この記事では「債務整理後(特に任意整理後)に残った借金」が支払えないケースにおける対処方法や、支払えないまま放置した場合に起きることなどについて解説していきます。
「今月だけ支払えない場合」と「翌月以降も支払えない場合」とで対応方法や、その後の状況が変わってきますから気を付けてください。
任意整理などの債務整理には大きなメリットがありますが、あくまで「整理後の借金を滞りなく支払うこと」が大前提です。債務整理のメリットをきちんと受け取るためにも延滞しないようにして、万が一遅れる場合は適切に対処しましょう。
債務整理の種類とその違いについて
まずは主な債務整理の種類とそれぞれの違いについて解説していきます。債務整理の種類によって支払えない場合の対処方法などが異なりますので注意してください。
任意整理とは
任意整理とは「債務者の代理人として専門家が債権者と交渉を行い、返済条件を緩めてもらうこと」を指します。具体的には利息分の減額や分割支払いなどを求めることで、債務者が生活を維持できるようにすることを目標とします。
「分割支払いへの変更」を求める場合が最も多く、「36回払いにすれば生活に支障のない範囲で返済できる」のであれば分割支払いを目指すケースが目立ちます。
なお任意整理は自己破産や個人再生とは異なり、裁判所が絡みません。そのため法的な制限が緩く、比較的自由度が高いです。
個人再生とは
個人再生とは、「負債を最大9割カットすることができ、3~5年(基本は3年)の分割支払いにする手続き」であり裁判所に認められると実行することができます。借金がゼロになるわけではありませんが、財産の処分(売る)をする義務はありません。
自己破産とは
自己破産とは「負債が全額免除される手続き」です。そのためメリットは非常に大きいですが「必要最低限の財産」以外の財産は基本的にすべて処分されますし、自己破産が完了するまでは一部の資格や職業に制限が及びます。
ただ、繰り返しになりますが負債が全額なくなりますから、そもそも「支払えない」という状況になることがありません。「必要最低限の財産」は残せますから、状況によっては自己破産も選択肢に入れるべきでしょう。
任意整理をした場合の借金はどのように扱われるのか
任意整理では簡単に言うと、債権者側と交渉して「ではこのように条件を緩めて返済していきます」という約束を交わすことになります。そして任意整理後は、その約束に従って返済を進めていきます。
そのため約束に沿った返済ができない(滞るなど)のであれば、債権者にこれ以上迷惑をかけないように特別な対応をする必要があります(もちろんそもそも支払えない状態にならないようにするのが最善です)。
任意整理後に支払いが滞る場合のリスクとは
それでは任意整理後に支払えない状態になることのリスクについて解説していきます。「今月だけ突発的に支払えないのか」、「翌月以降も支払えないのか」によって変わりますから注意が必要です。
今月だけ支払えない場合
今月だけ支払えないとしても、翌月からは安定して支払えるのであれば、基本的にそれほど問題になることはありません。
通常、債務整理では「返済が2回以上滞ると、負債の残額を一括請求する」と和解書に書きます。そのため1回支払えないだけであれば、直ちに不利益が発生することはないのです。債権者から「いつ支払えますか?」と聞かれますが、「来月中には絶対に払います」と言えば問題はありません。
ただ、稀に「返済が1回でも滞ると、負債の残額を一括請求する」と和解書に書かれるケースもあるので注意してください。
翌月以降も支払えない場合
今月分も翌月以降も支払えない場合は、返済が2回以上滞ることになりますから、基本的に負債の残額を一括請求されてしまいます。
また、この一括請求においては遅延損害金も加算されますから気を付けましょう。債権者が消費者金融である場合の遅延損害金は14.6~20%ほどが目安ですから決して低くはありません。
そして一括で返済できないケースでは債権者に裁判を起こされてしまい、最後には預金口座や給与などを差し押さえられてしまう可能性が高いです。
2回以上、滞納してしまった場合
「支払えない月が連続したわけではない場合(例:3月と11月の支払いが遅れた)」でも、原則として負債の残額を一括請求されてしまいます。一括請求に関する流れについては、前項の「支払えない月が連続した場合」と同じです。
任意整理をして今月だけ支払えない場合の対処法
先述の通り、任意整理をして今月だけ支払えない(1回だけ支払えない)としても、直ちに残額の一括請求などをされてしまうわけではありません。ただ、1回支払えない時点で適切な対応をして、債権者からの心証を悪くしないようにすることをおすすめします。
債権者に前月から滞納を伝えておく
返済できないと判明した時点ですぐに債権者にその旨を伝えましょう。延滞すると、ほどなくして債権者から連絡が入るはずですが、その前に債務者側から連絡を入れることで印象の悪化を防ぐことができます。
なお状況が変わって通常通り支払える状態になった場合は、期日通りに支払いましょう。そうすることで当然「延滞」にカウントされなくなるからです。ただ、このケースでは一応債権者側に「やはり支払えるようになりました」と連絡しておくことをおすすめします。
いつまでに支払うかの期限を伝える
債権者に連絡を入れたら、延滞分の支払いの期限を伝えます(原則として来月中)。また、「支払えない理由」も言いましょう。たとえ1回支払えないだけでも債権者としては「もう返済不可能なのではないか」と心配するものです。そのためここで誠意を示すことが重要です。
なお「支払えない理由」ですが、例えば予期せぬ医療費が発生した、どうしても家の修繕が避けられないなど、やむを得ないものであるべきです。
そうでない理由、例えば浪費やギャンブルなどのせいで支払えない状態になると再起できなくなってもおかしくありませんから気を付けてください。
また、特に「支払えない理由」がリストラなどである場合は、「○月中には再就職できます」などと伝えて「今後は支払える理由」も言わないと、債権者側が不安になってしまいますから注意が必要です。
出来たら翌月には滞納分も支払う
「今月だけ支払えない状態であるものの、来月からは通常通り返済できる」としても、延滞分は可能な限り翌月に返済することが大事です。それが相手に対する誠意でもありますし、返済をしている本人としても精神的に楽になるはずです。
任意整理をして支払えない時の相談先について
続いて「任意整理をしたものの、残額を支払えない」という状態になった場合の相談先について解説していきます。状況から目を背けたくなるかもしれませんが、早めに対応しないと事態が悪化していくだけです。
直接、債権者に返済している場合
債権者に対して直接返済している場合は、連絡して「支払えない」という旨を伝えます。そして「返済が遅れる理由」「遅延分を支払える時期」「遅延分を支払うことができる根拠」などと言いましょう。
連絡をしないまま支払いが滞ることが1回でもあると、債権者は「もう支払えないのでは?」と感じますからここで誠意を示す必要があります。
弁護士経由で返済している場合
弁護士などの専門家経由で返済している場合は、その専門家に相談してください。債権者に待ってもらえるように交渉したり、遅延を解消するためのアドバイスをしたりしてくれるはずです。
これに限らず、「何かトラブルが起きていて、かつ専門家に依頼している場合」は一刻も早くその専門家に相談するのが鉄則です。自力で何とかしようとせず、すぐに専門家を頼りましょう。
2回以上の滞納や、翌月以降も支払えない場合の対処法
続いて2回以上滞納している、翌月以降も支払えない場合の対処方法について解説していきます。早めに対処しないとどんどん厳しい状況になっていきますから気を付けなければなりません。
返済の見込みがあるなら債権者や弁護士に相談をする
「今後は安定して返済できる見込み」がある場合は、まず債権者や弁護士に相談しましょう。特に任意整理に関しては裁判所が絡まないため自由度が高く、比較的穏やかに話がまとまるケースが少なくありません。
弁護士による追加介入をする
「最初の任意整理では対象外だった債権者を、後から追加で任意整理すること」を追加介入と言います。わかりやすく言い直すと、「初回の任意整理では債権者A社を整理の対象にはしなかったが、状況が苦しいので改めて債権者A社についても任意整理する」ということです。
自己破産や個人再生とは違って任意整理には、「整理の対象とする債権者を選択できる(除外できる)」という特徴があるためこういった対応ができます。追加介入によって月々の返済額が少なくなれば、返済を続けることができるかもしれません。
ただ、当然ですが初回の任意整理で「除外していた債権者」がいない場合は、追加介入ができません。
さらに「どこからお金を借りているかの情報」は貸金業者間で共有しているものですから、「任意整理に応じても返済してもらえないかもしれない」と思われて、和解条件が厳しくなったり、任意整理を拒否されたりする恐れがあります。
また、自動車ローンや住宅ローンに関して任意整理をすると、車や家を手放すことになる可能性が高いですから気を付けてください。特に「車や家を守りたいから任意整理を選んだ」という場合は本末転倒になってしまいます。
とはいえ状況によっては、車や家を手放してでも借金を整理した方が良い場合もありますから、それも含めて専門家に相談することをおすすめします。
再度の任意整理を行う
実はルール上、債務整理に回数制限は設けられていません。特に任意整理に関しては裁判所が絡みませんから、債権者が応じてくれるのであれば何度でも柔軟に整理することができます。
ただ、2回目以降の任意整理ができるかどうかは債権者次第です。債権者としては「1回任意整理してあげたのに、それでも支払えないのか」という心情になりますから、応じてくれなくてもおかしくありません。
また、2回目以降の任意整理に応じてくれた場合でも、「毎月の返済額が多くなる」「返済期間が短縮される」など、初回の条件よりも厳しくなる可能性があります。これについては基本的に「裁判を起こされるよりは良い」と捉えて、承諾することをおすすめします。
個人再生をする
任意整理では返済が不可能である場合は、個人再生や自己破産などに切り替えることで解決できるかもしれません。まずは個人再生について簡単に解説します。
個人再生をする場合は裁判所に対して申立てを行い、「再生計画」が認可されると負債が減ります。ただし、あくまで「負債が最大9割カットされる」だけであり、負債が全額消えるわけではありません。
また、返済期間は3~5年(基本は3年)となります。返済期間をものすごく長くしてもらえるわけではありませんから気を付けましょう。
自己破産をする
自己破産をする場合も裁判所に対して申立てをします。そして認可されれば、負債が全額消えることになります(税金や罰金などの一部支払いを除く)。そのため一括請求をされても支払う義務がなくなります。
ただし自己破産をすると、連帯保証人がその借金を返済しなければならなくなります。そのため自己破産をすると決めた段階で連帯保証人に連絡をすることをおすすめします。そしてどうしても連帯保証人に迷惑をかけたくない場合は、自己破産以外を選びましょう。
払えないまま放置をすると大変なことになる!
続いて債務整理後に借金を支払えないまま放置するとどうなるのかについて解説します。「放っておけば何とかなる」ということは絶対にありません。状況が酷くなっていくだけですから早めに対応しましょう。
弁護士に依頼していた場合、弁護士から辞任される
簡単に言うと弁護士などの専門家から「もう付き合い切れません」と言われて解約されてしまうということです。
専門家に依頼して債務整理をする場合は、基本的に「債務整理をした後、無理なく支払いを続けられる」ように行ってくれます。そのため弁護士としては「あの条件でなぜ支払えなくなるのか……」という心情になりますから、辞任されてしまうのも仕方がありません。
また、心情のことは抜きにしても「この人は不誠実だから依頼を受けると不利益を被るかもしれない」と判断されてしまう可能性もあります。
辞任されてしまうと、債権者から直接「お金を返してください」という連絡がくるようになりますから精神的に非常に辛くなります。そして何らかの弁明をしようとしても応じてもらえず、一括請求や訴訟を起こされてしまう可能性もあります。
辞任されてしまう原因としては「債権者に対する返済の滞納」「専門家費用の滞納」などがあります。ただし支払えない(かもしれない)と判明した段階ですぐに相談すれば対応策を考えてくれるでしょうし、誠意も伝わりますから辞任を避けることができるかもしれません。
なお専門家からの連絡を無視する、必要書類の用意をしない、約束を破るなどのことをした場合も辞任されてしまう可能性があります。常に誠実な対応をすることを心がけましょう。
自身で再和解をすることになる
弁護士などの専門家に辞任されてしまった場合は、自身で再和解(再度の債務整理)を目指すという方法があります。
ただ、法的知識や交渉力が必要ですから一般の方には難しいです。そのため基本的に自力で債務整理をすることはおすすめしません。
債権者が相手にしてくれない場合も多いですし、「専門家がついていない」ということに目を付けて、戦略的に「(債務者にとって)厳しい和解条件」を提示してくる可能性もあります。
そのため専門家に辞任されてしまったら、可能な限り早く別の弁護士を見つけて依頼することをおすすめします。
「前の弁護士に辞任された理由を正直に話す」「今度こそ借金を解決したいという意思を伝える」などのことを心がければ、「では助けてあげよう」と考えてくれる弁護士が見つかるはずです。
まとめ
「債務整理後の借金」を支払えないとしても1回目であれば、早めに債権者に事情を説明して、延滞分を支払う期限を伝えれば大きなトラブルが起きることはあまりありません。
ただ、支払えない月が連続したり、支払えないことが2回以上あったりすると、分割で返済できるはずの負債を一括請求される可能性がありますし、最悪の場合裁判に発展してしまいます。
そうならないためにも「支払えない」と判明したら即専門家に相談することを強く推奨します。そうでないと専門家にも見放されてしまい(辞任されてしまい)、自力で交渉や再度の債務整理をしなければならなくなるかもしれません。
とはいえ問題を起こさず返済を続けられるのであれば、債務整理による恩恵は大きくなります。負債が膨らんでギリギリの状態になると債務整理をすることが難しくなる可能性がありますから早めに専門家に相談しましょう。
さいごに
【予算不足のためご自身でなんとかしたい方はこちらへ】
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