頼した場合は、別途、弁護士・司法書士への報酬が必要となります。
その他、出廷する際に気をつけるポイント
自己破産で借金の返済を免除してもらうには、もちろん提出する書類の内容などが重要な判断材料となっていますが、このような経緯に陥ったことへ反省しているかどうかも厳しくみられます。出廷にのぞむ姿勢も判断材料になっているということです。まずは、出廷に遅刻しないことです。時間にルーズだと今後の何事にもルーズだと判断されかねません。そして、面談時の対応には誠意を持って正直に答えることが大事です。ウソをついて、それが後でわかると反省の色が見られないということで自己破産が失敗に終わることもあります。
まとめ
自己破産の手続きを進める上で、債務者は一部の場合を除き、裁判所へ出向く機会があります。裁判所へ出向いた場合、面談が行なわれて借金に対してどう向き合ってきたか、今後どうお金と向き合うべきか、などが問われます。そして、どのようなことを聞かれるか、どんなことに注意すべきかがわかりました。自己破産を考える中で、この記事の内容をよく読み、どうするべきか考えてみませんか。
さいごに
【予算不足のためご自身でなんとかしたい方はこちらへ】
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