ここでは自己破産の免責決定とは何か、免責決定までの流れ、免責決定後の注意点、免責許可されなかった(≒自己破産できなかった)場合の対応方法などについて解説していきます。
また、免責決定を受けるためのポイントに関してもお話しします。自己破産の98%は成功していますが、裏を返せば「深刻な問題があるケースでは自己破産できない」ということでもあります。その事態を回避して、自己破産のメリットを受け取るためにもぜひ最後までご覧ください。
自己破産における免責とは?
そもそも自己破産における免責とは何のことなのでしょうか。簡単に解説します。
自己破産における免責
自己破産における免責とは、基本的に「借金の支払い義務を免れること」を指します。言葉の定義を突き詰めて考えると多少変わってくる場合もありますが、原則として「自己破産において免責許可された=自己破産の成功」ととらえることができます。
ちなみに自己破産は「借金で苦しむ人を救い、生活を再生させる」という救済の意味合いが強い制度であるためほとんどの自己破産は成功しており、失敗率はわずか2%ほどとなっています。
自己破産の免責許可を受けるための条件とは?
それでは自己破産の免責許可を受けるための条件、つまり自己破産をするための条件について解説していきます(ただし実際にはこれらの条件を満たしていなくても自己破産できる可能性が高いです)。
債務(借金)が支払えない状態であること
つまり「借金を返せない状態である」必要があります。自己破産の申し立てをして、裁判所が「確かに支払うことはできない」と判断したら、自己破産手続き開始決定が行われます。
ただ、支払い不能の明確な定義はありません。自己破産者の財産、給料、職業、信用、年齢、性別などをトータルで判断した上で、ケースバイケースで認定されます。
例えば自己破産者に財産が残っていなくても、「無理なく金銭を調達できる」とみなされれば「支払い不能である」とは認められない可能性があります。
無計画な浪費ではなく、不可抗力な債務であること
つまり「やむを得ない理由による借金」である必要があるということです。例えば、
● 連帯保証人になった
● 自己破産者本人などが事故を起こして賠償する(した)
などです。
そして無計画な浪費とは、
● ギャンブルによる浪費
● 不必要かつ高額な買い物
● 無謀な投資(FX、不動産、先物取引など)
などのことを指します。
過去7年間に自己破産をしていないこと
自己破産という制度の本質は「自己破産者にやり直すチャンスを与えること」にあります。
したがって7年以内に再度自己破産をするのは非常に印象が悪いため、免責許可を受けにくくなります。
破産手続きに真摯に協力的に対応すること
自己破産の手続きをした場合、自己破産者の財産について徹底的に調べられることになります。これによって少しでも債権者に対して返済をするためです。
そして債権者が誰であるのか素直に明かさなかったり、財産を隠そうとしたりすると、免責許可を受けにくくなります。
場合によっては「悪気のないミス」によっても、自己破産手続きの妨害行為とみなされるケースもないわけではありません。そのようなことがないように弁護士などと密に相談・確認しながら進めていくことをおすすめします。
自己破産の免責許可決定までの手続きや流れ、期間
自己破産にも3タイプあります。
管財事件 | 自己破産者が「破産手続き費用を出せるだけの財産」を持っていると判断された場合の手続き |
少額管財事件 | 予納金(自己破産を始めるための手続き費用)を少額に抑えつつ、管財事件扱いで破産管財人による調査がなされる手続き |
同時廃止事件 | 自己破産者に「破産手続き費用を出せるだけの資力」がないと判断された場合の手続き |
※なお自己破産の7割程度は同時廃止事件として処理されています。
どの手続きになるかによって免責許可決定までの流れや期間が違います。
では、それぞれに関して解説していきます。
管財事件の場合
財産処分、換金手続きなどが丁寧に行われますし、破産管財人を選定する必要もあるため、免責許可決定までに半年~1年ほどはかかります。
1:地方裁判所に対して自己破産の申し立てを行う
2:(裁判所が必要とみなしたケースでは)審尋をする
3:自己破産手続開始。破産管財人が選ばれる
4:予納金の納付(個人の場合は50~500万円以上が目安)
5:破産管財人と面談。負債を作った経緯や理由、負債の内訳、財産状況などのヒアリング
6:債権者集会(破産管財人が、債権者に対して、自己破産者の債務や財産状況を報告する)。債権者集会は月1回、1~3回ほど行うのが普通
7:債権者に配当。すべての財産が換価もしくは配当されたら、自己破産手続きは完了
8:免責許可決定
少額管財事件の場合
少額管財事件であれば予納金は20万円程度で済みます。大半の地方裁判所は、「弁護士による代理人申立」を条件に、少額管財事件として認定してくれます。
少額管財事件の流れと、免責許可決定までに要する期間は、管財事件とほぼ同様です。予納金を納めてから、裁判所が申立を受理した後、代理人(弁護士)と破産管財人が協力して手続きを進めてくれます。
同時廃止事件の場合
同時廃止事件であれば、自己破産手続開始決定と同タイミングで裁判所の決定が行われます。管財事件(少額管財事件)よりも手続きが簡単ですし、破産管財人もいませんから、6か月ほどで免責許可決定が出ます。
また、「自己破産手続き費用を出すだけの資力がない」とみなされた場合に行われる手続きですから、予納金は2万円前後で済みます。
自己破産の免責許可決定後の流れ
自己破産の免責決定後、(基本的に)2週間が経過すると免責の効力が発生します。これによって借金の返済義務を免れることができます。
ただし税金など、免責決定後も支払い義務が残るものもありますから、「免責決定後は全てゼロになる」とは考えないようにしましょう。
その他、細かな注意点もあるため、事が落ち着くまでは必要に応じて弁護士などと相談しながら進めていくことをおすすめします。
免責決定通知書とは
免責決定通知書は、自己破産の免責許可が出た際に送られてくる書面です。ただし免責決定通知書が届いても、免責が確定したことにはなりません。免責決定通知書はあくまで「あなたが自己破産をすることは妥当であると認められました」と知らせてくる書類なのです。
免責許可が出てから、2週間の間に債権者などから不服申し立てがなければ、免責許可が確定します(これをもって自己破産手続きが完了したといえます)。なお個人の自己破産であれば、不服申し立てが行われることはまずありません。
免責許可決定の確定と免責確定の違い
免責許可決定 | 裁判所が免責を認めることを決定した |
免責確定 | 債権者からも不服申し立てがなかった |
つまり免責許可決定→免責確定と進むことになります。
ただ、一般には「免責許可決定後は~」「免責決定後は~」「免責確定後は~」など、あまりきちんと呼び分けられていない印象があります(もちろん裁判所や弁護士などは明確に呼び分けます)。
自己破産の免責確定の効果とは
自己破産の免責確定、つまり「自己破産手続きが完了したこと」はどのような効果を持っているのでしょうか。
債務(借金)について
(税金など一部のものを除き)債務の支払い義務が免除されます。つまり借金の返済をする必要がなくなります。もし免責決定後に請求が来たとしても、免責が確定していることを理由に支払いを拒否することが可能です。
財産・資産について
自己破産の手続きをするにあたって、財産・資産は換価処分されます。ただし自由財産は残しておくことができます。
主な自由財産は以下の通りです。
● 自己破産手続きを開始してから得た財産
● 差押禁止財産(必要最低限の衣類、家具、食料など)
● 99万円以下の現金
資格制限について
自己破産の手続きを開始すると、破産者に対して資格制限が課せられます。ですが免責許可決定が確定すれば、基本的に「復権」されて資格制限は解除されます。
なお資格制限に関して、破産法で規定されているわけではありません。「各資格の取得要件などを定める法律」において個別で規定されていますから、そちらを確認してください(もしくは弁護士などに確認を取る)。
新たな借入やクレジットカードについて
自己破産の免責決定後、信用情報機関に事故情報が登録されます。いわゆるブラックリスト入りであり、5~10年ほどは解除されません。
ブラックリストに登録されている間は、新たにお金を借りたり、クレジットカードを作ったり、ローンを利用したりすることが難しくなります。
ただ、あくまで難しくなるだけであり、「自己破産から○年経過していないものにお金を貸してはならない(クレジットカードを発行してはならない)」などのルールがあるわけではありません。
居住制限・旅行について
自己破産の手続きが開始すると、自己破産者は無許可での引っ越し、宿泊をする旅行などができなくなります。
ただ、自己破産手続きが完了すればこれらの制限は完全になくなります。
郵便物の制限について
自己破産の手続きが開始すると、自己破産者本人への郵便物(家族への郵便物は対象外)は、破産管財人に転送されてから、自己破産者本人に届きます。
ですが自己破産手続きが完了すれば、この転送が停止され、通常通り本人に直接届くようになります。また、場合によっては、初回の債権者集会の日に転送が停止されるケースもあります。
官報公告について
自己破産の免責決定後、官報に「氏名・住所・免責が許可されたという事実」などが載ります。
この記録は決して消去されず永久に残りますが、過去の官報を検索することは簡単ではありません。そのため官報を原因に、自己破産をしたと知られることはまずないといえます。
破産者名簿への掲載について
自己破産の免責が不許可となったり、免責されなかったりした場合に限り、「自己破産者の本籍地の市町村役場」の破産者名簿に情報が記録されます。
先述の通り自己破産はほぼ成功しますから、これについてはほぼ考慮する必要がないといえるでしょう。
再度の自己破産について
先述の通り、7年以内に再度自己破産をしようとすると、免責不許可事由とみなされて、免責許可が出ない可能性があります(事情によっては免責が許可される場合もあります)。
自己破産の免責不許可について
続いて自己破産が免責不許可となる理由、つまり免責不許可事由などについて解説します。
免責不許可事由とは
免責不許可事由とは「免責を不許可にするべき事項」です。ギャンブルによる借金、無謀な投資による借金など、基本的に「一般的に自業自得もしくは原因が悪質とみなされる借金」などが該当します。
免責不許可になる理由とは
ただ、実際には「裁量免責」によって、「免責不許可事由があっても自己破産が認められる」場合がほとんどです。
ただし、
● 財産を隠そうとした
● 負債理由が悪質(例:顧客から集めた資金で無謀な投資をした)
● 自己破産手続きに非協力的
などのことがあると本当に免責不許可となってもおかしくありません。
自己破産の免責不許可になった時の対処法
それでは免責不許可になった(なりそう)、つまり自己破産ができなかった(できなくなりそう)場合の対処方法について解説します。
即時抗告をする
つまり「もう一回審理をしてください」と依頼することです。ただし免責不許可通知が届いてから1週間以内にしなければなりません。急いで弁護士に相談して手続きをする必要があります。
裁量免責を目指す
※こちらは免責不許可に「なりそう」な場合の対策です。実際に免責不許可に「なった」場合は他の方法を取ってください。
免責不許可事由があっても、裁量免責によって自己破産できる可能性が高いです。裁量免責を勝ち取るためのポイントは以下の通りです。
● 自己破産手続きに最大限協力する
● 更正の姿勢を見せる(ギャンブルをやめる、質素倹約に努めるなど)
時効を待つ
実は一定期間が過ぎれば借金は消滅します(消滅時効)。ただし債権者も時効の成立を阻止するべく行動しますし、時効が成立するまでの精神的なストレスもかなりのものとなるでしょう。そのため現実的な方法ではないといえます。
個人再生や任意整理に切り換える
自己破産以外にも「個人再生」や「任意整理」などの債務整理があります。いずれも借金がゼロになるわけではなく、自己破産に比べると恩恵が少ないものの効果はあります。
なお自己破産を検討しているとしても、まずは弁護士に「どのタイプの債務整理をするか」の相談をすることをおすすめします(弁護士の方から言い出すはずです)。状況によってベストな債務整理方法は異なるからです。
自己破産の免責許可になっても無くならない債権とは
先ほどお伝えした通り、自己破産の免責決定後もなくならない債権があります。詳しく見ていきましょう。
非免責債権とは
自己破産の免責対象外となる債権(借金)のことを「非免責債権」と呼びます。
非免責債権を自己破産のシステム上で減額することは基本的にできません。それぞれの債権について個別に減額を図ったり、素直に返済したりする必要があります。
税金・保険料・年金・罰金
各種国税など「公的な請求権がある債権」は非免責債権です。さらに各種公的保険の保険料や年金保険料も、非免責債権に分類されています。
また、罰金は法律違反の代償ですから、免責の対象とはなりません。
養育費
すべての国民が、「子どもに普通教育を受けさせる義務」を負っています。そのため養育費は非免責債権です。
雇用者への給料や退職金
つまり「自己破産をしても、従業員などに給料や退職金を支払う義務はなくなりません」ということです。
そうでないと「雇用者の自己破産」によって受ける、従業員側のデメリットが大き過ぎますから妥当といえるでしょう。
債権者リストに掲載されていない債権
自己破産の申し立ての際に「債権者一覧表(債権者リスト)」を提出しますが、このリストに掲載しなかった債権は、非免責債権となります。
特定の債権者を債権者リストに載せなかった場合は、免責不許可事由とみなされる可能性があります(わざとであるケースでは特に)。そのため弁護士などと確認を取りつつ、丁寧に債権者リストを作ることが大事です。
故意や過失の借金
正確に言うと、「故意や過失によって、他者の利益を害した場合は、損害賠償請求を支払う。その損害賠償金は、自己破産をしても免除されない」ということです。
ちなみに故意、過失という言葉に明確な定義は存在しませんが、一般的に以下のように解釈されています。
故意 | 相手に損害を及ぼすかもしれないと知った上で、わざと実行する |
過失 | 損害が生じることを予測できるにもかかわらず、それを避ける努力をしない |
まとめ
実は自己破産申し立ての約98%程度では成功しています。また、自己破産を行うことで人生の再スタートができますから、自己破産のメリットは大きいといえます。そのため自己破産を検討している方は、早めに動き出す(まずは弁護士に相談する)ことをおすすめします。
自己破産をせずにギリギリまで粘ってしまうと、借金が膨らんだり、免責不許可事由が増えたりして自己破産ができなくなる恐れもあります。ただ、それでも「更生の姿勢を見せる」「手続きに全面的に協力する」などを徹底すれば自己破産できる可能性は高いです。
ただし自己破産の免責決定後も、あらゆる負債がゼロになるわけではありません。各種税金などは免除されませんから免責決定後も注意が必要です。とはいえ自己破産によって大幅に楽になることに変わりはありません。
さいごに
【予算不足のためご自身でなんとかしたい方はこちらへ】
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