法テラスを使って自己破産手続きをおこなう際、費用はどれくらいかかる?

借金返済に苦しんでいる方で自己破産を検討されている場合、手続きの手段として法テラスを活用するという選択肢があります。
今回の記事は、法テラスを利用する際に費用はどれくらいかかるのか、まとめました。

「法テラス」とは?

そもそも「法テラス」とは、どのような組織で、何をしているところなのでしょうか。

法テラスは国によって設立された、法的なトラブルを解決するための総合案内所

法テラスは、法的トラブルの解決を目的とする、国が設立した総合案内所です。本部は東京にあり、全国に110か所の支部があります。名前の由来は、自分ではなかなか解決の糸口が掴めない案件に対し、法律によって解決の道を作り、未来を明るく照らす(テラス)場所という意味でつけられています。また、法テラスの正式名称は「日本司法支援センター」です。

法テラスを利用して自己破産の手続きが可能

自己破産をお考えの場合、弁護士を通して手続きを行なうことになりますが、法テラスを利用することも可能です。法テラスを利用すると費用が安く済むというメリットがあります。
以下では、費用を払ってでも自己破産した方がいいのはなぜか、そして法テラスを利用しない場合の手続きにかかる費用を紹介します。法テラスを利用した場合の費用や手続き方法も後述にて紹介しますので、比較していただければと思います。

1. 費用を払ってまで自己破産した方がいいのはなぜか?

【借金の支払いが全額免除される】
自己破産が決定すると、今まで支払いに悩んでいた借金の全額が免除されます。裁判所から借金の支払い能力が無いと認定され、債務者としての支払い義務が無くなります。一方、任意整理や個人再生の場合だと、利息や元金の一部が免除されるだけです。

【家族が借金を肩代わりすることもない】
債務者本人に代わって家族が借金を払うという必要はありません。(家族が保証人や連帯保証人になっている場合を除く)
自己破産したら家族が肩代わりしなければならないといった声も聞きますが、それは誤解です。

【金融機関からの取り立てがなくなる】
今まで悩まされていた金融機関からの取り立てからも解放されます。返済のために資金繰りをする労力や、資金のねん出方法を考える時間、そしてそれに伴うストレスが一気に無くなります。
ちなみに、自己破産が決定した後だけでなく、自己破産の手続きをすることが金融機関に通知された時点から取り立てはできなくなるので、自己破産を考えたら早めに手続きをしてみましょう。

【資産の一部は手元に残しておける】
自己破産をすると資産はすべて没収され、財布の中身も預金もすべてスッカラカンにされるというイメージがありますが、それは誤解です。何もかも失ってしまったら新たな生活をスタートしようとしてもお先真っ暗ということになります。残せる財産は、99万円以下の現金、20万円未満の財産、生活に欠かせない家電や家具などになります。

【仕事を続けることができる】
自己破産をすると会社をクビにされるかもという不安を抱く方がいますが、それも誤解です。労働基準法では、自己破産を解雇事由にしてはならないことになっています。そもそも会社に迷惑をかけていないのにクビになるのはおかしな話です。

2. 自己破産をするデメリットは?
自己破産は、本来返済しなければならない借金をすべて免除されるというメリットだけでなく、デメリットもあります。
ただ、新たにすっきりした生活をスタートさせたいならば、以下のようなデメリットは受け入れなければならないでしょう。

【資産を失う】
上記でも紹介しましたが、手元に残せる資産は、99万円以下の現金、20万円未満の財産、そのほか生活に不可欠な家電や家具のみです。それ以上の資産、たとえば自宅や自家用車、100万円を超える部分の現金は失ってしまいます。心理的にも物理的にも経済的にも余裕のある生活はできなくなります。

【信用情報に関する記録が残る】
金融機関同士で共有される個人信用情報機関に記録が残ります。俗にいうブラックリストというものです。自己破産して5~10年間は、クレジットカードが作れなくなったり、住宅ローンや自動車ローンなどが組めなくなったりします。

3. 自己破産の手続きにはいくらかかる?
自己破産を行なうには裁判所への手続きが必要で、手続きをするには費用が必要となってきます。費用は最低でも約30万円はかかります。費用は裁判所への費用と、手続きを代行してもらう弁護士への費用となります。

【裁判所への費用】
裁判所への申し立てにかかる収入印紙代が1,500円、債権者への郵送にかかる切手代(債権者数によって異なります)、そして自己破産のためにかかる費用として、管財事件か否かにより予納金が約1~50万円かかります。

【弁護士への費用】
弁護士への報酬は、各弁護士事務所により支払う金額は異なりますが、約30~50万円が相場となっています。

法テラスを利用するための条件

法テラスは税金が使われている制度であるため、無料相談を行なうには一定の条件が決まっています。どのような条件なのかをみていきましょう。

1.収入や資産などが一定額以下である

【収入基準】と【資産基準】を満たすことが要件となります。

【収入基準】申込者とその配偶者の手取り月収額(賞与含む)

人数手取り収入額の基準家賃又は住宅ローンを負担している場合に加算できる限度額
1人182,000円以下
(200,200円以下)
41,000円以下
(53,000円以下)
2人251,000円以下
(276,100円以下)
53,000円以下
(68,000円以下)
3人272,000円以下
(299,200円以下)
66,000円以下
(85,000円以下)
4人299,000円以下
(328,900円以下)
71,000円以下
(92,000円以下)

※手取り収入額の基準…()内は、東京、大阪など生活保護一級地の場合の金額。5人以上の場合、増えるごとに4人の金額に30,000円(33,000円)が加算されます。
※家賃又は住宅ローンを負担している場合に加算できる限度額…()内は、居住地が東京都特別区の金額。申込者等が家賃又は住宅ローンを負担している場合、基準表の額を限度として、負担額を基準に加算できます。

【資産基準】申込者とその配偶者が不動産(自宅・係争物件をのぞく)や有価証券を所有する場合は、その時価と現金、預貯金の合計額(無料法律相談の場合は、現金・預貯金の合計額のみで判断)

家族人数資産合計額の基準
1人180万円以下
2人250万円以下
3人270万円以下
4人以上300万円以下

※将来、負担すべき医療費・教育費などの出費がある場合、相当額が控除されます(無料法律相談の場合、3ヵ月以内に出費予定があることが条件)
※収入基準、資産基準とも離婚事件などで配偶者が相手方の場合は、資産を合算しません。

2.民事法律扶助の趣旨に適している

報復的感情を満たす目的や宣伝のため、または権利濫用的な訴訟などの場合は援助が行なわれません。

弁護士・司法書士費用等の立替制度(民事法律扶助制度)を利用するための条件

費用を立て替えてもらうためには新たな条件が加わります。立て替えてもらった費用は、後に分割で返済していきます。

上記で述べた1、2に加えて、「3.勝訴する可能性が一定程度あること」

弁護士・司法書士費用等の立て替え制度を利用するには、上記「法テラスを利用する条件」である「収入や資産が一定額以下である」ことと、「民事法律扶助の趣旨に適している」ことに加え、勝訴する可能性が一定程度あること、が新たに条件として加わります。訴訟となり、100%勝てるとまでは言い難いが、大きく負ける可能性もないといったラインといえます。

国内に住所がない人、法人や組合など団体は対象者にならない

日本国において住所がない人は費用の立て替え制度を利用できません。法人や組合などの団体も同様です。あと外国人も日本国に住所があれば利用できますが、適法な在留資格が無い場合は利用不可となっています。

法テラスを利用した際の自己破産の費用の目安

法テラスを利用して自己破産の手続きを行なうと、費用はいくらくらいかかるのでしょうか?法テラスを利用した方がいいのか否か、費用面からみてみましょう。

法テラスを利用した際の自己破産にかかる費用は約15万5000円~

上記で、一般的な自己破産の手続きにかかる費用は最低でも30万円かかると述べました。それに対し、法テラスを利用して自己破産の手続きを行なった場合は最低でも約15万5,000円で済みます。債権者数により異なりますが、債権者数が多くても30万円を超えるケースは稀でしょう。

債権者(借金をしている会社)の数によって金額は変わる

【実費と着手金】

債権者数実費着手金
1~10社23,000円132,000円
11~20社23,000円154,000円
21社以上23,000円187,000円

※過払い金が発生している場合は、別途報酬金が発生しますが、原則は発生しません。さらに印紙代・交通費・鑑定費用等が別途かかる場合があります。
※管財事件(自己破産の手続きを申し立てた人がある程度財産がある場合にその財産を換金し債権者に配当するような破産手続き)となった場合は、管財予納金(破産管財人=裁判所から選任された弁護士、の費用)を裁判所に納めなければなりません。法テラスでは、生活保護を受給している方へは20万円を上限として管財予納金を立て替えられますが、それ以外の方へは、上記の実費と着手金は立て替えられますが、管財予納金は立て替えられません。

法テラスを利用した際の自己破産手続きの流れ

法テラスを利用して自己破産の手続きを行なう場合の流れはどのようなことをすればいいのかみていきましょう。

近くの法テラスに連絡をする

まず、法テラスへ連絡して、相談のアポイントを取りましょう。最寄りの法テラスへ連絡するか、わからなければ、法テラスサポートダイヤル0570-078-374(平日9~21時 土9~17時)へ連絡を行なうこともできます。
最寄りの法テラスを探す方は、こちらの法テラス事務所所在地・連絡先でご確認ください。https://www.houterasu.or.jp/houterasu_gaiyou/shozaichi_renraku/index.html

なお、ご自身で法テラスと契約している法律事務所を探して連絡することでも法テラスを利用できます。法律事務所のホームページを見て法テラスと契約しているかどうか確認後、連絡をしてみてはいかがでしょうか。

無料相談をおこなう

法テラスと契約している弁護士とは上記「法テラスを利用するための条件」に該当すれば、無料相談を行なうことができます。迷っている方は自己破産をすべきか否か、決心がついている方は自己破産の手続き方法などを相談してみましょう。

費用の立替制度を利用する場合、審査がおこなわれる

法テラスでは自己破産の手続きを行なう場合にかかる弁護士・司法書士費用を、条件を満たせば立て替えてもらえます。そのためにさまざまな書類を提出して審査してもらう必要があります。
この審査期間分、法テラスを利用しない場合より自己破産を行なう時期が遅くはなります。提出する書類をみてみましょう。

  • 資金力を証明する書類…法テラスはあくまでも費用を「立て替え」するだけなので、返済能力があるかどうかを審査されます。直近2ヵ月の給与明細や直近の課税証明、資力申告書や生活保護受給者の場合は、生活保護受給証明書などが必要となります。
  • 世帯全員の住民票の写し…本籍・筆頭者及び続柄の記載がある住民票を提出します
  • 割賦償還に用いる口座にかかる書類…自動振り込みの申し込みがあるかどうかの確認のため必要です。自動払込利用申込書兼預金口座振替依頼書の写しや、預金通帳やキャッシュカードなど口座情報が確認できる書類の写しが必要となります。
  • 事件に関する書類…借金が返せないことで自己破産の手続きを行なうので、債務一覧表などとなります。

法テラスによる援助開始

書類審査が通ると、法テラスによる手続きが行なわれます。費用の立て替えも行なわれます。

事件の終了

裁判所で免責許可が決定されたら、新たな生活のスタートが始まります。

法テラスを利用するメリット

法テラスを利用した自己破産の手続きにはさまざまなメリットがあります。1つ1つみていきましょう。

3回まで無料で法律相談ができる

法テラスでは、自己破産に関する法律相談を1回につき30分、3回まで無料で行っています。相談は、法テラスと契約している弁護士・司法書士です。ただし、無料相談が行なわれるのは、上記「法テラスを利用するための条件」に該当する場合です。

弁護士費用・司法書士費用を立て替えてもらえる

法テラスでは、自己破産の手続きを代行してもらう弁護士や司法書士に支払うべき費用を立て替えてもらえます。実際、自己破産した場合、手元にほとんどお金は残せないので、立て替えてもらえるのは大変ありがたいシステムです。
ただし、無料相談と同様、上記「法テラスを利用するための条件」と「弁護士・司法書士費用等の立替制度(民事法律扶助制度)を利用するための条件」に該当する場合に利用できる制度となります。

費用の返済は毎月5,000円から分割が可能

法テラスが弁護士や司法書士に立て替えた費用は、援助開始が決定後、分割して払っていくことになります。月5,000円から分割が可能です。返済する余裕が若干でもあれば、支払う金額を少しでも増やしてみると後々、楽になるかもしれません。

生活保護受給者の場合は返済の免除申請が可能

生活保護受給者や、特別な理由がある方は、立替費用の返済の免除申請が可能となっています。払いたいけど、直近の支払いが苦しい場合は利用してみましょう。

法テラスを利用するデメリット

法テラスを利用して自己破産の手続きを行なうには、デメリットもあります。これを勘案しながら、法テラスを利用すべきかを検討してみましょう。

利用するための条件がある

法テラスで自己破産の手続きを行なうためには、上記でも述べているように無料相談や弁護士・司法書士費用等の立替には収入や資産等の条件をクリアしないと利用できません。利用したい人でも、条件以上の収入や資産があれば断念せざるを得ません。

自分で特定の弁護士を選ぶことはできない

法テラスで自己破産の手続きを行なう場合、お世話になる弁護士・司法書士を自分で選ぶことはできません。
ご自身の知り合いの弁護士や自己破産に精通している弁護士などにお世話になりたい場合、その弁護士が法テラスと契約していなければ法テラスの制度を利用することができず、自己資金で相談や各種費用を支払うことになります。

弁護士や司法書士に直接相談をするより時間がかかってしまう

法テラスで自己破産の手続きを行なう場合、無料相談や費用の立替の条件に見合うかどうかの審査が行なわれるため、直接弁護士や司法書士に相談する場合より時間がかかってしまいます。債権者からの取り立てに悩んでいて早くそこから逃れたい場合などは、その期間分、ストレスを多く抱えることになります。

まとめ

法テラスを使って自己破産手続きを行なうと、費用はいくらかかるかをみてきました。
一定の条件をクリアした場合ですが、法テラスを使わない場合と比較して最低でも半分の費用で済むことがわかりました。相談費用や弁護士費用などが不要なのは、資金繰りが厳しい中、大きなメリットです。
自己破産すること自体もメリットがあり、決断も早いほど、苦しみからの解放も早くなります。借金の返済に悩まれている方は、法テラスを使っての自己破産を検討されてみてはいかがでしょうか。

さいごに

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