自己破産のスケジュールと期間はどれくらいかかるのか? 流れと手続きについて解説

借金に苦しんでいる方は、早く清算してスッキリさせたいと思っている人がほとんどだと思います。
今回は、自己破産のスケジュールや期間、流れなどをまとめました。

自己破産とは?

自己破産の手続き方法は1つではありません。どのような方法があり何が異なるのか、みていきましょう。

自己破産の手続きについて

自己破産の手続きは大きく分けて2つあります。「同時廃止事件」「管財事件」です。そして「管財事件」はさらに「通常管財事件」と「少額管財事件」に分けられます。
これらの手続きを行うことにより自己破産が完了し、借金の返済が免除となります。ただし、手続きを行ったからといって必ずしも借金がゼロになるわけではありません。(免責不許可事由)

免責不許可事由とは、自己破産をしても借金の返済が免除されないことです。お金の使い道がキャバクラやホストクラブ通い、株やFX、先物取引、宝くじの購入であったり、借金の理由がパチンコや競馬などの場合だったりすると、免責不許可事由にあたる可能性があります。
また、財産を隠す、財産に関する書類の捏造をする、債権者を騙して借入をする、過去7年以内に自己破産をして免責してもらったことがあるなどの場合も該当する可能性があります。

同時廃止事件とは

同時廃止事件とは、破産者が売却できるほどの財産を所有しておらず、かつ免責不許可事由となるおそれが無い場合に、裁判所が破産手続き開始決定と同時に破産を完了させる内容の手続きのことをいいます。

通常管財事件とは

通常管財事件とは、裁判所が選任した破産管財人が破産者の財産を調査したり、換金したりして債権者へ配当を行う手続きです。借金の額が少額ではない場合、この手続きが行われる可能性があります。

少額管財事件とは

少額管財事件とは、債務者にある程度資産がある(33万円以上の現金や20万円以上の価値がある資産)場合や免責不許可事由がある場合に、裁判所から選任された破産管財人が財産や免責不許可事由があるかどうかの調査を行うものです。
同時廃止事件より手続きが複雑な分、自己破産に時間を要しますが、裁判所へ納める予納金が少額に抑えられるのが特徴となります。

同時廃止事件の場合(3~4ヵ月)

財産をほとんどもっていないという方の手続き方法です。具体的にどんな流れになるのかみていきましょう。

同時廃止事件のスケジュール

期間
弁護士・司法書士を探す 2~3週間
初回相談 約1週間
委任契約の締結 約1週間
受任通知 約1週間
準備期間・着手金支払い 約3か月間
申立 1~2週間
破産審尋 約2週間後
自己破産開始決定 約1週間後
意見申述期間 約2ヵ月
免責審尋
免責許可決定 約1週間後
免責確定 約2週間後

同時廃止事件 準備~申立まで

他の事件も同様ですが、まずはお世話になる弁護士・司法書士の選定を行います。どこの誰がいいのかわからない場合は、各都道府県の弁護士会に相談するのもいいでしょう。

弁護士・司法書士が決定したら相談に向かいます。現状を正直に詳細に伝えましょう。自己破産はあくまでも一つの選択肢です。他にも良い方法が見つかるかもしれません。いずれにせよ、早期に相談することはあらゆる事象に対処しやすくなるため大事になってきます。
相談の上、依頼をすることを決めたら委任契約を締結します。委任契約締結後、受任通知が法律事務所から債権者に向け送付されます。これにより、債権者は借金の取り立てができなくなります。

ここでひとつ注意点です。債権者へ個別に借金の返済を行なってはいけません。
受任通知を行なった後は、すべての債権者は平等な立場になるにもかかわらず、一部の債権者のみに返済を行うことは公平性に欠けるということで、破産法違反となります。これを専門用語では、偏頗弁済(へんぱべんさい)といいます。
これが悪質とみなされると免責不許可事由となり、借金の返済免除がおりなくなる可能性がでてくるので注意が必要です。

そして、裁判所に提出する2ヵ月分の家計簿を記入することや、資産明細目録を作成するなどの準備が必要となってきます。預貯金通帳や給与明細も提出しなければならないので、準備しましょう。
さらに大事なのが、弁護士への着手金の支払いです。数か月にわたり分割で支払うことが多いですがこれを完了すると申立が行えるので、できれば早めに払い終えたいところです。

同時廃止事件 申立後~免責許可まで

必要書類が揃い弁護士への着手金の支払いが終わると、申立です。同時廃止事件の申立後から免責許可までは約1週間から1ヵ月かかります。

まず裁判所が申立内容の精査や提出した必要書類の確認を行ないます。
次は裁判所の破産審尋です。破産審尋とは、破産手続き開始決定を行ってもよい案件なのかを判断するために、債務者と弁護士、裁判官の3人で行う面談です。ここでは、借金することになった理由や、破産申立書や報告書等の提出書類に間違いがないか、財産や収入、返済能力の可否、債権者一覧表に記載されていない債権者はいないか、などの確認がおこなわれます。
その結果、支払い不能等の要件を満たしていた場合、破産手続き開始決定を行なってもよい案件と判断されると、手続き開始です。
ただし、裁判所の中には破産審尋を行なわないところも存在します。その場合は、破産申し立てをすると破産審尋なしで破産手続開始決定が下されます。

破産審尋が行なわれて数日すると、自己破産の開始と同時廃止が決定されます。この事は裁判所から債権者向けに通知がされます。あわせて官報に公告が掲載されるはこびとなります。
免責審尋の期日がこれの約2ヵ月後をメドに指定されます。その間、債権者からの意見申述期間となります。債権者は異議がある場合、裁判所へ意見を行うことが可能です。そして裁判所により免責審尋があります。
免責審尋とは、破産手続きが廃止、終結後、破産者を免責させてもよいのか判断するために行われる面談です。現在、借金返済から免れているということを理解しているのか、今後、借金をしないといえる理由や、どう変わっていくか、などを聞かれます。

免責審尋には2種類の方法があり、それは集団審尋と個別審尋です。
集団審尋は、裁判所のある1部屋に多数の破産者が集められて面談を行う方法です。多くの破産者をスムーズに面談していくという意図があります。集団審尋となる破産者は、特に問題がないと思われる方が該当者となり、裁判官から簡単な質問をされます。大人数の場合は、順番が回ってこずに発言することがないまま終わることもあるようです。
一方、個別審尋は裁判官とマンツーマンでの面談となります。該当者はギャンブルや浪費など免責不許可事由となりうる者です。問題がなければ免責許可が決定されます。
なお、裁判所によっては免責審尋を行なわないところもあり、その場合は、破産手続きを廃止した後、免責許可決定がおります。

ここまでで、「審尋」という面談が2度行なわれるのですが、審尋での注意事項をお伝えしておきましょう。
1点目が、審尋は日時が事前に指定され、通知されます。その日時に遅れない、欠席しないことです。そのような事が起きると悪印象となり、自己破産の可能性が遠のく場合があります。事前に欠席せざるを得ない事情がある場合や当日何かのトラブルで遅れてしまうような場合には、その旨を連絡すべきです。
2点目は、虚偽報告をしない、ハッキリとした口調で返答するということです。財産の有無の質問に、実際はあるのに無いなどの虚偽報告を行うとか、あいまいな回答を行うのはよろしくありません。後に事実と異なると発覚した場合、重大なことになりかねません。

免責審尋が終了し特に問題が無い場合は、約1週間後に免責許可決定となります。そして官報に公告が掲載されます。官報公告掲載の約2週間後、免責許可が確定となります。

同時廃止事件は、通常管財事件や少額管財事件のように破産管財人による調査や債権者への財産の配当が行われないので、その期間分早く終了します。職業制限がある場合はこの日を境に復権できます。

通常管財事件の場合(6~12ヵ月)

個人での自己破産ではレアなケースにはなるかもしれない通常管財事件ですが、どのようなものかみてみましょう。

通常管財事件のスケジュール

通常管財事件のスケジュールは以下の通りになります。

期間
弁護士・司法書士を探す 2~3週間
相談・負債状況の調査 1~2週間
必要書類の準備 3~4週間
裁判所へ申立 2~3週間
申立後~破産手続開始 約1ヵ月間
破産手続 3~6ヵ月間
破産手続後~免責許可 1週間~1ヵ月

通常管財事件 準備~申立まで

通常管財事件は、債務者が一定の財産を有する場合に行なわれます。破産管財人が選出される手続きで、費用が高くなりがちです。
また、通常管財事件は少額管財事件よりも時間を要する場合があります。負債状況の調査や必要書類の準備が複雑なためです。そして、納めるべき最低予納金が手元にない場合は、資金を工面するためさらに時間がかかる場合があります。

通常管財事件 申立後~破産手続開始

通常管財事件は、申立てから破産手続き開始まで約1ヵ月をみておくべきです。通常管財事件は、手続きが複雑なため、弁護士が裁判所に申立を行うことがほとんどです。
最初に申立内容の精査を裁判所が行います。提出した必要書類に不備や漏れなどがないか確認されます。申立内容に問題がないことが確認されると、破産手続きの開始です。そのタイミングで破産管財人が選出される流れになります。
破産管財人の役割は、破産者の財産の調査を行なったり売却などをして債権者に配当をしたりすることです。なお破産管財人となる弁護士と、自己破産でお世話になる弁護士は別の方となります。

通常管財事件 破産手続

通常管財事件の破産手続きは約3~6ヵ月を要します。まずは裁判官による破産管財人との面談が行なわれます。
主な面談内容は、借金の理由や内容、そして現状の収入の確認です。その後、債権者集会が開催されます。内容は、主に破産管財人から債権者への財産の配当についての報告です。
通常管財事件の場合、債権者集会は少額管財事件より多めの2~3回開催されることがあります。調査や報告などは少額管財事件よりも時間を要します。

通常管財事件 破産手続後~免責許可

通常管財事件では、破産手続き後から免責許可までは約1週間から1ヵ月かかります。債権者への財産の配当が終了すると、破産手続きは終了します。
管財事件の場合、破産手続きの間、時間を要して綿密な調査が行なわれており、その結果、破産手続きから免責許可の時間は短期間で済みます。

少額管財事件の場合(6ヵ月)

破産法の規定にはない制度ではなく裁判所の裁量による手続きですが、多くの裁判所で採用されています。

少額管財事件のスケジュール

少額管財事件に関するスケジュールはおおまかに以下のようになります。

期間
弁護士・司法書士を探す 2~3週間
相談・負債状況の調査 1~2週間
必要書類の準備 3~4週間
裁判所へ申立 2~3週間
管財人との面談 約1週間後
自己破産開始決定 約1週間後
予納金支払い 約2週間後
債権者集会 約2週間後
免責許可決定 約2週間後
免責確定 約1ヶ月後

少額管財事件 準備~申立

まずは、お世話になる弁護士を探すところから始めなければなりません。最低予納金が手元にない場合は、資金繰りも行なわなければなりません。そのための時間もみておく必要があります。負債状況調査、資料作りにも時間を要する場合があります。

少額管財事件 申立~破産手続開始

少額管財事件では、申立から破産手続開始まで約1~2ヵ月を要するとみておいていいでしょう。
まず、少額管財事件として裁判所に自己破産の申立をします。そして、管財人候補となる弁護士と代理人弁護士、そして債務者本人の3人で面談が行なわれます。
面談場所は管財人弁護士の事務所で、面談の内容は主に借金の中身や借金しなければならなくなった理由、そして現在の収入などの確認です。面談後、数日以内に自己破産が決定となり、破産管財人が正式に決定される流れとなります。
そして予納金の振り込みをする口座の開設が破産管財人により行われます。少額管財事件での予納金は通常20万円~で、予納金の主な使途は、破産管財人への報酬です。なお、予納金は分割払いが認められています。

少額管財事件 破産手続

少額管財事件では破産手続きに約1~2ヵ月かかります。通常管財事件ほどの時間はかかりません。
まず、債権者集会が行われます。債権者集会は事前に日時が指定され、欠席や遅刻をしてはいけません。何かしらの理由があり欠席や遅刻する場合は、事前に連絡が必要です。
債権者集会では、破産管財人から債権者へ財産の配当に関する報告があります。破産管財人は財産の処分を行ないます。その中から債権者への配当が実行されるのです。財産が複雑であったりすると時間を要す場合があります。
少額管財事件では、免責審尋は債権者集会の中での実施です。これらの期間は、債務者は特に何も行うことがありません。

なお、予納金の支払い破産手続きを開始したものの、配当を行なえるほどの財産がなく、破産手続きを中止することがあります。それを「異時廃止」といいます。
破産手続きを中止したのなら、予納金を返納してもらってもいいのでは?と思いがちですが、財産の調査等を行うなど、破産管財人としての業務を全うしており、予納金が返納されることはありません。そして少額管財事件は、ほとんどの場合は異時廃止となるのが実情となっています。

少額管財事件 破産手続後~免責許可

少額管財事件の破産手続き後から免責許可までは約1週間から、長くて1ヵ月ほど要するでしょう。債権者への配当が完了すると、破産手続き完了です。

自己破産にかかる期間を短くする方法

自己破産をするには時間がかかります。早く新たなスタートをきりたい方は、その時間を少しでも短くしたいでしょう。その方法をご紹介していきます。

必要書類を早めに準備する

必要な書類は主に以下となります。

  • 自己破産申立書
  • 住民票・戸籍謄本
  • 源泉徴収票
  • 収入証明書(給与明細・賞与明細)
  • 陳述書
  • その他財産に関する資料(車・保険・不動産など)

即日面接制度を利用する

即日面接制度は、東京地方裁判所のみで実施されていて、申立を行う当日に破産手続きが開始される制度です。通常、半月から1ヵ月かかるところ、1日で終了します。他の裁判所と違い、取扱件数が圧倒的に多い東京地方裁判所ならではの制度です。
通常の自己破産手続きは、「同時廃止」にするか「管財事件」にするかを債務者・弁護士・裁判官の3人で面談するのです(破産審尋)が、このような面談を1件1件行なっていくと膨大な時間がかかるので、弁護士と裁判官のみで面談し、手続き時間の短縮につなげています。
この制度を利用するには、原則、弁護士に破産手続きを依頼している場合に限られます。司法書士では行えません。なお、横浜地方裁判所にも「早期面接」という、似たような制度があります。

通常管財事件手続きは避ける

通常管財事件は、およそ半年から1年ほどかかります。債権者集会を複数回実施するなど、少額管財事件より手間や時間がかかるためです。
資産状況などにより通常管財事件になることがあるのですが、弁護士に少額管財事件にならないか問い合わせてみましょう。

法テラスの利用を避ける

法テラスは、国が低所得者向けに支援する自己破産費用を立て替えする制度です。国の税金を使うため利用するには審査が厳しく、その審査に時間がかかります。
弁護士に直接依頼するよりも1~2ヵ月は長くなることを覚悟しておく必要があります。資金に余裕がある場合は、法テラスを利用せず直接弁護士に相談する方がいいでしょう。

まとめ

自己破産に関するさまざまな手続き方法をみてきました。
財産の有無等で手続き方法が違い、これまでのお金の使い方により、免責があるかどうかなどがわかりました。そして自己破産には時間がかかることも知ることができました。
一度リセットして新たな生活をスタートさせるには、早いに越したことはありません。これを一読していただき、スッキリした人生を送ってみませんか。

さいごに

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