債務整理をして誰でも借金の減額はできるのか? 債務整理ができない場合の対処法は?

この記事では4種類ある債務整理について、それぞれの特徴や借金が整理される流れなどについて解説します。どの債務整理を選ぶかの参考にしていただければ幸いです。
また、各債務整理ができない条件や、できない場合の対処方法なども挙げますのでぜひお読みください。
債務整理に抵抗がある方も少なくないと思いますが、早めに着手する(専門家に相談する)ほどメリットが大きくなりやすいです。逆に借金を膨らませてからでは債務整理できない可能性もありますから、あまり遅くならないうちに取り掛かることをおすすめします。

債務整理での借金の整理の仕方は4種類ある

債務整理には4種類あります。具体的には任意整理、特定調停、個人再生、自己破産です。まずはそれぞれの特徴を簡単に紹介します。

任意整理とは

任意整理は「債権者(貸金業者)などと交渉して、毎月の返済額を減らす」というものです。特定の債権者だけを対象にできますし、手続きそのものは比較的短期間・低費用で終わるため、債務整理の中でも簡単なものと言えるでしょう。

特定調停とは

特定調停は「簡易裁判所の調停委員が、債務者と債権者との交渉を仲裁し、返済条件や返済方法を決める」というものです。(違う部分もありますが)流れとしては「裁判所が介入するバージョンの任意整理」と考えるとわかりやすいです。
任意整理と同じく特定の債権者だけを対象にできますし、手続き自体は比較的簡単・低費用で終わります。ただし裁判所に出向くなどの手間がかかりますので、あまりおすすめしません。

個人再生とは

個人再生は「返済が困難であると裁判所に認めてもらい、借金を大きく減額してもらい、残った金額を返済する」というものです。
ただし個人再生が完了するまでに最短でも1年ほどかかります。また、任意整理や特定調停とは異なり、すべての借金が対象となるため、「この借金は整理して、この借金は整理しない」などのことはできないと言えます。

自己破産とは

自己破産は「(税金などを除き)借金がゼロになる手続き」です。債務整理の中で最もメリットが大きくシンプルと言えるでしょう。
ただし、
・完了までに1年程度かかる
・すべての借金が対象になる
・(必要最低限のものを除き)財産をすべて失う
などのデメリットがあります。

任意整理の種類により借金の整理の仕方は違う

続いては任意整理の種類ごとの借金の整理のされ方について具体的に見ていきましょう。

任意整理の場合

任意整理の基本的な流れは以下の通りです。
1:自分か専門家が債権者と交渉する
2:交渉により和解すれば、利息カットや返済期間の延長が行われる
3:延長された期間(原則3年、最長5年)で月々返済していく(毎月の返済額が減る)
「将来発生する利息のカット」や「返済期間の延長」という対応をしてもらえる場合が多いです。ただ、もともと利息が低めであったり、返済期間が5年以上あったりするケースではメリットが大きくならない可能性が高いため注意が必要です。

特定調停の場合

特定調停の基本的な流れは以下の通りです。
1:自分か専門家が、申立書や返済計画案などの必要書類を準備する
2:裁判所に必要書類を提出する
3:裁判所を介して債権者と交渉する
4:交渉により和解すれば、利息カットや返済期間の延長が行われる
5:延長された期間(原則3年、最長5年)で月々返済していく(毎月の返済額が減る)
先ほどもお伝えした通り、特定調停は「裁判所が介入するバージョンの任意整理」といったところです。
ただ、特定調停は裁判所が介入する分、任意整理に比べて面倒な部分もあるため基本的には任意整理をおすすめします。実際、任意整理の件数に比べると、特定調停の件数は大幅に少ないです。

個人再生の場合

個人再生の基本的な流れは以下の通りです。
1:自分か専門家が、申立書や再生計画案などの必要書類を準備する
2:裁判所に必要書類を提出する
3:裁判所が再生計画案を認める
4:借金の元本が最大90%減る、利息がカットされる
5:原則3年(最長5年)で返済していく
「再生計画案」には毎月の返済額や返済期間などを書きます。
また、「住宅資金特別条項」を利用すると、住宅を残す(売却しない)ことができます。そのためには「住宅ローンの返済を継続する」もしくは「住宅ローンの返済日を改めて設定する」という対応が必要です。どちらにするかは専門家などと相談して決めることをおすすめします。
なお、個人再生には会社員やフリーランスを対象とする「小規模個人再生」と、収入が安定している会社員などを対象とする「給与所得者等再生」の2タイプがあります。ただ、後者は減額できる負債が少ないため、ほとんどの人は小規模個人再生を選びます。
ただしどちらのタイプの個人再生でも手続きの流れはほぼ同じです。

自己破産の場合

自己破産の基本的な流れは以下の通りです。
1:自分か専門家が、申立書などの必要書類を準備する
2:裁判所に必要書類を提出する
3:裁判所が自己破産を認める
4:(税金などの一部例外を除き)借金がゼロになる
自己破産を行うと借金がゼロになります。その代わりに財産のほとんどを失いますが、必要最低限のものは残すことが可能ですから、生活が立ち行かなくなることはまずありません。

債務整理ができる条件から考えてみる

続いてはそれぞれの債務整理ができる条件を紹介します。ご自身の状況と照らし合わせながらお読みいただければ幸いです。

任意整理ができる条件

任意整理ができる主な条件は以下の通りです。
・「将来の利息をカットした分の借金」を原則3年(最長5年)で完済可能な収入がある
・安定した収入がある
・債権者が交渉に応じてくれる
・完済する意思がある(他の債務整理も同様)
現在の収入や、その収入の安定性を見て、「減額後は3~5年で完済できる」と判断されれば任意整理できる可能性が高いです。
また、収入ですが、正社員、アルバイト、パート、契約社員、派遣社員、フリーランスなどどのような働き方で発生するものであっても問題ありません。自身に収入がなくても、配偶者に安定した収入があれば任意整理できるかもしれません。
そして当然ですが本人に完済する意思が必要です。他の条件を満たしていても例えば「完済できるかどうかわかりません」という態度では任意整理できないケースがあるため注意してください(他の債務整理についても同様です)。

特定調停ができる条件

特定調停ができる主な条件は以下の通りです。
・「将来の利息をカットした分の借金」を原則3年(最長5年)で完済可能な収入がある
・安定した収入がある
・出廷ができる
・債権者との話し合いがまとまる
返済や収入に関しては任意整理とほぼ同じです。
ただ、裁判所が介入しますから「平日に裁判所に行ける生活」をしている必要があります(行けない場合は専門家に相談しましょう)。
また、特定調停における債権者との話し合いについてですが、近年では「まとまらず、特定調停ができない」というケースも多くなっています。そういった意味でも特定調停よりも、任意整理をおすすめします。

個人再生ができる条件

個人再生ができる主な条件は以下の通りです。
・トータルの借金額が5000万円以下(住宅ローンはカウントしない)
・減額した借金を原則3年(最長5年)で返済可能である
・安定した収入がある
・裁判所が再生計画案を認める
先ほども少し触れましたが、再生計画案には「トータルの借金額のうち何%を返済するか」「毎月の返済日」「毎月の返済金額」「返済期間」などを書きます。
一般の方が再生計画案をはじめとする必要書類を作成するのは困難ですから、弁護士を利用して、書類作成以外の部分も含めてサポートを受けることをおすすめします(個人再生以外の債務整理についても同様です)。

自己破産ができる条件

自己破産ができる主な条件は以下の通りです。
・今後も借金を返済できる見込みがない
・免責不許可事由に該当しない(該当しても実際には認められる場合が多い)
この先も借金を返済できる見込みがない場合は自己破産できます。ただ、「一時的に失業しているだけ」など今後返済できそうなケースでは自己破産できない可能性が高いです。
また、ギャンブルなどで借金を作った場合は「免責不許可事由(債務整理を認めない事由)」とみなされて自己破産できないことがあります。
ただ、実際には免責不許可事由に該当しても、裁判所が事情や状況を汲んで免責を認める場合が大半です。
ただし借金の原因が悪質(誰かを騙した、多大な迷惑をかけたなど)であったり、複数回目の自己破産であったりする場合は、自己破産できないことも覚悟するべきです。

自分の状況から債務整理の方法を考えてみる

続いては、どの種類の債務整理を選ぶべきか考えるための基準を紹介します。こちらもご自身の状況と照らし合わせていただければと思います。

安定した収入が継続してある場合

安定した収入が継続してある場合は、
・任意整理
・特定調停
・個人再生
のいずれかをおすすめします。3種の債務整理の比較検討をしたり、他の要素と照らし合わせたりしてどの債務整理を選ぶかを決めましょう。
ただし負債総額が多すぎて返済できそうにない場合は自己破産も選択肢に入れるべきです。

借金の元本を3年以内に返済できる場合

借金の元本を3年以内に返済できる場合は、将来的な利息をカットできる可能性が高い以下のいずれかをおすすめします。
・任意整理
・特定調停
ただ、繰り返しになりますが、特定調停では裁判所が絡んできて面倒な思いをしやすいため、よりおすすめできるのは任意整理です。

借金の元本を減らせば3年以内に返済できる場合

借金の元本を減らせば3年以内に返済できる、言い換えると「元本を減らさないと返済できない」のであれば、個人再生をおすすめします。
そして「元本を減らしても返済できない」場合は自己破産を検討しましょう。

債務整理ができないときの対処法

続いては各種債務整理ができない場合の対応方法を紹介します。希望する種類の債務整理ができないとしても、他の債務整理であれば可能であるケースは多々あります。

任意整理ができないときの対処法

・将来的な利息をカットしても3~5年で返済できない
・安定した収入がない
・債権者側が任意整理に応じない
などの場合は任意整理ができません。

主な対処法は以下の通りです。
・個人再生に切り替えて元本を減らす
・自己破産に切り替えて借金をゼロにする
・債権者側が任意整理に応じない場合は専門家に交渉を頼む
イメージとしては「より高度な債務整理に切り替える」といったところです。

また、「自力で債権者と交渉しようとしたら応じてくれない」というケースでは、専門家に交渉を代行してもらうとうまくいく可能性があります。
ただ、そもそも最初から専門家に債務整理について相談して、全般のサポートを受けることをおすすめします。専門知識や行動力が必要ですから、一般の方が自力で行うのは至難の業です。

特定調停ができないときの対処法

・特定調停で決定した方法での返済ができない
・安定した収入がない
・裁判所に行く時間がない
・債権者との話し合いがまとまらない
などの場合は特定調停ができません。

主な対処方法は以下の通りです。
・個人再生に切り替えて元本を減らす
・自己破産に切り替えて借金をゼロにする
・裁判所が絡まない任意整理に切り替える
繰り返しになりますが、そもそも特定調停はおすすめしません。「裁判所が絡むことにより労力が発生する」「債権者との話し合いがまとまらないケースが少なくない」などの理由があるためです。

個人再生ができないときの対処法

・借金のトータル金額が5000万円超え
・安定した収入がない
・債権者の過半数が個人再生に同意しない(or同意しない債権者の負債総額が全体の2分の1超え)
などの場合は個人再生ができません。
「個人再生はできないが、任意整理や特定調停はできる」ということはあまりないため、原則として自己破産を検討することになります。

自己破産ができないときの対処法

・安定した収入があり返済ができると判断された場合
・免責不許可事由(ギャンブルなど)に該当し、裁判所も自己破産を認めない場合
などは自己破産ができません。

前者については任意整理や個人再生に切り替えることをおすすめします。つまり「よりメリットの少ない債務整理に変更する」ということですから、通るかもしれません。
後者についてですがギャンブルなどで借金を作った場合でも、初回の自己破産であれば言わば「大目に見る」という裁判所の判断で、債務整理できる可能性が高いです。

ただ、
・財産隠しをする
・専門家や裁判所に嘘の情報を伝える
・自己破産の各種手続きに非協力的
などのことがあると自己破産できなくなる恐れがありますから、「借金を作ったことの反省・心を入れ替えたという証明」のためにも誠実に協力しましょう。

債務整理をしても払わなければならない借金とは?

最後に債務整理をしても免れることができない「支払い義務」を挙げます。

税金

どの種類の債務整理をしても税金の支払い免除はされません。
「国は税金の支払い遅れには甘い」というイメージを持っている方もいるかもしれませんが、実際には延滞すると延滞金が発生します。また、延滞が長引いたり催促を無視したりすると、財産や口座を差し押さえられる場合さえあります。
税金の支払いが遅延しそう・遅延しているのであれば、すぐに市区町村の役所に相談することを強くおすすめします。支払い方法の変更など、柔軟に応じてくれるケースが多いです。

罰金

犯罪などで発生した罰金も債務整理できません。罰金は基本的に、判決が決まってから30日以内に一括で支払わなければなりません。

健康保険料や介護保険料

税金と同じく、健康保険料や介護保険料に関しても、どの債務整理を行っても支払い免除はされません。延滞すれば延滞金が発生しますし、長く延滞すれば財産や口座を差し押さえられる恐れがあります。
健康保険料や介護保険料についても、遅延しそう・遅延している場合は市区町村の役場に相談しましょう。ふさわしい対応をしてくれるはずです。

公共料金

公共料金(電気代、ガス代、水道代など)も、どの債務整理をしても支払い免除はされません。公共料金の支払いをしないといずれ電気・ガス・水道などが止まりますし、告知なしで突然ストップする場合もあります。
公共料金の支払いができない場合は、それぞれ電力会社・ガス会社・水道会社に相談しましょう。何らかの対応をしてもらえる可能性が高いです(ただし支払い自体が免除されることはまずありません)。
ライフラインが止まると非常に困るものの各料金はそれほど高くないはずですから、家族・親戚などに相談して一時的に支払いを肩代わりしてもらうのもいいでしょう。

従業員の給与

従業員の給与に関しても、どのような債務整理をしても支払い免除はされません。テレビドラマなどで「従業員の給与も支払えていない」「給料を○か月支払えていない」などの話が出る場合もありますが、現実とは異なると考えてください。
給与が支払えないケースでは、未払い金額の80%を「労働者健康福祉機構」か「独立行政法人」が代わりに支払ってくれる「未払賃金立替払制度」を利用できますので、検討してはいかがでしょうか。

養育費

「子どもが養育される権利」が強く保護されますから、どのような債務整理をしても支払い免除されません。減額もできない決まりとなっています。
ただ、養育費の支払い相手(元配偶者)などと交渉すれば養育費を減らせる可能性もありますから必要に応じて検討しましょう。
この交渉をするにあたっては専門家を利用することをおすすめします。知識も必要ですし、当人だけで交渉するとヒートアップしてしまう場合が少なくないためです。

損害賠償金

「わざとした行為」や「重大な過失」などが原因で発生した損害賠償金は、どのような債務整理をしても支払い免除されません。
ただし、「わざとでない行為によって発生した」とみなされた事故(交通事故など)を原因とする損害賠償金については、債務整理で減額できるケースがあります。これについても専門家に相談することをおすすめします。

まとめ

債務整理の種類やできる条件・できない条件について解説しました。ごく簡単にまとめると
元本は払える場合:任意整理
元本も払えない場合:個人再生
安定した収入がない場合、借金が膨大すぎる場合:自己破産
がそれぞれおすすめです。なお特定調停は労力が大きいですから基本的に推奨しません。
ただ、実際には一般の方が「どの債務整理が最適か」を判断するのは困難ですし、債務整理関連の各種手続きにも専門知識と行動力が必要です。
そのため借金のことで悩んでいる方は早めに専門家に相談しましょう。状況が苦しくなってから専門家を頼っても債務整理できなかったり、債務整理の選択肢が狭くなったりする可能性が高いです。ですから勇気を出して早めに動き出すことが大事です。

さいごに

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