ここでは自己破産の申し立て手続きに必要な提出書類や、書類の準備方法、準備するにあたっての注意点などについて解説していきます。
自己破産をする方の多くは専門家に相談して、必要な提出書類について教えてもらい、書類の種類によっては作成代行をしてもらっています。とはいえ、専門家に丸投げすることは好ましくありませんから、ここで最低限の知識をつけていただければ幸いです。
ギリギリの状況になる前に提出書類をスムーズに用意して、自己破産のメリットを早めに受け取るためにもぜひ最後までご覧ください。
自己破産の申立に必要な提出書類は9種類
まずは自己破産の申し立てでほぼ間違いなく必要となる提出書類を紹介します。
自己破産申立申請書
文字通り申し立てに使う書類であり、裁判所で取得できます。
破産者本人の個人情報(氏名、電話番号、住所など)、負債額、負債を抱えた理由などを書きます。家計収支表などもセットになっていますし、書く項目もたくさんありますから、早めに用意することをおすすめします。
裁判所によってこの書類の書式は違いますから、お住まいのエリアを管轄する裁判所の民事部破産再生係で取得してください。
陳述書(報告書)
こちらも申し立てに使う書類であり、裁判所で取得できます。
自己破産をするに至った経緯、反省、これからの生活の見直しなどを書きます。
なお
自分で書く:陳述書
弁護士に書いてもらう:報告書
という呼び方になります(どちらからを提出することになります。両方を提出する必要はありません)。
自分で書けば誠意が伝わりやすいですから陳述書として提出するのがおすすめです。
住民票・戸籍謄本
家族全員分の住民票を用意しなければなりません。市区町村の役所で取得してください。なお住民票は直近3カ月以内に取得したものである必要があるため、「自己破産を検討し始めた段階」で入手すると、タイミング的に破産手続きのためには使えなくなる恐れがあります。
また、転居などによって本籍地が遠方にある場合は、郵送で申請することになります。
それから家族関係の説明を求められるケースでは戸籍謄本も準備しなければなりません。住民票と一緒に用意しましょう。ちなみに手続き上家族の住民票が必要になるというだけで、自己破産をしたからといって家族に直接的な影響が及ぶわけではありませんからご安心ください。
債権者一覧表
債権者一覧表は、借金の額・借入先・借入先などをまとめた書類です。
事実と違う内容を書くと自己破産できなくなる場合もありますから、債権者を余さず記載し、金額や日付なども間違えないようにしましょう(この書類に限りませんが専門家と相談しながら書いていくことをおすすめします)。
収入明細(給与明細、一か月以内の家計簿など)
「借金の返済が不可能である」ということを示す必要がありますから、給与明細や家計簿などの収入がわかる書類を用意しなければなりません。
直近2~3か月分のものを準備することをおすすめします。あくまで現在の状況を示すことになりますから手元に昔の給与明細があっても基本的に役立ちません。
給与明細を失くしているのであれば、勤め先に再発行を依頼しましょう。再発行できないようなのであれば預金通帳のコピーから振込状況や収入金額の説明をすることになります。
源泉徴収票・納税証明書・非課税証明書
源泉徴収票は勤め先に申請すれば取得できます。
失くしていて再発行ができないのであれば、市区町村の役所で取得可能な納税証明書で代用できます。
なお収入がない方でも非課税証明書を提出しなければなりません。
財産目録(登記簿謄本・退職金見込額証明書など)
財産目録は、破産者が持っている財産について確認するための書類です。
債権者への配当が可能な財産に関して調べるための書類でもありますから、一切隠さずにすべての財産を開示してください。財産であるのかどうかが判断しにくいものもあるかもしれませんが、専門家に相談すれば適切にジャッジしてくれます。
具体的には以下のように準備します。
銀行口座がある | 預金通帳 |
保険に加入している | 保険証券、解約払戻金証明書 |
車がある | 車検証 |
新車から7年以内の車がある | 車の価値がわかる書類(査定書など) |
5年以上正社員として働いている | 退職金見込額証明書 |
FXトレードや株トレードをしている | 取引明細 |
不動産がある | 不動産登記事項証明書、不動産評価額関係書類 |
賃借人である | 賃貸借契約書など(敷金があるかないかわかる書類) |
預金通帳のコピー
自分名義のすべての預金通帳のコピーを用意してください。基本的に直近2年分のコピーを準備することになります。
もちろん作ってから間もない預金通帳であってもコピーが必要ですし、「ほとんど使っていない口座」に関しても存在を忘れないようにしましょう。
その他
● 生活保護受給証明書や年金受給証明書(受給している場合)
● 診断書やおくすり手帳(受診、通院中である場合など)
などの書類も必要となります。また、法テラスを使って手続きをする場合は提出書類も違ってきますから気を付けてください。
いずれにせよ早めに専門家に相談して準備を始めて、書類が不足しないようにしましょう。
自己破産の申立に必要な提出書類の準備方法と注意点
続いて自己破産の申し立てで使う提出書類を準備する手順や気を付けるべきことなどについて解説します。
自分で用意する書類
自分で用意する書類としては主に「家計簿のコピー」と「預金通帳のコピー」があります。
家計簿には
● 公共料金
● 衣食住で発生した費用
● 遊興費
● 返済額
などを書きますが、具体的な項目に分けていくら使ったのか記載する必要があります。申し立て前の2~3か月分を書きましょう。
預金通帳についてですが、複数持っている場合はすべて準備します。
申し立て前の2年分を用意するのが望ましいです。記帳するタイミングは申し立ての1週間ほど前がおすすめです(新しい内容にするため)。
通帳を処分・紛失している場合は、銀行に相談すれば取引明細を取得できます(ただし基本的に有料です)。
家計簿や預金通帳に限りませんが、専門家と相談しながら用意するのが確実です。
職場で用意してもらう書類
職場で用意してもらう書類としては、給与明細(直近2~3か月分)、源泉徴収票(もしくは課税証明書)、退職金見込額証明書などがあります。
ポイントは以下の通りです。
給与明細 | 紛失していたり、ウェブ明細ではなく用意できなかったりする場合は、経理に再発行を頼みましょう。 |
源泉徴収票 | 経理に頼めば発行してもらえます(失くしていて再発行できないのであれば市区町村の役所に行って課税証明書を取得しましょう)。 |
退職金見込額証明書 | 職場に依頼しても発行してもらえないケースもあります。その場合は就業規則における退職金規定などを見ながら計算しましょう。 |
これらの書類を用意するにあたって職場に「なぜこれらの書類が必要なのか」と聞かれるケースもあります。特に退職金見込額証明書が必要になる機会はほとんどありませんから、不審がられるかもしれません。
ただ、「住宅ローン関連で必要になりました」などと答えておけばまず問題はありません。
裁判所で用意してもらう書類
裁判所で用意してもらう書類としては、財産目録、債権者一覧表、自己破産申立申請書、陳述書(報告書)などがあります。
財産目録は「破産者が持つ財産」をすべて書きます。「現時点で借りているお金」も含まれますから忘れないようにしましょう。債権者一覧表は「返済する相手」をすべて書きます。裁判所によって形式や運用が異なりますから気を付けてください。
自己破産申立申請書には、電話番号・住所・氏名などの個人情報、負債金額・負債理由などを書きます。
陳述書(報告書)には当事者や関係者の言い分などを書き、本人が署名・押印をします。
本人が書いた場合は「陳述書」、専門家に書いてもらった場合は「報告書」となりますが、本人が作成すればより誠意が伝わりやすいため「陳述書」にするのがおすすめです。
なお「裁判所で用意してもらう」という表現を使いましたが、実際には専門家に依頼して用意してもらう人が大半です(専門家を通じて裁判所に用意してもらう)。
自己破産の状況に応じて必要となる提出書類
続いて「状況によっては必要になる提出書類」を紹介していきます。「必要かどうか」の判断を一般の方がするのは難しいですから、専門家に相談することをおすすめします。
車を持っている場合
車を持っている場合は、「車検証」と「査定書(現在の車の価値がわかる書類)」を準備します。自己破産をするにあたって専門家に依頼していれば、その専門家がこれらの書類を用意してくれますから簡単です。
車検証は自動車の安全性などを証明するものですから、自己破産とは関係なく誰でも持っているはずです(持っていないと50万円以下の罰金)。自動車の車検証入れなどをチェックしましょう。
万が一車検証を紛失した場合は、運輸支局(軽自動車の場合は軽自動車検査協会)の窓口に行って再発行の申請をしてください。
査定書の入手方法としては、各都道府県にある「日本自動車査定協会」の支所に申し込んで査定してもらい取得するのがおすすめです。日本自動車査定協会は、経済産業省や国土交通省が管理しているため法的に通用する査定をしてくれます。
不動産を持っている場合
不動産を持っている場合は、不動産登記事項証明書、不動産評価額関係書類、ローン残高証明書などが必要です。
不動産登記事項証明書は、法務局に登記された内容(不動産登記、法人登記、商業登記など)を証明するための書類です。法務局の窓口に申請すればその場で取得できますが、「ネット申請→そのあと郵送か窓口で受け取る」というルートもあります。
不動産評価額関係書類としては「固定資産税証明書」があります。これは不動産の価格(目安)を把握するためのものであり、所有者、所在地、地名・地積、家屋の構造・種類、床面積、固定資産評価額、課税標準額などが書かれています。
市町村役場(23区であれば都税事務所)に申請して、窓口か郵送で受け取ることになります。
また、ローン残高証明書は借りている金融機関から取得できます。ローン残高証明書については自力でも簡単に取得できますが、自己破産を専門家に依頼しているのであれば取得を任せるのもいいでしょう。
株やFXなどを持っている場合
株トレードやFXトレードをしているのであれば、取引明細書(1~2年分)を準備します。証券会社から書面を郵送してもらう方法もありますが、電子書面で取得することもできます。
「株トレードやFXトレードで損失を出していること」は免責不許可事由(免責を認めない理由=自己破産をさせない理由)になる恐れがあるものの、実際には自己破産が認められるケースが大半です(自己破産手続きの約98%は成功しています)。
そのためごまかさずに取引明細書を用意しましょう。ごまかせば(バレて)本当に自己破産ができなくなってもおかしくありません。
なお仮に株トレードやFXトレードで成功しているとしても、陳述書には「今後株トレードやFXトレードはしません」と書くのが無難です(これまでは稼げていたとしても投資にリスクがあることは変わりないため)。
保険に加入している場合
保険に加入している場合は、保険証書と解約払戻金計算書が必要です。
保険証書には、どのようなタイプの保険にどのような保障がついているのか、そして保険金がいくらなのかなどか記載されています。また、保険期間、契約書、被保険者なども書かれています。
加入時に保険会社からもらっているはずですが、失くしているのであれば保険会社に頼んで再発行してもらいましょう。
解約払戻金計算書とは、「保険を解約すると何円払い戻されるのか」を記載したものであり、「保険を現金化する場合の価値」を示すことができます。
保険会社に申請すると計算・発行してもらえます。
年金や生活保護を受給している場合
年金受給証明書、生活保護受給証明書、その他扶助の証明書などが必要です。
生活保護受給者であれば市区町村から受給証明書が発行されているはずです。失くしている場合は市区町村に再発行を頼みましょう。
年金受給証明書(年金証書)は年金をもらい始めた際に日本年金機構からもらっているはずですが、失くしている場合は社会保険事務所などに再発行を依頼してください。
その他、特定の扶助を受けているのであれば受給証明書が発行されていますが、これも紛失しているのであれば発行元に再発行を頼みましょう。
自己破産申立の提出書類 陳述書について
続いては陳述書(自己破産を選んだ経緯、反省文、これからの生活に対する心構えなどを書く)について解説していきます。
陳述書は自分で書いた方が良い
先ほどもお伝えしましたが、自分で書いた場合は「陳述書」、専門家に書いてもらった場合は「報告書」となります。
自分で書けば心証が良くなりますから、「陳述書」にすることをおすすめします。
ただ、免責不許可事由(ギャンブルや浪費による借金であるなど)がない場合は、「報告書」であっても現実的にはほぼ問題ありません(ただ、依頼する専門家が陳述書を作成するよう指示してきた場合は素直に従うべきです)。
また、陳述書を作成するとしても、依頼する専門家が「反省文は不要」と判断する場合もあります。
陳述書を書く場合のポイント
陳述書には以下の内容を書くことをおすすめします。
負債理由 | 借金をした理由、借入先、金額、借りた時期などを書きます。 |
負債が膨らんだ理由 | 自己破産者の多くは「多重債務者」です。時系列通りに並べて、多重債務者になって経緯を書いていきます。 |
自己破産を選んだ理由 | 「個人整理」や「任意整理」などの債務整理もある中、なぜ自己破産をするのか、自己破産でなければならない理由を書きます。 |
反省や今後に対する心構え | 自分のどこに問題があったのか、同じ問題を起こさないように何に気を付けるつもりでいるのか、今後どう生活していきたいかなどを書きます。 |
また、陳述書を書くにあたって以下のことを意識しましょう。
● 事実を書く
→ごまかさないことは当然として、「内容を間違えないこと」も大事です。
● 「気持ち」も書く
→陳述書によって誠意を見せることが大事ですから、淡々と事実を記載するだけでなく「どのような気持ちでいるのか」も書くことをおすすめします。
●「自己破産でないと解決できない根拠」を書く
→これをきちんと書かないと「個人整理や任意整理でもいい」と判断されてしまう可能性が出てきます。
● 1200字ほどにまとめる
→先に借金を時系列でまとめたり、箇条書きで文章の構成を組み立てたりしておかないと意外とまとまりにくいです。
陳述書を書く際に注意すること
先に債権者一覧表(借入先・金額・借入期間などの情報をまとめたもの)を用意しておかないと、陳述書に書くべき情報を見落としてしまい、自己破産が認められなくなる恐れがありますから注意しなければなりません。
また、陳述書は自分で書くものとはいっても、もちろん専門家と相談しながら作成することが大事です(陳述書に限らずすべての提出書類に当てはまることですが)。
自己破産申立の提出書類 債権者一覧について
続いては債権者一覧表を作るためのポイントについて解説します。
債権者一覧を作る場合のポイント
債権者一覧表には以下のことを書きます。
● 債権者の名前
● 債権者の住所
● 借入開始時期、完済時期
● 債務残高
● 借金を何に使ったか
● 保証人の名前 など
それぞれのポイントは以下の通りです。
債権者の名前 | 借入時期が古い順に書きます(同じところから複数回借りている場合は最初の日付を書きます)。友人などの個人から借金している場合も記載しなくてはなりません。 |
債権者の住所 | 債権者の住所は略さず正確に書きましょう。ただしメールアドレスや電話番号は不要です。 |
借入開始時期、完済時期 | 日付が不明である場合は、債権者に開示請求をすればわかります。専門家に依頼していれば手続きを代行してくれることでしょう。 |
債務残高 | 厳密な金額を書かなければなりませんし、グレーゾーンでの借り入れがある場合は計算がより複雑になります。よって専門家に計算などを代行してもらうべきです。 |
借金を何に使ったか | ギャンブルや浪費などの免責不許可事由であっても正直に記載してください。そうでないと自己破産できなくなる可能性が高いです。 |
保証人の名前 | いれば保証人の名前も書きます。ただ自己破産が完了すると、保証人に一括請求が届く可能性が高いですから、事前に相談しておくことをおすすめします。 |
自己破産申立の提出書類 財産目録について
続いて財産目録の書き方のポイントを紹介します。
財産目録を作る場合のポイント
財産目録には以下のことを書きます。
● 申し立て時に持っている現金
● 貯金、預金
● 公的扶助(年金や生活保護など公的機関による援助制度)
● 収入
それぞれのポイントは以下の通りです。
申し立て時に持っている現金 | あくまで現金ですから、預金や貯金は除外します。 |
貯金、預金 | 金融機関に預けている金額を明記します。例えば「自宅の大きな貯金箱に入っている10万円」などは除外します(こちらは現金扱いとなります)。 |
公的扶助 | 申し立て時に受給している公的扶助の種類、金額、受給開始時期などを書きます。 |
収入 | 申し立て時に収入があれば、収入のタイプ、金額、支給日などを書きます。 |
裁判所次第で記載項目は異なりますが、積立金や保険なども含めてさらに細かく書くことになる場合もあります。一般の方が不足なく正確に記載することは困難ですから、専門家に確認を取りながら進めていきましょう。
なお「自己破産をしても残しておける現金」と「自己破産をしても残しておける預金・貯金」の上限額がそれぞれ決まっています。
そのため場合によっては、例えば「超過分の預金・貯金を引き出して、現金として上限まで残したい」という考えが浮かぶかもしれません。しかし自己破産をする直前にそういったグレーな行為をすると、破産できなくなる可能性もあります。
よって目安として「専門家に初めて相談をする段階」になったら、むやみな資金移動などはしないようにすることをおすすめします。
自己破産申立の提出書類が揃わなかった場合は?
では自己破産申し立ての提出書類が揃わなかった場合はどうなるのでしょうか。簡単に解説します。
提出書類が揃わないと手続きが中止となる!
まず、手続きを開始するための書類が揃わない場合は申し立てができません。「不足している書類は後から用意するのでまずは手続きを開始してください」というのは通用しません。
また、手続き開始後に要求された追加書類が用意できない場合は手続きが一時停止します。そして最悪の場合、そのまま中止(自己破産の失敗)になる可能性もあります。
そのため自己破産を検討し始めた段階ですぐに専門家に相談することをおすすめします。そうすれば提出書類をすべて教えてくれますし、準備・作成のアドバイスももらえます。また、提出書類の種類によっては作成の代行もしてくれます。さらに一般の方が行うと重荷になりやすい裁判所とのやり取りも代行してくれます。
もちろん専門家費用(専門家に払うお金)は発生しますが、それを補ってあまりあるほどのメリットがあるといえます。
まとめ
ここまで自己破産の申し立て手続きに必要な提出書類について解説しました。自力だけで提出書類を不足なく揃えて、すべて不備なく作成するのは至難の業ですから、自己破産を考え始めた段階で早めに専門家に相談することをおすすめします。
専門家を頼れば提出書類のところでつまずくことはまずなくなりますし、それ以外の部分の進行が止まるリスクも大きく下がります。自己破産のメリットを早めに受け取るためにも、やはり専門家に依頼するべきといえます。
ただ、どの種類の提出書類を作成するとしても、破産者本人の積極性が不可欠です。専門家に作成を代行してもらう書類であっても本人にやる気がなければ、いつまで経っても完成しなくなるかもしれませんから気を付けてください。
さいごに
【予算不足のためご自身でなんとかしたい方はこちらへ】
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