自己破産できる条件とできないケースや対処法を徹底解説!

自己破産ができない人はこんな人

自己破産とは、借金や未払い料金の滞納で困っているときの最終手段で、ほとんどの借金を帳消しにすることができます。
人生の再スタートを行う時のために知っておきたい制度ではありますが、実は自己破産できない人もいます。

支払い能力があると判断された場合

借金を抱えていても返済する能力があると判断された場合は、自己破産を受けることができません。
また、借金の金額が少ない場合(主に100万円以下)でも自己破産が認められにくくなります。

免責不許可事由に該当する

自己破産の申請において、裁判所の方であらかじめ決められている【許可することができない事例】のことです。
これに当てはまると、債務者本人が借金を返済すべきものだと判断されてしまうので、自己破産を受けることができなくなります。

自己破産にかかる費用が支払えない

自己破産は無料で行うことはできません。裁判所に納める費用と弁護士費用が必要になります。破産者の財産によって裁判所への費用は変わってきますが、およそ1万円〜10万円ほどとかなり幅があります。
そこに弁護士費用なども相場で20万円ほど加算されることになりますが、こちらに関しては救済措置が用意されています。

職業制限に対応することができない

破産法上、たとえ自己破産が認められたとしても自己破産の手続き期間中、もしくは自己破産後に特定の職業の資格を失い働くことができなくなります。よって、この条件を受け入れることができない場合、自己破産を受けることができません。

自己破産の免責を過去7年以内に受けている

前回の自己破産を受けてから、まだ7年経過していない場合には自己破産を受けることができません。
また、給与所得者等再生やハードシップ免責の適用について行っている場合も、7年経過している必要があります。

債務の支払いが可能な人

債務の金額が100万円以下だと、客観的に考えて返済が可能であると見なされるため、自己破産はほとんどの場合認められません。しかし、生活保護受給者などやむを得ない状況であれば100万円以下でも認められます。

たとえ多くの借金があったとしても、十分な収入がある、もしくは貯金や財産がある場合などは自己破産が認められません。
借金の額が年収の1.5倍から2倍以上である、もしくは3年〜5年をかけても借金を完済する見込みがない場合には、「支払い能力がない」と見なされる可能性が高くなります。

そのため、無職の人や高齢の方は、自己破産の申請が通る可能性は高いといえます。

免責不許可事由に該当する人

免責不許可事由とは、自己破産による免責が認められないケース(事情)のことです。
これは裁判所がその人の借金額や収入の状況、借り入れを行った理由などから判断しますが、以下のようなものが該当します。

・借金の理由がギャンブルや買い物などの浪費である
→パチンコや競馬などのギャンブル、ブランド品の購入、キャバクラ、ホストクラブでの豪遊、先物取引やFX取引、株式など投機的な取引を含む、破産者の職業や収入と釣り合わない浪費をして重なった借金である場合のことです。
但し、パチンコや競馬で常に勝ち越しているなどの理由から、借金が重なった理由に当たらないとなれば該当しないことになります。

・返済の見込みがないのに嘘をついて借金をした
→借金を完済することができないとわかっていながら、氏名や借金額、信用状態など嘘をついてさらにお金を借りる行為をした場合のことです。

・財産を壊す、隠すなどして価値を意図的に減らした
→自己破産では20万円以上の財産を保有している場合に、没収され債務者へと分けられます。その財産の没収を避けようとして、わざと壊したり誰かに安く販売する、もしくは無償で渡すなどの行為をすることがこれに当たります。
債権者に被害を与える目的で、自己破産の手続きをする直前やあるいは手続き期間中に、本来であれば債務者に配当される財産について隠し持っていたり、無くさせるといった行為です。

・クレジットカードで購入したものを直ぐに現金へ換金した
→自己破産には費用が掛かります。その費用を集めるためにクレジットカードで購入したものを、直ぐに現金化しようとする行為がこれにあたります。

・闇金業者から借金をした
→自己破産をするという前提で、「どうせ借金じゃなくなる」というような意図で、故意に闇金業者から借金をすることです。具体的には、自己破産をした日の前1年分はこのような疑いを持たれます。

・複数の人へ借金をしているのに、特定の債権者にだけひいきをするような返済をしている
→既に借金の返済ができないような状態であるのに、特定の債権者(例えば家族や親戚など)にだけ返済を行うことを「偏頗弁済」(へんぱべんさい)といいます。そのような、えこひいき行為をすることがこれにあたります。

・財産帳簿などを改ざんしている
→業務上の帳簿や財産に関する書類の偽造や改ざん、隠蔽行為を働いている場合がこれにあたります。

・自己破産提出書類に嘘を書いた
→自己破産の手続きの中で、裁判所に提出する書類「債権者名簿」に実在していない人物名を記入するなど嘘の情報を書いたり、あるいは、載せるべき債権者の情報の記入をしていない場合です。
こちらのよくあるケースとして、親や友人といった自己破産の手続き以外で借金を返済したい人の名前をわざと「債権者名簿」に載せずに、その人からの借金が帳消しになるのを防ごうとするというものがあります。

・自己破産の手続き中に裁判所の指示に従わない、または嘘をついた
→裁判所書記官や破産管財人が行う調査に協力的でなかったり、自分に有利に働くように裁判所へ嘘の供述を述べたりする行為がこれにあたります。

・過去7年以内に自己破産を受けている
→自己破産は1度だけではなく何度でも行うことが可能です。しかし、過去7年以内に自己破産をしている場合は認められません。
こちらは、直近の7年間で法律による強い効力で守られていたにも関わらず、再び破産してしまった場合に、戒めの意味合いを込めてルールとして設けられております。
但し、これらに当てはまったからといって、絶対に自己破産ができないわけではありません。裁判官に本人の反省が伝わり、免責を認められる場合もあります。破産法では免責がなるべく許される道を広げて、債務者が可能な限り再出発できるよう考慮して作られています。

・自己破産の予納金が支払えない人
→自己破産の予納金とは、自己破産を行う上で裁判所にあらかじめ支払う費用のことです。
裁判所に納める金額は通常2万円〜4万円程度となります。これは条件によって加算される場合があり、管財事件の場合+20万円程度(処分する財産がある場合、免責不許可事由がある場合など)になります。
また法律の知識がない場合、自力で自己破産の手続きを行うのは難しいため弁護士に依頼することが必要となります。弁護士費用の相場としては40万円程度となります。
しかし、相談だけなら無料ですることもできるので安心してください。

・過去7年以内に自己破産や個人再生している人
→自己破産は1度のみならず何度でも行うことができますが、破産法では1度目の免責許可から7年経過していなければいけません。
借金の金額も1度目のときとは違いゼロにはなりません。しかし、やむを得ない事由があると認められた場合には7年経過していなくても、自己破産することができます。これには厳しい基準が設けられていることが多いです。

・保証人がいる人
→保証人がいる場合も自己破産ができます。しかしこの場合、保証人に請求が行くことになり迷惑をかけてしまいます。
学生の奨学金などが代表的なもので、親が肩代わりするようになっています。

・自己破産できない職業の人
→弁護士、司法書士、公認会計士、税理士、行政書士など、破産をすることが仕事の欠格事由になる職業の人は自己破産をすることができません。
さらに警備員、生命保険募集人、宅建士、証券会社の外務員なども自己破産によって制限される職業になります。
一般企業に勤めている人はこのような制限はありません。

自己破産ができない場合の対処法

自己破産ができない場合は、個人再生か任意整理で対処していくこととなります。例えば、職業が保険関係や不動産関係の方は、個人再生を選択することが多いです。
一方、保証人がいることで自己破産をすることができない場合には、任意整理での対処を検討していくことが多いです。
どちらもそれぞれ特徴がありますので確認しておきましょう。

即時抗告をして解決する

裁判所から免責不許可の決定を受け、その日から1週間以内もしくは、不許可の決定が官報に公告された次の日から2週間であれば、即時抗告をすることができます。

即時抗告とは、裁判所の決定に不服がある場合に上級の裁判所に再審理し、決定内容を変更するように異議申立てをすることです。自己破産の場合地方裁判所で行いますので、一つ上の高等裁判所に即時抗告を行うことになります。
ただし、免責不許可の決定が即時抗告で覆ることは殆どなく、個人で行うことも難しいため弁護士に依頼する必要があります。
あくまでも、一つの手段として考えておくようにしてください。

個人再生で解決する

個人再生とは、債務負担を大幅に軽減させ原則3年で返済する計画を立てる手続きです。
自己破産と同様に裁判所を通して行いますが、ギャンブルなどでも認められる可能性があり、制限がありません。この制度を利用することで、債務負担を5分の1〜10分の1程度に減少できます。また、マイホームなどの資産を残すこともできます。
ただし、個人再生では手続き完了後も返済をしていかなければならないので、一定の収入があることが条件となります。

任意整理で解決する

任意整理とは、弁護士が相談者の代理人となり裁判所を通さないで債権者と交渉し、合意を得ることができれば利息をカットすることができます。国の記録に残ることもありません。継続的に安定した収入の可能性があるのなら、利用することができます。財産の没収もなく、ギャンブルによる借金でも任意整理は可能です。
ただし、あくまでも利息のカットだけなので元本は減額になりません。
中長期的な返済計画をしっかり立てたうえで、完済を目指すのであれば有効です。

法テラスを利用して解決する

法テラスは国が運営している機関で、経済的に余裕がない人への法的支援を行っています。

自己破産の申立ての際に、予納金(弁護士費用など)を一括で支払えない場合は、法テラスを利用して一時的に予納金を立て替えてもらうこともできます(生活保護受給者に限る)。
この制度を利用すると、利用者の代わりに法テラスが弁護士に予納金や裁判費用を支払うことになるので、利用者は後から分割で法テラスへ返済していくことになります。

制度利用にあたっては、生活保護受給証明書などを提出し審査を通過しなければなりません。
法テラスに立て替えてもらった費用は、立て替え契約の2ヵ月後から毎月1万円もしくは、5千円ずつ返済していくことになります。経済状況により返済の猶予を受けることも可能となります。

生活保護受給者であれば、自己破産の手続きが終了した時点で、立て替え返済の免除を受けることができます。

予納金の分割支払いで解決する

東京地方裁判所では少額管財になったとき、一括で予納金を支払うことができない場合に、20万円を最大4回まで分割で払うことを許可しています。
しかし、予納金を4回など分割にした場合、すべて支払いが完了するまで自己破産の手続きはストップしてしまいます。また、予納金が準備できるまで手続きを保留にしてくれる裁判所もあります。この場合は、裁判所へ支払いを行うのではなく、自分で積み立てを行い全額準備ができ次第納付する流れとなります。
このような積み立て管理に自信がない方は弁護士にお金を預けるケースが多いです。

弁護士に相談して解決する

自己破産の手続きをすべて個人で行おうとすることは現実的ではありません。
財政調査などの作業をこなし、裁判所が定めている書式に合わせた正確な記述をしなければならず、大量の書類を揃えて裁判所へ向かう必要があるため、かなりの時間と体力を使うことになります。実際に、自己破産をする90%以上の人は、弁護士に依頼をして準備を進めてもらいます。
加えて、弁護士に自己破産の手続きを依頼することによって、債務者に「受任通知」という通知を提出してもらえます。こちらは自己破産の手続きを開始するという知らせになるため、請求や取り立てが止まり、借金を返済しなくてよくなります。

自己破産の手続きは半年〜1年ほど時間が掛かるので、借金の返済を早い段階で免れることができるのは、精神的にかなり軽減されることになります。
また、弁護士に依頼をして予納金を積み立ててもらえたり、弁護士費用を分割対応している事務所も多いです。

自己破産をしない方がいいパターンとは?

自己破産は必ずしも最善の方法ではなく、しない方が良い場合もあります。
自己破産を行うと20万以上の価値のある財産(車や家など)に加え、99万円を超える現金の強制的な没収がされることになります。また、信用情報機関に事故情報として登録されてしまうため、ブラックリストに載ってしまいます。
自己破産のメリットだけではなく、デメリットを事前に把握しておくことも非常に大切なことなので、詳しく見ていきましょう。

ローン支払い中の自宅を残した場合

自宅を残した場合、自己破産を行うことができないため対象の家に住んでいても退去しなければなりません。ローンの支払いはなくなりますが、同時に住む家も失ってしまいます。

ただし、持ち家を競売にかけて買取人が現れ、引き渡しを行うまでに、期間としては約半年〜1年は必要となります。その期間中は住むことが許されます。また、持ち家が処分されてしまえば次の住居をさがさなければなりません。しかし、自己破産をした後には財産が手元に残っていないため、ほとんどの場合が賃貸契約を結ぶことになります。

自己破産をしていても賃貸契約を結ぶことは可能であり、「自己破産をした」などの申告も必要がないので入居審査も無事に通過することはできます。
ただし、賃貸契約の家賃保証会社には信用情報機関の事故情報を見られてしまう可能性もあり、契約を交わすことが難しくなるかもしれません。

非免責債権が多すぎる場合

自己破産を行うことで返済が免除されるのは、借金などの債務に限られます。そのため税金や下水道料金の支払いなどは非免責債権に当たるため支払いを続けなければなりません。
このような非免責債権が多すぎる人は、自己破産をするかよく検討する必要があります。

資格や職業に影響を与えたくない場合

自己破産の手続期間や自己破産後は、特定の職業や資格を一定期間喪失することになります。
その場合、経済的な生活も困難になってしまうので、自己破産ではなく任意整理や個人再生などの他の債務整理方法を検討してみてください。

保証人に影響を与えたくない場合

自己破産をしたときに保証人にまったく迷惑をかけないということはできません。保証人に迷惑をかけたくないときには、自己破産以外の方法を視野に入れ検討する必要があります。
任意整理は、整理する債務を選ぶことができます。保証人付きの債務を任意整理の対象から外せば、保証人に迷惑をかけることはありません。

自己破産手続きを行うとできなくなること

自己破産には多くのメリットがありますが、新たな借り入れができなくなる、連帯保証人になることが難しくなるなどのデメリットもあります。
これらについても事前に確認しておきましょう。

郵便物が受け取れない

自己破産手続き中は、郵便物が破産管財人(破産手続きにおいて破産財産に属する財産の管理及び処分をする権利を有するもの)に転送されて確認されます。
破産手続きを正しく終了するためには、債権者、債権額、破産者の財産などを正確に把握する必要があります。
ただし、これは管財事件に限った話であり、後日破産管財人から返却されます。

引っ越しや旅行ができない

裁判所の許可を取れば、自己破産の手続き中もしくは、前後でも旅行に行くことは可能です。また、現在の法律では無許可で旅行に行っても罰則はありません。
ただし、自己破産をしても免責が認められなくなる可能性はあります。

引っ越しすることも可能ですが、管轄の裁判所が変わる可能性もあります。そうなると、申立て書類や破産手続き運用も変更になります。
旅行に行けるような状態でないために自己破産をしているので、先ずは生活の為にお金を使い、自己破産手続きが終わり次第、新しく稼いだお金で旅行に行く計画を立てることが賢明です。

制限がかかる資格や職業の人は仕事に就けない

証券会社外務員、宅地建物取引業者、不動産鑑定士、生命保険募集人、有価証券投資顧問業者、風俗営業、弁護士、税理士、公認会計士、旅行業者、建設業者、土地家屋調査士、商品取引所会員、警備業者などの職業は、自己破産の手続きが進行している間は働くことができません。
職業の制限を受けるのは、自己破産の手続き中の3〜4ヵ月間のみで、正式な手続きを行い復権することができれば再度働くことができます。

新規の借り入れができない

自己破産を行うとJICCやCICなどの信用情報機関の事故情報に登録されてしまいます。そのため、金融機関から融資を受けることができなくなり、約10年間は家や車のローンを組むことができなくなります。
しかしこれは、一時的なもので永久ではありません。

新規のクレジットカードが作れない

自己破産をするとクレジットカード会社に連絡が行き渡るため、ブラックリストに載ることになり、クレジットカードの新規発行ができなくなります。
しかし、自己破産の手続きが完了し5年〜10年経過すれば、再びクレジットカードを発行することができるようになります。

まとめ

今回は、「自己破産ができる条件とできないケース」についてまとめました。自己破産をすることにはリスクも伴いますので、手続きを行うかどうかの判断は慎重に決める必要があります。
ですが、自己破産のメリットとしては借金がほぼゼロになること、すべての財産が無くなるわけではなく生活費として99万円までのお金は手元に残しておくことも可能です。

自己破産というのはその人がもう一度復帰をするための手段です。
借金返済だけで人生を終えるのか、また一からやり直すのか、どちらにするのか決めて行動していくかは本人次第です。

新しい人生のチャレンジと捉えてみるのも悪くないのかもしれません。

さいごに

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