離婚後、子どもの養育費を支払っている親が破産申請を行ったとき、どのような手続きが必要なのでしょうか。
この記事では、自身が債務者だった場合、そして養育費を支払っている相手が債務者だった場合など、自己破産と養育費についてお話していきます。
自己破産は決して悪いことではない
はじめに、自己破産自体は悪いことではなく、再出発をするための手段であり、権利だということを理解しましょう。
自己破産は決して悪いことではありません。再出発をするための支援制度だと考えてください。
この記事を読んでいる方の中には、今現在、借金だらけで支払いがどうしても滞っているという方もいるのではないでしょうか。
自己破産をするときは大きく分けて、所有している財産を処分する、抱えている債務を清算するという2つの手続きがあります。
今からこの2つについて詳しく紹介します。
自己破産は財産を清算する手続きである
自己破産というのは、継続的に債務を返済できない人が、債権額に従って手元の財産を債権者に分配する手続きになります。
だからと言ってすべての財産を処分され、その後の生活が出来なくなるといったものではありません。
しかし、自己破産が完了するまでにはとても時間がかかります。また、必要な書類や資料を集めたり、裁判所へ出向いたりとやるべき事も非常に多いです。
そのため、まずは弁護士や司法書士に相談するのをおすすめします。
自己破産に値するかどうかを確認してもらい、その上で破産手続きを進めていきます。
自己破産に必要な書類については依頼した弁護士や司法書士が用意するものもありますが、自身で集めなければいけないものもあるのでよく確認しましょう。
また、債務状況や収入について、なぜ今の状況になったのかなど、専門家(弁護士・司法書士)に話す必要があります。この時、必ず正直に答えるようにしましょう。嘘をつくと自己破産ができない恐れがあります。
書類や資料が集まり専門家の調査や面談が終わってから、裁判所に自己破産の申請を行うことになります。
このように、申請を行う前までに相当な準備期間が必要になるため、自己破産をしようと思っている方は早めに専門家へ相談をしましょう。数日で自己破産の申請ができるとは考えないようにしてください。
また、自己破産の申請を裁判所に提出した後は、依頼した弁護士とは別に管財人(弁護士)が決まりますので、その後は管財人と債権者の間で入念な打ち合わせが必要になります。
自己破産が完了するまでの流れ
破産者がもつ債務の確定作業
破産者がもつ債務の調査とは具体的になにを行うのかというと、貸金業者からの借入れはないか、個人的な貸し借りの有無とその金額、家賃の金額はどのくらいか、通信料や光熱費などの滞納がないかとその金額、債務者が故意に隠している財産はないか、自己破産の申立て前に一部の債権者だけに弁済をしていないか、などです。
調査後に管財人が債権の額・種類などを記述した資料を裁判所に提出します。
破産者の資産の管理・処分・回収作業
管財人の一番重要な作業が、破産者の財産の管理・処分・回収作業になります。
調査後に出てきた財産についても、債権者に配分される破産財産と、自己破産する本人が使える自由財産の2つに分けられます。
自由財産に関しては、破産した後も自由に使えるものになります。
どういう経緯で破産に至ったのかの調査
破産に至った経緯や原因について詳しく調査されます。
債務者は管財人と対面して聞き取り調査が行われますが、そこで嘘を言ってはいけません。全て包み隠さず正直に答えましょう。
聞き取り調査や集めた書類などをもとに、管財人は債務者に免責不許可事由がないのかどうかを確認します。
この調査を踏まえて、初めて破産手続きが許可されるわけです。調査結果次第では、免責が不許可になる可能性もあります。
今までの事例を見てみると、2017年度の自己破産の免責不許可率は0.57%と、ほとんどが免責を許可されていることがわかります。
債権者集会があるので、債務者の代理で報告
債務者の聞き取り調査などで債権者へ配当できる金額がはっきりとわかった後、債権者への説明会が開かれることになります。
債権者集会での報告は管財人が事前に提出した書面での内容が中心となるので、比較的スムーズに終わることが多いです。
集会は、一般的には1回で終りますが、債務者の財産に不動産任意売却や過払い金の回収が終わっていない時は、2回目の集会を開催することもあります。
配当の手続き
最後に行われるのが配当の手続きです。
配当とは、債権者に配当する債務者の財産を分配することです。
配当できるような財産があれば配当して終了となりますが、配当できる財産がない場合は破産手続終結によって破産手続きは終了となります。
破産手続きの申請から終了するまでにかかる期間は、一般的に半年程度かかります。
その間、債務者は管財人と何度か対面での調査を受け、あとは電話などで確認や連絡を行うようになり、最後に裁判所に出向くことになります。
債務者が直接債権者とやり取りをすることはほぼありません。管財人が、債務者の財産を管理して、債権者との連絡を行います。
自己破産の手続きを行なう時、財産を所有していたら?
有価証券を所有している場合
株などの有価証券を所有しているときはそれらすべてを現金に換えて、20万円を超えた分に関してはすべて債権者への返済に充てられます。
FXや仮想通貨を所有している場合、FXや仮想通貨なども有価証券と同じ扱いになります。
貴重品やブランド品を所有している場合
貴金属やブランド品はお金に換えられるものなので、返済金の対象になります。
ただし、売却しても価値がないようなものは対象外になります。
売掛金などがある場合
自己破産する人が個人事業主で売掛金などがあるときは、のちの収入になるので、それも回収されて債権者への返済になります。
養育費を支払う相手が自己破産をしたら養育費はもらえない?
自己破産をする債務者が子どもの養育費を支払っている場合、その養育費の支払いについてはどうなるのでしょうか。詳しく見てみましょう。
養育費とは
養育費とは、『子どもが経済的・社会的に自立して、社会人になるまでに必要な費用』のことです。
具体的には、生活にかかる費用(食費や住居費、被服費)、学校にかかる費用(授業料や教科書代といった教育費)、医療費などを指します。
この養育費は、離婚をして親権者でなくなったとしても、未成年の子どもがいる場合は支払わなければいけません。
自己破産をしても養育費は免除されない
自己破産を行なうことで抱えている債務はゼロになりますが、養育費は非免責債権(免責許可決定の効力が及ばない債権)のため、支払い義務は免除されません。
自己破産後も自力で支払う必要があります。
【非免責債権の例】
- 税金や社会保険料
- 養育費や婚姻費用
- あえて債権者名簿に載せなかった債権
- 個人事業主が支払う給料
- 罰金
などです。
非免責債権の種類については、破産法によって定められています(破産法253条1項)。
自己破産における養育費の扱いについて
それでは、自己破産をした時に養育費はどのような扱いになるのか、具体的に紹介します。
自己破産時に養育費を滞納していない場合
自己破産時に養育費を滞納しておらず、今後も自力での支払いが可能な場合は、離婚時に取り決めた金額の支払いをそのまま継続して行います。
前項でも述べた通り、自己破産をしたからと言って養育費の支払いが免除されることはありません。
自己破産時に養育費を滞納している場合
まずは自己破産の手続きを行う前に、相手と話し合い養育費の減額や免除を要求しましょう。なぜ養育費を支払うことができないのか正直に話し、「滞納分を分割で支払う」「現在の収支を明かして支払い可能な金額を提示する」といった具体的な案があると相手も受け入れやすくなります。
話し合いで解決しなかった場合には、家庭裁判所で養育費減額調停を申し立てることになります。
やむを得ない理由で収入がなくなったり、生活保護を受けることになったりした場合には、養育費の支払い金額の減額が認められることがあります。
自己破産における養育費の支払いについての注意点
相手は「債権者」となるので通知をしなければならない
養育費の支払先である相手方は破産債権者となります。
債権者名簿に載せなった場合、「債権者隠し」とみなされ免責を受けられなくなる可能性が発生します。
滞納している養育費を支払ってはいけない
自己破産の手続上、養育費も“破産債権”として扱われます。
そのため、滞納しているからと養育費を支払ってしまうと、養育費のみを支払った=「偏頗弁済(へんぱべんさい)」となり、免責してもらえなくなるおそれがあります。
将来的に支払う養育費について(支払側)
自己破産後の収入が、養育費の支払い金額の取り決めを行ったときよりも少ない場合、約束の金額を支払うことができなくなります。
その場合は、親権者に対して養育費の減額請求をすることも可能です。
公正証書による養育費の場合、差し押さえの可能性もある(支払側)
公正証書で養育費の金額や期間などを決めている場合、債務者側が養育費の支払いを滞納していると、親権者側から養育費の強制執行がなされる恐れがあります。
それは、自己破産中の場合でもあり得ることなので注意しなければいけません。
強制執行が行われた場合は、給与や預貯金を差し押さえられる恐れも出てきます。
自己破産手続き開始後は、支払期限が過ぎた養育費は受け取ることができない(受取側)
支払い側が滞納している養育費については、自己破産中に受け取ることはできません。
これは、一部の債権者に対して滞っている返済を行うことは禁止されているからです。
また、配当の際は養育費だからといって優先的に配当を受けることもできません。他の債権者と同様、債権額に応じて公平に分配されます。
ただし、破産手続きの開始決定後に支払期限がきた養育費については、破産手続きの対象外となるので請求することができます。
相手に支払能力がない場合、養育費の減額を要請されることがある(受取側)
離婚時に取り決めた金額を支払っていくのが難しいといった理由などで、養育費の減額を求められることがあります。
やむを得ない事情であれば仕方のないことかもしれませんが、自己破産によって借金の支払い義務から解放されているため、安定した収入がある場合はかえって余裕ができている可能性があります。
そのため、安易に応じるのではなく、本当に支払い能力がないのかどうか慎重に判断しましょう。
まとめ
自己破産とはどういうもので、自己破産をおこなうことで養育費はどういった扱いになるのか、紹介してきました。
自己破産をしても養育費は免除されませんが、ほかの借金をゼロにすることで支払っていく余裕が生まれると思います。
子どものためにも、今現在借金で苦しんでいる方は養育費の支払いが滞らないように自己破産をする、という選択肢も頭に入れておくといいかもしれません。
さいごに
【予算不足のためご自身でなんとかしたい方はこちらへ】
コメント