自己破産をすると仕事にどんな影響がでるのか? 制限が出る職業や資格は?

  • 自己破産をしてしまった……これから私の仕事はどうなってしまうの?
  • せっかく取った資格も失ってしまうのかが不安
  • まだこれから先が長いのに将来に向けて不安
  • 周りに知られたら嫌だな
  • 転職などにも影響は出てしまうの?

自己破産とは、債務を抱え混み借金の返済などに当てる財産の余裕がなくなってしまうことから、所有している車や家具などを返済に当てるために差し押さえられてしまうケースなどが一般的に思い浮かべられると思います。
しかし、何もかも失ってしまうという認識は誤りです。確かに、所有している物は一部を除いて換価処分として持っていかれてしまうことが殆どですが、それでも足りなかった場合さらに債務を抱え続けるということは誤りです。
全ての借金支払い義務が免除される手続き・仕組みが存在します。それが、裁判所が取り決める『免責許可決定』というものです。

自己破産をしたら仕事はできなくなる? 辞めないといけない?

結論から言うと、自己破産で仕事に影響が出るケースは基本的に少ないです。これまで通り普通に現在の仕事を続けられます。新たな第一歩を踏み出そうと転職活動を行う際にも影響はありません。
国では破産法という法律があり、借金の清算を行い今後の経済生活の新しいスタートを切れる機会を与えてくれる助けにもなります。

自己破産をすると制限されてしまう職業とは?

基本的に一定の職業には、影響が及ばないと冒頭にお伝えしましたが、制限されてしまう職業も中には存在します。

  • 士業関係…弁護士、司法書士、公認会計士、税理士、行政書士
  • 役員関係…信用金庫、日本銀行
  • 公職関係…公証人、都道府県公安委員会、教育委員会、公正取引委員会
  • その他の職業…質屋・経営者・賃貸業者の登録者、生命保険募集人、警備業者の責任者、警備員

これらの職業は先ほど述べた破産法の範疇ではなく、ここの定められた職種の法律で取り決められることになっております。
弁護士であれば弁護士法の規定、公認会計士であれば公認会計士法など、細かい規定が存在するのです。よって上記の職業に該当する場合は、制限がかかってしまうことがあります。

医師や看護婦、公務員の場合は?

医療関係にあたる医師や看護師、また薬剤師は、破産してしまっても影響はありません。これらの職業には資格の剥奪や影響は無いとされています。
教員や警察官といった公務員などにも影響はありません。しかし、一部のケース(公正取引委員会、公安委員会)には影響が出てしまいます。

取締役が自己破産した場合は?

会社の取締役が自己破産するケースは、会社にとっては勿論のこと、従業員にとっても想定外のケースになります。取締役が自己破産をしてしまうと委任契約の終了事項に当たることになっており、辞任をすることが一般的とされております。
主に民法によって委任契約の終了事項で定められているのは、

  • 委任者受任者の死亡
  • 委任者受任者が破産手続き開始の決定を受ける時
  • 受任者が後見開始の審判を受けた時

この3つです。
会社の委任契約上で取締になることを委任されているので、破産手続きの開始を受けた時点で地位を失うことになります。
では今後は取締役に戻ることはできないのかと疑問が出るとは思いますが、再任は可能です。再度、株主総会で専任されることがあれば法的には問題ないとされています。

職業制限を受ける期間について

職業制限を受ける期間はおよそ3~6ヶ月間と言われています。
破産手続きが開始され免責許可決定が下される間の平均的な期間とされています。その期間中、休職や個人の事業主であれば休業といった形を取ることになるでしょう。
復権した後は従来の職業に就くことも可能であり、以前取得した資格に関しても剥奪されることなく活かし続けることが可能です。

自己破産中でも資格制限の資格は取れる?

自己破産中でも受験はできる

受験は可能です。司法試験、司法書士試験、税理士試験、宅建等、各試験の受験資格においては影響をしない扱いになっています。

合格した場合は?

自己破産破産をしている場合はたとえ合格したとしても、欠格事由といって登録が直ちに行えないという点に注意が必要です。
免責がおりて復権すれば制約が無くなるため、その時に資格の登録が行えます。

自己破産による職業制限から復権について

様々な制約はありますが、復権の方法にはいくつか種類があります。

復権とその種類について

種類においては、『当然復権』と『申立による復権』の2つになります。

・当然復権
自己破産手続きの終了と共に自動的に復権するケースを指します。
特段、これといった手続きなどを必要とせず復権できるということになります。

・申立による復権
当然復権が認められない場合に破産者が弁済を債権者に行えた時や、その他の要因により債務に関して責任を逃れることができた場合など、破産者が自己で申立を行うことにより復権者になれるといったケースを指します。

免責許可決定による場合

免責許可決定の場合であれば、破産債権についてはその責任を免れることができるとされています。破産法に定められた条件で考えると当然復権にあたるとされます。
この場合には、資格制限も解除されるので事実上の復権といった形になります。
ただし、借金の理由がギャンブルや無計画な投資などではないことが条件になります。

債権者全員の同意により破産手続きの廃止による場合

自己破産の手続き中に返済が可能という見込みがある場合、破産手続き参加者にあたる債権者全員の同意を得られた場合、破産手続き廃止を行うケースがあります。この場合にも特別な手続きを取る必要はなく、当然復権ができるとされています。

自己破産をしたら会社にバレる? 申告する必要はあるの?

自己破産をしたら会社に連絡が入る?

自己破産をする場合、裁判所にて手続きをする必要があります。その際、裁判所から会社を通しての通達や会社に直接連絡がいくということは滅多にありません。また、住居の移動の際、会社に住民票や戸籍謄本(抄本)を提出する場合がありますが、住民票や戸籍謄本(抄本)に自己破産の記録は残りませんので、それらの書類を見てバレるということもありません。
一方、官報と言う法律の制定を国民に知らせる為の新聞があります。自己破産をするとこの官報に住所や名前が掲載されます。

そのほか、会社から借入をしている場合にはその借入についても自己破産の対象とみなされてしまうので、裁判所から自己破産の通知が届きます。自己破産は、借入している相手が会社、家族、知人であっても、裁判所に報告を行わなければいけないとされています。
会社の借金だけをどうにか隠して返済を続けていた場合、自己破産ができなくなるケースもあります。

自己破産をしたら申告する必要はある?

会社に自己破産していることを伝える義務や必要は、特段の事由がない限り必要ないとされています。
ただし、申告をしなくとも金融関係の職種であればリストにまとめられている可能性はあります。

自己破産をしたら解雇されてしまう?

自己破産していることを理由にして解雇することはありません。これは『破産法』といった法律の定めによって禁止されているからです。会社側が、このことから解雇を言い渡すことは『不当解雇』にあたります。
しかし、冒頭で述べたように資格の停止によって現在の部署で働けなくなってしまった場合には、解雇されることはありませんが資格所持の必要がない部署などに左遷されてしまう可能性があります。

自己破産をしたら給料やボーナスはどうなる?

自己破産した場合に財産の一部は換価処分され、債権者の弁済や配当に当てられることとなっております。
では給料やボーナスについてはどのような影響が出てくるのでしょうか。

すでに受け取っている給料やボーナスについて

破産手続きの開始前に支払われているボーナスや給料は現金の扱いであり、預金や貯金口座内に入っている場合にはそのまま預金・貯金講座としての扱いを受けます。したがって、元々給料であったものとしての判別は難しいので換価処分されるのかどうかが後に決められることになっております。
預金や貯金は合計額20万円までは自由財産としての扱いを受けることになります。この定めの金額までは預貯金の解約は必要ありません。
一方、現金の場合は99万円までを自由財産扱いとしているので、自己破産をしていても処分の必要はないと定められています。
破産をしても生活ができなくなってしまえば今後どのように生活をしていけばいいかと不安になりますが、その点においては救済の形として生活に最低限必要とされる20万までは手元に残るよう定められています。
また、破産手続き前に預金口座に振り込まれた金額が仮に20万円を超えてしまった場合でも、自由財産の拡張を認めてもらえるケースも存在します。

これから受け取る給料やボーナスについて

自己破産の開始時にまだ受け取っていない給料やボーナスは影響を受けないとされています。原則、自己破産手続き開始決定の際に債務者が持っている財産が回収の対象とされているからです。これから貰う新しい財産を『新得財産』といいます。

受け取れる退職金がある場合

退職金についてはどのような扱いになるのでしょうか。2パターンを例に出すと以下のようになります。

・まだ在職中だが、退職金は受け取っていない場合
現段階で退職金の支給が見込める場合は、その額の8分の1が財産として扱われます。例えば、退職金の支給見込額が480万円だとすると対象額は80万円となります。
しかし、対象額が20万円を下回る額となった場合は自由財産となりますので、没収はされないと考えて良いでしょう。

・すでに退職しているが、まだ退職金を受け取っていない場合
退職者が破産手続きをしている時点で退職金を受け取っていない場合には、退職金の4分の1が対象額とされています。

職業制限等、自己破産の影響を避けたい場合は?

任意整理をする

任意整理は、借入先と直接交渉を行い、計画的に返済できる形をとる方法です。
将来的に利息がカットされ、残りの元金を3~5年に分けて返済をします。

個人再生をする

個人再生とは、裁判所に再生計画の認可決定を受け大幅な借金の減額をしてもらう手続きになります。この場合、減額された借金を約3年かけて返済を行うことで残りの借金においては支払い義務が免除されます。
こちらは、任意整理では支払えないような多額の借金を抱えている方で、持ち家等を手放したくない場合に向いている返済方法とされています。

まとめ

就いている仕事に影響が出そうで自己破産手続きをする勇気がないといった方にも、多くの救済や国に定められた破産法などにおいて保護される点が多くあります。
影響を受けてしまう可能性がある職業の方でも資格が永久に剥奪されてしまう事はないので、自己破産をすることで前向きに次のステップに進むこともできるのです。

さいごに

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