自己破産で差し押さえられる財産って何? 自己破産をするときの注意点や具体的にどうなるのかを徹底解説!

自己破産をすると差し押さえられる財産は何?残せる方法はある?

自己破産をする際に気になる事は、差し押さえられる財産は何なのかとそれを残す方法はあるのかという点だと思います。
この記事ではその二点について解説していきます。

自己破産での差し押さえとは?

差し押さえとは破産者に対してその財産の回収を図るための手段です。

「差し押さえ」ではなく、「財産の処分」

そもそも「差し押さえ」という言葉は誤解されやすいのですが、正確には「破産手続き時に破産管財人(債務者の財産や債権の調査の為に裁判所が選任する弁護士)が財産を換価処分して債権者に分配する」という意味です。

つまり自己破産時の「差し押さえ」とは、「財産の処分」のことを指しています。

すべての財産がなくなるものではない

また、自己破産時の差し押さえでは破産者が保有している全ての財産が処分されるというわけではありません。

自己破産をすると何が差し押さえられるのか?

ではどのような財産だと差し押さえられ、どのような財産だと差し押さえが免れるのか解説していきます。

差し押さえの対象となるもの

まずは、差し押さえの対象となるものについて解説していきます。

差し押さえの対象となるものは原則、「破産者が手続き開始時点で保有している価値の高い財産」です。
具体的に言うと、裁判所によって基準は異なるものの、一般的に自動車や家、土地等の「20万円以上の財産」等が差し押さえの対象になります。

差し押さえの対象にならないもの

逆に差し押さえの対象にならないものは何なのでしょうか。

それは「自由財産」と、裁判所から「自由財産の拡張」を認められたもの、そして「破産管財人が破産財団から放棄した財産」です。
一つずつ詳しく解説していきます。

 

まず、自由財産とは以下のことです。

・99万円以下の現金(預貯金は含まない)
99万円以下の現金は差し押さえ対象外となり、手元に残せます。
ただしこの現金には預貯金は含まれていませんのでご注意ください。

・新得財産…破産手続き開始決定後に取得した財産のこと
新得財産とは破産手続き開始決定後に得た財産のことで、例えば破産開始手続き後に受け取る給料やボーナス等がそれにあたります。
こちらは原則手元に残せることになっています。

・差し押さえ禁止財産…民事執行法により処分が禁止されている財産のこと
差し押さえ禁止財産についてですが、こちらは民事執行法等により処分が禁止されている財産のことで以下の二種類がそれに含まれます。

・差し押さえ禁止動産
民事執行法第131条に示された「処分出来ない物品」を指します。主に寝具や家具等生活に必要な家財道具が該当します。
・差し押さえ禁止債権
手取り給与の四分の三、または33万円を超えない金額、国民年金や生活保護給付金などのことです。

以上が「自由財産」についてです。

 

次に、裁判所から「自由財産の拡張」を認められたものについて解説していきます。

「自由財産の拡張」とは、上記で記した自由財産だけでは自己破産後の生活が困難な場合に、破産者の申し立て、又は裁判所の職権で自由財産として破産者の手元に残すことが必要であると認められた時に行われるものです。

裁判所によって拡張が認められる基準は異なってきますが、主に次にあげる財産について、評価額が20万円以下のものであれば原則拡張を認められるケースが多いです。

・預貯金、積立金
・自動車
・電話加入権
・退職金債権の八分の一相当額
・生活に欠かす事が出来ない家財道具以外の家財道具

基本的に財産総額が99万円の範囲内であれば拡張が認められるケースが多いと考えられます。

 

最後に「破産管財人が破産財団から放棄した財産」について解説していきます。

破産手続きでは、破産管財人が財産の換価処分を行います。しかし、財産の中には換価処分が難しい財産が存在します。
例えば立地が非常に悪く誰も買ってくれそうにない不動産や、一部の人にしか売れなさそうなものなどですね。

こういった、売却等による換価や処分が出来ない場合、あるいは出来たとしてもかかるコストがリターンを上回るものが「破産管財人が破産財団から放棄した財産」に当たります。

また、放棄は破産管財人が裁判所の許可を得た場合に起こる事ですので、拡張の時のように破産者の申し立てによって放棄が行われるといったことはありませんので、ご注意ください。

 

以上の、「自由財産」、裁判所から「自由財産の拡張」を認められたもの、「破産管財人が破産財団から放棄した財産」が差し押さえの対象に当たらないものになります。

車やバイクは自己破産をしても差し押さえにならない場合もある

自己破産時に車やバイクは必ずしも差し押さえ対象になるわけではありません。その点について解説していきます。

ローンが残っている車やバイクの場合

車やバイクなどは自由財産に該当しない為、原則として自己破産した場合は処分しなければなりません。
そして自己破産時にまだローンが残っている場合は、ローンの支払いを担保する為、保有している車やバイクに所有権留保を設定します。

所有権留保とは、売買契約において売買代金の完済前に売主が買主に目的物を引き渡すものの、その所有権は代金完済まで売主に留保し、この留保所有権によって代金の担保とする担保形態のことです。

つまりローンが残っている場合、車やバイクは破産管財団に渡るのではなく、所有権のみ破産者本人に残し、車やバイクはローン会社に渡るという事です。
従って仮に破産時にローンが残っていたとしても車やバイクはいずれにしても失うと考えていたほうが良いでしょう。

ただし、ローンが残っている車やバイクを残す方法が一つだけ方法があります。

それは本人ではなく、保証人や親族など、第三者がローンの残債を一括返済する方法です。
自己破産をしているにも関わらず一部の債務者だけに返済を行うのは「偏波弁済」として認められていませんが、本人ではなく第三者による返済であれば破産法上問題なく、車やバイクを残す事が出来る可能性があります。

ローンが終わっていても時価が低い車やバイクの場合

次にローンが終わっている場合について解説していきます。

既に述べたとおり自己破産をした場合、原則車やバイクは処分しなければなりません。
しかし車やバイクの時価が20万円以下であれば自由財産の拡張が認められ、処分対象にならない可能性があります。
これは「20万円基準」と言われているもので、処分見込み額が20万円以下の車やバイクは自由財産として取り扱われ、処分を免れる事が出来ます。

処分見込み額に関しては、あらかじめ複数社に査定してもらうことをおすすめします。

時価が20万以上でも認められる場合もある

また、時価が20万円以上であっても裁判所に自由財産の拡張を申し立て、それが裁判所によって認められれば自由財産扱いになり、処分しなくてもよいことになります。
裁判所によって基準は異なりますが以下の条件を満たしている場合、処分を免れる可能性があります。

・車やバイクの初年度登録から4~6年以上経過している
初年度登録から4~6年経過している場合、価格をつける事が出来ないとみなされ、処分を免れる可能性があります。

・車の名義が破産者本人以外の場合
車やバイクの名義が親や兄弟等破産者本人以外の場合、第三者の財産は処分の対象にならない為、残す事が出来ます。

・車やバイクが生活上必要不可欠である事情を「自由財産拡張基準」や「換価基準」を満たしたうえで説明する

以上の条件を満たしていれば、たとえ時価20万円以上だとしても車やバイクを手元に残せる可能性があるので、是非参考にしてください。

スマホやパソコンは自己破産をすると差し押さえになる場合もある?

自己破産をする場合、スマホやパソコンを手元に残せるのかどうか心配する人は決して少なくありません。

高額なパソコンを複数台持っている場合

パソコンは自由財産に該当する為、自己破産をしたとしても問題なく手元に残しておく事が出来ます。基本的にパソコンは生活必需品のため、差し押さえ禁止動産に当たります。従って処分から免れると考えて頂いて大丈夫です。

ただし、時価が20万円を大きく超える場合は差し押さえの対象となる可能性がある為、ご注意ください。
また複数台保持している場合、時価が高いほうが差し押さえられるという事も抑えておいたほうがいいでしょう。

スマホを分割払いで購入している場合

スマホはどうなるの?と気になった方もいらっしゃるかもしれません。

自己破産時にスマホの分割払いが残っている場合、残債は「破産債権」となり支払い義務がなくなります。従って携帯電話会社によって強制解約される可能性があります。
また、それを避ける為に先にスマホの残債を完済してしまうと、「偏波弁済」の可能性が出てくる為、ご注意ください。

持ち家が家族名義だった場合も差し押さえ対象になる?

自己破産時、原則持ち家も差し押さえ対象となると紹介されているけど、家が家族名義だった場合も差し押さえ対象になるの?と気になった方もおられると思います。

差し押さえは自己所有の財産のみ

持ち家が家族名義だった場合は、差し押さえ対象になることはありません。
自己破産時に差し押さえ対象となる財産は自己所有、つまり本人名義の財産のみの為、家族名義の財産まで差し押さえの対象になることはありませんのでご安心ください。

子供名義の貯金は対象

差し押さえ対象は本人名義の財産のみと解説しましたが、子供名義の貯金は差し押さえの対象になる可能性があります。
子供名義の貯金に関して、差し押さえ対象になるかならないかの判断基準は「実質的所有者」が破産者であるか否かです。

つまり差し押さえ対象にならないのはあくまでも「子供の貯金」であって、「子供名義の貯金」ではないという事です。

例えば、子供が親からもらったお小遣いやお年玉を貯めていたとすれば、それは「子供のお金」とみなされ、差し押さえ対象から免れるでしょうし、逆に破産者が子供の将来の為に貯金していたお金だとすれば、実質的所有者は破産者だとみなされ、差し押さえ対象になる可能性があります。

給料や賞与(ボーナス)も差し押さえられるのか?

給料や賞与が差し押さえ対象になるかどうかはタイミングによって異なってきます。

手続き前に受け取った給与や賞与(ボーナス)

自己破産手続き前に受け取った給与や賞与は現金または預貯金として判断され、換価処分対象となります。

手続きの時点で受け取る予定だが受け取れていない給与や賞与(ボーナス)

では手続き時点で受け取る予定だがまだ受け取れていない給与や賞与はどうなるのでしょうか。この場合、手続き時点で受け取ることが決まっているため、差し押さえ対象となります。そのため、給与の4分の1は換価処分対象となります。

例えば月給制だとして、10月25日に次の給料である20万円が入ってくると決まっている状況だとします。その状況の中10月20日に破産手続きが開始した場合、10月25日に20万円の給料をもらえる債権があるという事になりますので、その内の4分の1である5万円が換価処分対象になるという事です。

手続き後に発生する給与や賞与(ボーナス)

手続き後に発生する給与やボーナスはどうなるのかというと、差し押さえ対象にならず問題なく自由財産とみなされます。
上記の例の場合、10月以降の11月25日分の給料などは差し押さえ対象にならないという事です。

給料天引きで支払っている保険や年金は?

自己破産をしたとしても、基本的に保険料等の支払いは免除されません。
もし一時的に支払いが難しい場合は税務署で分割払いを認めてもらうよう交渉してみることをおすすめします。

また年金に関しては、個人年金のみ「個人の財産」という扱いになり、自己破産によって差し押さえ対象となり受け取れなくなります。年金は大きく分けて国民年金や厚生年金等の「公的年金」と企業年金や個人年金等の「私的年金」に分けられます。

「公的年金」に関しては「差し押さえ禁止財産」に当たる為、自己破産しても変わらず受取る事が出来ます。そのため、自己破産時に差し押さえ対象となるのは「私的年金」の中の個人年金のみという事になります。

これは、現在年金を受け取っている方も、これから年金を受け取る方も同じ対応となります。

所有財産リストは自己申告

自己破産時に破産管財人に提出する所有財産リストは自己申告制となっております。

誠実に正直に申告すること

最大の注意点は「必ず正直に申告をすること」です。「自己申告ってことは申告しなければばれないってこと?」と思った方もいるかもしれません。
結論から言うと、もし隠したとしても調査が入る為、必ずばれます。

所有財産リスト提出後、破産管財人によりそのリストの精査から聴取、郵送物の調査に現地調査とありとあらゆる手段によって調べられますので、必ず正直に申告してください。

財産隠しをすると家にまで来ることがある

財産隠しが疑われる場合、破産管財人が家に来ることがあります。

弁護士を立てている場合は基本的に弁護士が債務者と密に連絡を取り、財産を全て把握していると信頼している前提ですが、財務者の言動が怪しかったり提出された資料や書類につじつまが合わない点があったりした場合、破産管財人が債務者の自宅を訪問して調査をすることがあります。

また、財産隠しをしていなくてもリストに高額な物品があった場合は、正確な査定をするために自宅を訪問する場合もあります。

免責不許可になると借金が免除されない

財産隠しは悪質な免責不許可事由に当たります。
そのため、財産隠しが発覚した場合、免責が取り消され借金が免除されないことになり、最悪の場合は犯罪となることもあります。

まとめ

最後に、自己破産についてよくある「周囲に知られる」や「戸籍や住民票に乗る」等の誤解について解説していきます。

まず周囲に知られると誤解されている方がいらっしゃいますが、知られずに破産手続きを行っている方はたくさんおられます。また、自己破産をしたことは住民票や戸籍などの公的書類には一切書かれませんので、この点もご安心ください。

自己破産という言葉そのものに負のイメージを抱いている方がいらっしゃいますが、元々自己破産とは国によって多大な債務で借金が返済できなくなった方を救う為に設けられた制度です。
つまり返済できない借金などを一度リセットし、もう一度新たな人生をスタートさせる為の前向きな制度です。

イメージだけで決めつけることなく、自己破産という制度を有効的に活用してください。

さいごに

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弁護士法人ひばり法律事務所

 

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